諸課題に対するスタンス

北本市が抱える様々な課題に対する桜井すぐるの考え方や方針について解説します。

北本市の二大難題

現在、埼玉中部環境保全組合(鴻巣市・北本市・吉見町)で進めている新ごみ処理施設の整備については、令和3年9月16日に2市1町の首長で基本合意書を締結、その中で建設予定地を鴻巣市郷地安養寺地内とすることを決めました。

しかしながら、その選定の経過は不透明で、市長は説明責任を果たしているとは言えません。

一方で、選定された場所については、経済的には最も安く建設できる場所とは言えませんが、技術的には建設可能であり、旧組合による調査結果等を活用することで、迅速かつ効率的に整備を進めることができるのも明らかです。

市長や組合管理者には、意思決定の透明化や説明責任を果たすことを求めつつ、できるだけ早く、安く(でも安全に)建設できるよう、厳しくチェックしていきたいと思います。

三宮市長は令和3年8月に久保特定土地区画整理事業を見直すことを発表しました(広報きたもと№1005)。

その内容は、次のとおりです。詳しくは、広報きたもとの記事をご覧ください。

  • 久保特定土地区画整理事業からデーノタメ遺跡の範囲を除外し、区画整理事業を縮小する。
  • 除外した区域は地区計画を策定し、別途整備を行う。
  • デーノタメ遺跡は開発せず、保存・活用を図る。国史跡の指定を目指す。
  • 区画整理地内及びデーノタメ遺跡を縦貫する計画の西仲通線(にしなかどおりせん)は、遺跡の範囲を西側から迂回させる。

市長はこの見直しにより、見直しを行わなかった場合と比較して、事業期間を6年短縮し、事業費のうち市負担額を3.5億円削減することができると説明しています。また、減歩率を26.25%から22.20%に削減できるので、地権者の負担軽減にも繋がるとしています。

遺跡を国史跡化することで用地購入や史跡の整備に国庫補助金を活用できること、遺跡範囲を公園化することで区画整理地内に公園を設ける必要がなくなり減歩率を下げることができる、というところが大きなメリットになります。一方で西仲通線を迂回させなければいけなくなることで、利便性は低下します(将来的には上尾道路が広域幹線の役割を果たします)。

私は、市長の見直し案に基本的に賛成ですが、遺跡にガイダンス施設や復元住居を整備するなど、何億円もかけて観光地化を目指すことには反対です。遺跡への手入れは最小限度にとどめるべきと考えます。

なお、市長の見直し案に対し、西仲通線を当初計画どおり真っすぐ整備すべきという意見が議会内にあります。全国的には国史跡の中に幹線道路が通過している例があり、西仲通線を整備しても国史跡化は可能である、という立場からの主張です。

この意見に対しては、次の3つの理由から、私は賛成できません。

  • 西仲通線については西側から迂回するという代替案が可能であること
  • 遺跡の主要部分に道路を整備した場合に、国史跡化が認められない可能性もあること
  • 道路を整備する場合に地権者の同意を得られない可能性が高いこと

地権者の同意なく道路整備を進めるのは大変な時間と労力を要します。最悪、計画だけで塩漬けになってしまう可能性もあると考えます。

民間による開発ならともかく市が施行する事業です。文化財の保護を疎かにするわけにはいきません(好き嫌いではなく国の大きな方針として)。三宮市長が提示した見直し案は、市と地権者の双方の経済的負担を軽減することにも大いに役立ちますので、これを早急に実行に移すべきと考えます。

子ども・子育て支援、教育

北本市議会では令和4年3月に議員提案で『北本市子どもの権利に関する条例』を制定し、10月1日に施行されました。国においても『こども基本法』が令和5年4月1日から施行となります。また、学校における生徒指導の基本書である『生徒指導提要』も改訂され、児童生徒の権利の理解が明記されました。学校でも、子どもの権利の尊重が求められる時代になってきました。

しかし、子どもの権利の定着、とりわけ学校現場での子どもの権利を尊重した教育の実現は簡単ではありません。

まずは、大人が理想とする成長・発達の実現に向けて指導する形から、子どもの思いや願いに耳を傾け、子どもを主体として、子どもの最善の利益を実現する形に、やり方・考え方を変えていかなければなりません。子どもと大人の両方に研修や講座を実施したり、様々な方法で普及啓発を行い、定着を図る必要があります。

条例は施行されましたが、条例に定めた計画の策定やきたもと子ども会議の設置はこれからです。これらにも早急に着手し、ありとあらゆる手段を使いながら、子どもの権利の定着を図っていかなければなりません。

今文部科学省では、令和の日本型学校教育と称して、全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びを実現しようとしています。従来の詰め込み型・正解暗記型教育や非合理的な精神論・努力主義、同調主義的な教育を改めようというものです。

個別最適な学びとは、子ども一人ひとりに適した教育を提供するもの(個に応じた指導)です。子ども一人ひとりの特性や学習進度、学習到達度等に応じて、指導方法・教材や学習時間等の柔軟な提供・設定を行うなど「指導の個別化」が必要としています。

これに従えば、宿題は一律でなく、一人ひとりに違ったものになるはずです。授業も、先生が児童生徒全員に対して同じことを教えるのではなく、タブレットを活用しながら動画や電子教材を使って一人ひとりが学び、解らないところを先生や学力向上支援員が個別に教えるようになっていく方が自然です。

これこそが教育のあるべき姿だと思いますが、どうやって教員の負担を軽減するかについても併せて検討が必要です。

前項で説明したとおり、個別最適な学びの提供を実現するためには、教員の負担軽減が不可欠です。現状でも教員の時間外勤務は常態化し、教員のなり手不足が深刻化しています。

文部科学省は、令和7年度までに段階的に小学校を35人学級にするとしています。しかし35人学級で個別最適な教育が実現できるでしょうか?山梨県は独自に小学校4年生まで25人学級とすることを決めました。埼玉県でも実現して欲しいところですが現状では期待できません。市としては最低でも35人学級を徹底する必要があります。

少人数学級が難しいならば、授業で教員とともに子どもの学習を支援する学力向上支援員や、教員に代わって資料作成・授業準備等などを行うスクール・サポート・スタッフなどの支援員を増加することで、教員1人に掛かる負担を減らし、子どもたちに合った教育を行えるようにすべきでしょう。

また、令和2年度に導入したタブレット端末などICT環境もフル活用する必要があります。各学校で共通の指導用教材を作成したり、市販のものを利用することで、教員の指導教材を作成する負担を軽減することもできますし、教員によって教え方や内容にムラができることも防げます。

さらに、教員にとって本来業務ではない部活動指導も教員にとって大きな負担となっています。地域への移行や外部指導者の導入、合同チーム化など、部活動の在り方を検討する必要があります

個別最適な学びを実現するには、教員が働きやすい環境を整えることが必要不可欠です。

学校給食費の無償化を実施する市町村が増加しています。令和3年度以降の物価高騰に伴い、国からの新型コロナウイルス対応地方創生臨時交付金を活用して、臨時的に無償化を実施している市町村や、他市世帯に限り無償化や軽減している市町村もあります。

義務教育は誰でも学校に通い、教育を受けられるよう、本来は無償であるべきです。しかし、現状で無償化されているのは授業料と教科書代だけです。学校に通い、授業を受けるためには、副教材、学用品、制服、就学旅行費など、多くの支出が必要になり、子育て世帯の大きな負担となっています。給食や修学旅行は、学習指導要領にも定められた学校教育活動の一部です。これらを含めて無償化すべきです。

北本市では、現王園元市長が給食費の無償化を掲げて市長選に当選し、市長となりましたが、財源が確保できず、無償化を断念しました。無償化を実施するには、財源の確保が大きな課題となります。

現王園市長時代にはなかった財源として「ふるさと納税寄附」がありますので、まずはこれを活用することも考えられますが、ふるさと納税制度自体が持続可能な制度とは思えませんので、恒久的に無償化するには増税も積極的に検討しなければならないでしょう(詳しくは、ベーシックニーズの充足を増税で賄うプランをご覧ください)。

私は議員になる前から、学童保育室の父母会役員として、学童保育室の増設や保育の質の向上を要望していました。少しずつ改善されているものの、公設学童保育室の混雑状況に関しては改善が見られません。

令和4年度に2つの民設クラブが開室しましたが、利用者は定員を大幅に下回っており、公設学童の混雑緩和に繋がっていません。民設クラブには特色のある取組や公設学童にはない良さをPRしていただき、利用者の増加を図っていただく必要があります。

また、現状では西小学区と南小学区に民設クラブが設置されていますが、中丸小学区でも以前から混雑が酷い状態が続いています。学童保育室の更なる増設が必要です。

公設学童保育室の指定管理者である北本学童保育の会うさぎっ子クラブでは、学習塾やプログラミングスクールなどの機能を兼ね備えた新しいタイプの学童保育室を設置する構想があるようです。もし設置されるならば、民設クラブの学区縛りを廃止し、市内3つ目の民設クラブとして認めるべきと考えます。

高齢者・障害者福祉

高齢者の一人暮らしや、高齢者だけの世帯が増加しています。自治会長や民生委員の方から、気に掛けている人がいるが家の中で倒れてしまっていたらわからない。地域の見守りにも限界がある、というお話を良く聞きます。

北本市には緊急時通報システムという制度があります。ペンダント型のブザーを貸し出し、緊急時に自分でブザーを押すと、受信センターに通報されるものですが、急に意識を失った場合など自分でブザーを押せないと通報できません。自宅の人が良く通る場所にセンサーを設置し、一定時間通過しないと自動的に通報される「人感センサー式」の導入が必要です。

また、北本市ではこのサービスの対象者を「市内在住で疾患などにより常時注意を要する75歳以上のみの世帯、その他特に必要と認められる世帯」としていますが、他市では65歳以上が一般的です。年齢要件を緩和し、普及率を高める必要があります。

人感センサーの導入と要件緩和により、緊急時通報システムの普及を図らなければなりません。

北本市では令和4年4月から「福祉総合相談窓口」を設置し、福祉にまつわる様々な相談を一元的に受け止めています。これまでは介護、障がい、子ども、生活困窮など、分野ごとに対応していましたが(引き続き各課でも受け付けますが)、多様化・複雑化した困難に対応したり、既存の制度では対応できない困りごとに対応するため、総合相談窓口を設けたものです。

これらの多様化・複合化した困難に対応するため、国では重層的支援体制整備事業を制度化し、福祉総合相談窓口の設置もその一環ですが、組織体制が十分ではなく、本格的な実施には至っていません。

重層的支援体制は、多様化・複合化した困難に、多機関が連携して取り組むもので、ひきこもり、ヤングケアラー、いわゆるごみ屋敷への対応にも有効な仕組みです。しかし、マニュアルに沿ってやれば上手くいくというものでもありません。実効性ある取組とするためには、多くの事例を俎上に上げ、実践を繰り返し、試行錯誤しながら、対応力を上げていかなければなりません。

前項からの繰り返しになりますが、北本市では令和4年4月から「福祉総合相談窓口」を設置し、福祉にまつわる様々な相談を一元的に受け止めています。

一方で、役所には相談しにくい、自分で何とかしたいと思っている方も多く、待っているだけでは必要な支援に繋がらない人がたくさんいるのも事実です。ひきこもりはその典型です。

支援が必要な人を早期に発見し、支援に繋げていくには、アウトリーチ(対象者のいる場所に積極的に出向いて働きかけること)を行う専門職の増員が不可欠です。

アウトリーチを行う専門職をコミュニティ・ソーシャル・ワーカー(CSW)として市内8圏域、最低でも中学校区ごとに配置し、支援機関や地域住民等と連携して、地域の福祉課題に取り組む体制作りが急務です。

コミュニティ・ソーシャル・ワーカーとは(WAM NET)

北本市議会の健康福祉常任委員会では、令和3~4年度の2年間、「いわゆるごみ屋敷の現状と課題について」をテーマに、関係者へのヒアリングや先進市視察、文献調査を実施。令和5年第1回定例会において「不良な生活環境の解消及び発生の防止を
図るための措置を求める決議」を提案しました。決議内容は次の3点です。

  • いわゆるごみ屋敷等の不良な生活環境の解消及び発生の防止を図るための条例を制定すること。条例の制定にあっては、 福祉的観点から生活上の諸課題の解決を図ることを基本的な方針とするとともに、支援の方法、措置の手続き、審議会の設置、費用負担、罰則等について規定すること。
  • 不良な生活環境の解消及び発生の防止を図るために必要な人員の確保、組織体制の整備、予算の措置、研修の実施、市民への周知啓発等を図ること。
  • 居住者への支援やごみの片付け等を実施するに当たっては、行政、支援機関及び地域住民が協力・連携して取り組むことを基本とすること。

外からわかるようないわゆるごみ屋敷だけでなく、家屋内で堆積している事例は数多くあります。そのような状態に至った原因は認知症、精神疾患などさまざまで、ごみを片付けるだけではなく、福祉的な支援が不可欠です。現状では組織体制やルールが整備されておらず、十分な対応ができていません。

条例の制定し、組織体制を整備、必要な予算を確保し、行政・支援機関・地域住民が協力・連携して取り組む必要があります。まずは市長に対し、これらのことを求めましたが、もし市長が取り組まなければ、議会として条例を制定することになるでしょう。

北本市は高齢者福祉計画の中で「地域で支え合い、誰もがその人らしく安心して暮らし続けることができるまち」を掲げています。

認知症になっても、身体が不自由になっても、できる能力を最大限活用しながら、尊厳を保って生きていけるようにする。県外には、そんな介護を実践している施設があります。強みを生かす「ストレングスモデル」と、施設を地域の人に開放するという点が特に重要なところです。

また、家族によるケアからの解放(ケアの社会化)も重要です。介護により家族に過度な負担が掛かれば、最悪の場合、虐待や心中につながりかねません。身近で利用できる介護サービスを充実させることはもちろん、介護保険事業によるサービスだけでなく、家事援助などのサービスの拡充も必要でしょう。

障がい者が働く場として、市内には就労継続B型作業所があるのみで、最低賃金が保障されるA型作業所はありません。また、市内に本社がある企業で、障がい者の法定雇用率を達成している企業の割合は18社中3社しかなく、県平均の48.8%を大きく下回っています。

障がい者を雇用する場合には、業務の見直しやマニュアルの整備、職場環境の改善などが必要となることから、障がい者だけでなく全ての従業員にとって働きやすい職場となり、業績の向上につながることも多くあります。

障がい者雇用の促進は基本的には国や県の所管ですが、市内の障がい者の働く場を確保するため、市としても積極的に取り組む必要があります。市役所における職場体験やインターンの実施、市内企業における職場実習への補助などにより、障がい者の働く場を増やす必要があります。

令和3年9月に医療的ケア児支援法が施行されました。これにより、医療的ケア児が在籍する保育所や学校では看護師等を配置するなどの措置を講ずることになりましたが、北本市ではその体制が整っていません。実際に在籍することになってから考えるスタンスで、これでは受入体制が整っていないことを理由に在籍を認められない恐れもあります。いつでも受け入れられるよう、早急に体制を整備(看護師等の確保)しなければなりません。

また、北本市は「在宅重症心身障害児等の家族に対するレスパイトケア事業補助金」を県内他市に遅れてスタートしました。医療的ケアを必要とする在宅の重症心身障害児等を介助する家族の精神的・身体的負担の軽減を図るための事業ですが、子どもを受け入れられる施設は県内でも限られ、家族にとってはレスパイトするのも一苦労です。受け入れてくれる病院等の施設を市内又は近隣市町に誘致する必要があります。

医療的ケア児の災害避難対策も急務です。医療的ケア児の中には電源を必要とする人工呼吸器が必要な子もいます。地震などで停電が発生すれば命取りになりかねません。個別避難計画を作成し、対応策を決めておくだけでなく、佐賀県武雄市のように避難訓練を実施することも検討する必要があるでしょう。

都市基盤整備・産業振興

北本駅東口から国道17号線方面に向かう中央通線は、東間通りまでの整備が終了しました。東間通り交差点から国道17号線までの330mは、朝はスクールゾーンで車が通行できず周辺道路の混雑の原因となり、夕方は下校する中丸小や北本高校の子どもたちにとって危険な状態となっています。早急な拡幅が必要で、整備の優先度が高い市道です。

南大通線は国道17号線山中交差点で丁字路となってしまい、周辺道路の混雑の原因となっています。山中交差点から北東へ延伸し、県道312号線を直線化する必要があります。こちらは県道ですが、まだ都市計画決定もされていませんので、県に対し要望を続けていかなければなりません。

西仲通線は上尾市から鴻巣市までを結ぶ、高崎線西側の幹線道路として計画されましたが、北本市の区間は未着手です。北本市内は久保特定土地区画整理地内、デーノタメ遺跡、UR北本団地を抜け、南大通線までの南側区間と、南大通線から本町・西高尾の住宅がを抜け、鴻巣市に繋がる北側区間で考えると、北側区間は住宅が密集しており実現が困難です。

西仲通線のさらに西側に国道17号線〔上尾道路〕が計画されており、整備も進んでいることを踏まえれば、西仲通線(特に北側区間)の計画見直しも必要と考えます。

北本市の小中学校では毎年PTAが中心となり通学路の安全点検をしています。令和3年6月には千葉県八街市で下校中の児童の列にトラックが突っ込み、5名が死傷する痛ましい事故が発生したことをきっかけに、文部科学省も通学路の安全点検を実施するよう通知しました。

安全点検により各校から特に早急な対応が必要とされた4か所については、こちらの記事(令和3年度通学路安全点検の結果)で詳しく解説しています。中でも、市からも具体的な対策が示されてない、宮内中学校近くの昭和パックス株式会社東京工場東側・市道6号線はスピードを出している車も多く、大事故につながりかねません。早急な対応が必要です。

4か所の他にも、前項で触れた中央通線の拡幅は喫緊の課題ですし、高尾2丁目谷足会館前の変則交差点も事故が多い交差点で地元自治会とともに定期的に北本県土整備事務所に改善の要望を続けています。令和4年度から調査費の予算がついており、歩道の整備(拡幅)と県道の線形変更が検討されています。

谷足会館前については、こちらの記事(◆一般質問 交通安全対策)をご覧ください。

宮内中学校近く昭和パックス前の交差点(市道6号線)

北本市内には2つの旧暫定逆線引き区域があります。

北本市は近隣市と比較しても市街化区域が狭く、開発余地が少ないのですが、市街化区域を拡げるには、この旧暫定逆線引き区域の市街化区域への編入が先決というのが都市計画を所管する県の指導です。さらに、市街化区域に編入するには、市街化が確実に進むよう「土地区画整理事業」により行う必要があります。

北本市では久保特定土地区画整理事業の進捗が大幅に遅れています。また、新たな土地区画整理事業の実施には、地権者の合意が不可欠です。

久保特定土地区画整理事業を一刻も早く完了させる(せめて目途を立てる)とともに、旧暫定逆線引き区域にお住いの方に理解を求めていかなければなりません。

国道17号線のバイパスである上尾道路は、平成23年度に北本市石戸宿から鴻巣市箕田までの延長9.1kmの2期区間が事業化されました。平成28年4月に桶川市川田谷まで開通し、1期区間は全線開通しています。現在は2期区間について、鴻巣市箕田から(北から)整備が始まっています。

上尾道路が開通すれば、その沿道の開発が期待されるところです。桶川市では圏央道桶川北本インターチェンジの隣接地で区画整理事業を行うことが決まっていますが、北本市ではどうでしょうか。

前項で説明したとおり、現状では土地区画整理事業のような「面整備」は難しい状況です。建設が可能なのは上尾道路の沿道サービス施設(ガソリンスタンド、コンビニ、ドライブイン)や、地域住民のための公共公益施設などに限られ、ショッピングセンターや物流倉庫などの整備はできません。

上尾道路沿道の開発を進めるためにも、旧暫定逆線引き区域の早期開発が望まれます。

北本市都市計画図(色が付いているのが市街化区域、その中で白抜きになっているのが旧暫定逆線引き区域)

昭和46(1971)年から入居開始されたUR北本団地ですが、建物自体の老朽化と居住者の高齢化が進んでいます。エレベーターの設置などの大規模なリフォームが望まれますが、URではストック再生(集約化)の方針を示しています。

その一方で、令和2年9月からは「地域医療福祉拠点化」に着手しましたが、現時点でその取組は限定的です。URには地域医療福祉拠点化の迅速な推進を求めてまいります。

UR都市機構 地域医療福祉拠点化
https://www.ur-net.go.jp/chintai_portal/welfare/index.html/seibisuishin/index.html

【参考】地域医療福祉拠点化の3つの取組

  • 地域における医療福祉施設等の充実の推進
  • 高齢者等多様な世代に対応した居住環境の整備推進
  • 若者世帯・子育て世帯等を含むコミュニティ形成の推進

UR北本団地におけるこれまでの地域医療福祉拠点化

  • 医療・介護事業者用駐車スペースの確保(3か所)。
  • 団地内の高齢者の相談窓口として、市や地域包括支援センターに繋ぐほか、団地内巡回による見守り、登録者への週1回の電話による安否確認等を行う生活支援アドバイザーを管理事務所に設置。
  • 高齢者だけでなく子どもの居場所となるEラウンジを設置し、高齢者と子どもの交流を図る。

地域、住まい、暮らし

「高齢者や障がい者の一人暮らしだとアパートが借りられない」という話を良く聞きます。

国では、低額所得者、被災者、高齢者、障がい者、子育て世帯を住宅確保要配慮者と定め、居住を支援する仕組み(住宅セーフティネット制度:国土交通省)を作っています。入居の際や、居住の継続にあたり支援するとともに、住宅確保要配慮者専用の住宅とすることで家賃、家賃債務保証料、改修費用の補助を受けることもできます。

要配慮者が借りやすくなるだけでなく、大家さんや不動産屋さんも安心して貸せるようになるとても有用な制度ですが、全国的にあまり活用されていないのが現状です。

居住支援の取組は、今後極めて重要になってくると思います。実現に向けて、まずは居住支援協議会を設置すべきと考えます。

自治会における自治会の加入率は約70%で低下傾向にあります。自治会役員の負担が大きく、加入はするものの活動には参加しないという世帯も多いようです。コミュニティは自治会とは別組織ですが、現実には自治会役員がコミュニティの委員を兼ねている自治会が多いと思います。

自治会やコミュニティの活動は、市民の活動であり、活動内容は市民が決めることですが、ある程度市が関与して多くの市民が納得できるように活動内容を見直していかないと、自治会加入率はさらに低下してしまいます。

住民自治の活動については、昭和40年代後半からの人口急増期においては住民同士の交流を増やし、住民同士の関係性を強めることが求められたと思いますが、今では防災・防犯や地域福祉の向上(見守り・助け合い)の役割が求められていると思います。このことを念頭に、今の8圏域で良いのかということも含め、見直すべき時期に来ていると思います。

北本市では、厳しい財政状況と将来的な人口減少の見通しを踏まえ、公共施設の延床面積を今後40年間で50%削減する『北本市公共施設等総合管理計画』を2017年3月に策定しました。

さらに2022年3月には『公共施設マネジメント実施計画』を策定し、具体的な統廃合の方向性を示しました。その主な内容は次のとおりです。

  • 栄小は石戸小と統合。中丸東小、西中、宮内中は統廃合を検討。
  • 中央公民館を除く公民館、勤労福祉センター、コミュニティセンターは、市民活動交流センター(学校跡地を想定)に機能移転。
  • 健康増進センター、保健センター、母子健康センターは市民活動交流センターに機能移転。
  • 総合福祉センターは廃校する学校への機能移転を検討。
  • 体育センターは、体育機能重視型市民活動交流センターに機能移転を検討。

栄小は石戸小に統合され、旧栄小校舎は改修の上、栄市民活動交流センターに生まれ変わることが決定。今後、勤労福祉センターやコミュニティセンターは廃止される予定です。

人口減少やそれに伴う税収減を考えれば、公共施設を整理統合し、維持管理コストを抑える必要があるのは当然ですが、一方でこれらの施設は「地域住民の交流拠点」でもあります。北本市では市内を8つの圏域に分け、その交流活動の拠点として公民館を整備しています。仮に公民館を廃止することになっても、交流活動の拠点となる場所は必要です。

高齢化の進行や、市民の困り事の複雑化・複合化の現状を踏まえれば、地域で支え合ったり、見守ったりする活動は不可欠であり、むしろ推進していかなければなりません。そうした中で単に活動拠点を減らすのでは、市民の困り事が見えなくなり、放置されてしまいます。公共施設マネジメントを進めるに当たっては、交流活動の拠点機能をどうやって残すかを決めておかなければなりません。

北本市では人口減少対策として『シティプロモーション』に取り組んでいます。簡単に説明すると、市民がまちを良さを認識し、まちを活性化する活動や課題解決に参画し、市内外に北本市の良さを発信することで北本市のファンを増やし、北本市に来てもらう取組です。

北本市のシティプロモーションは全国的に高い評価を受け、2021シティプロモーションアワードで金賞を受賞、全国広報コンクールでも内閣総理大臣賞を受賞しました。

これまでのまちづくりと言えば、土地区画整理や市街地再開発など、開発により人が住む場所を作り、そこに住んでもらう基盤整備が中心でしたが、人口減少社会にあっては、より都心に近い便利な場所が選ばれてしまいます。ただ宅地を増やすのではなく、街を良く知ってもらい移住・定住してもらうシティプロモーションに取り組む自治体が全国的にも増えています。

シティプロモーションに加え、新型コロナにより都心を回避する動きも重なり、北本市への転入者は増加しています。一時は自然減(出生者数<死亡者数)、社会減(転入者数<転出者数)でしたが、令和に入り社会増に転じました。

今後もシティプロモーションの取組を続けながら、17.市街化区域の拡大や18.上尾道路沿道開発の取組を実施していく必要があるでしょう。

財政・人事・計画

こちらのページ(ベーシックニーズの充足を増税で賄うプラン)で詳しく解説しています。

簡単に言うと、少ない税金で行政によるサービス提供は最小限にして、不足する部分は自己資金で補うか、それとも北欧のように税金を多く収め、手厚い行政サービスを受けるかを議論しましょう、ということです。

例えば教育費が基本的に有償の我が国では、高所得世帯に生まれた子どもほど質の高い教育を受けられる可能性が高くなります。我が国では学歴と収入にも強い相関がありますので、格差が固定化されやすくなります。また、介護や医療のサービスには所得に応じた自己負担があります。低所得世帯では必要な介護や医療のサービスを受けられない可能性があります。

税金を低く抑え、生きていく上で必要なサービスの費用を自己負担で賄う領域が広ければ、低所得・少資産の人ほど窮地に陥りやすくなります。また、将来の自己負担に備えて必要以上に貯蓄をしなければならなくなり、消費が抑制されます。

自己負担とはお金の話だけではありません。例えば、親が要介護状態になったり、障がいのある子が産まれた場合、その人の世話を「家族」が行うことを前提にすれば、税金や保険料は低く抑えられますが、当該世帯においては収入の減少や支出の増加につながります。こうしたリスクを家族が負担することにすれば、他の家族にとっては何の影響もありませんが、本当にそれで良いですか?社会全体で負担すべきではないですか?

受益(行政サービス)と負担(税金・社会保険料等)のバランスを考えるということは、私たちが生きる社会をどのようにデザインするかという問題です。人は一人では生きていけません。社会の在り方について、市民・国民全体でもっともっと積極的に議論していかなければいけないと思っています。

「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード」という賞があり、2年連続で北本市の職員が受賞しましたが、その後2人とも退職しました。それぞれに退職に至った事情があるのだと思いますが、前途多望な人材が退職してしまったことは残念でなりません。議員として4年間、市職員の仕事ぶりを見てきましたが、モチベーションは保てているか、公務員として必要な知識や技術をきちんと身に付けられているか、とても心配しています。

市民の方からも、質問に対して的確な答えが返ってこない、担当職員が不在でわからないと言われた、態度が横柄・高圧的などの指摘を受けています。この状態を早急に改善しなければなりません。

特に重要なのは、自分の仕事に責任を持つこと(法令等の根拠をしっかりと理解すること)と、自分の仕事だけでなく関連する仕事についても理解するよう努めることです。これは採用直後から取り組まなければなりません。研修計画や人材育成の指針を定め、実行することも重要ですが、仕事の中で日常的に根拠を確認したり、解釈をディスカッションすることが特に重要です。

公務員の仕事は正しさが求められます。おかしいものは「次から改めます」ではなく「大変でも今直す」姿勢が重要です。私自身も公務員OBとして、職員の説明を鵜呑みにせず、自分で調べ、理解し、問題点を指摘したり、改善を求めたりしています。

北本市に対するふるさと納税額は埼玉県内で1位となっていますが、ふるさと納税制度自体は一部の市町村だけが恩恵を受ける一方で、多くの税収が返礼品の購入やポータルサイト運営会社・決済会社に流れており、地方財政制度を破壊する粗悪な制度です。とても持続可能な制度とは思えません。

制度がある以上は、市の歳入確保のためにふるさと納税寄附の獲得を目指さなければなりませんが、国に対しては「おかしいものはおかしい。」と主張し、見直しを求めていくべきです。

国全体で考えたときに、ふるさと納税制度は税収のロスが大きすぎます。地方への財源の移転は、ふるさと納税ではなく税制や交付税制度で対応すべきです。すでに規模が大きくなりすぎたため、制度の廃止は現実的ではありません(ふるさと納税の返礼品が売り上げの中心になっている事業者が廃業する恐れがあるため)が、規模が縮小していくことは考えられるので、ふるさと納税寄附に頼らない財政運営を行っていく必要があります。

ふるさと納税制度の問題点

制度の出発点は、お世話になった自治体に対し寄附をできる制度でした。例えば地方で生まれ育って東京や大阪で就職した場合、生まれ育った自治体では保育や教育などの支出が多く、就職後の東京や大阪の自治体では収入(税収)が多くなります。都市部と地方では税収の格差が大きいのは事実で、格差を是正する(税収の偏在是正)必要があることから作られた制度です。

しかし、どこの市町村に寄附するかは寄附者に委ねられています。実際には、お世話になった市町村や応援したい市町村ではなく、豪華な返礼品がもらえる自治体が選択されています。またふるさと納税寄附の獲得は、各自治体が独自に行うのではなく、ポータルサイトが行っているケースが多くなっています。ふるさと納税をしたいと思う人は、ポータルサイトから自分の欲しい返礼品を選ぶ傾向があり、ポータルサイトに掲載されていないとふるさと納税が集まりにくいのが現状です。一方でポータルサイトには寄附額に応じて手数料を支払わなければなりません。

現状では、寄附金の募集に要する費用の合計額が寄附金受領額の合計額の5割以下であることが求められていますが、この割合(特に返礼品を除く費用)をさらに下げるなど、制度を見直し沈静化を図るべきです。

  • 本来の目的とはかけ離れた制度になっており税収の格差是正につながっていないばかりか、本来は国の責任において税収の偏在是正を行わなければならないのに、地方同士で寄附の獲得を競わせ、責任転嫁している。
  • 本来の税収を大きく上回るふるさと納税を獲得している自治体がある一方で、全く獲得できない自治体もある。
  • 住民がふるさと納税をしたことにより税収が減収した自治体は、減収の一部(概ね75%)を地方交付税で受け取ることになる(不交付団体を除く)。地方交付税の財源は国税であり、結局はふるさと納税のコストを国民が負担していることになる。
  • 高所得者ほど、多くの返礼品を手に入れることができ、富裕層のための節税制度になっている。
  • 本来は自治体の行政サービスに使えたはずの税金が、ふるさと納税として寄附された場合にはその3割が返礼品、2割が手数料等に充てられ、行政サービスに使えるのは全体の半分になってしまう。

弁護士を雇用する自治体が増えています。条例の制定改廃、法令の執行、争訟など様々な場面で弁護士の力が必要であり、顧問弁護士よりも庁内に職員としていた方が機動的で、気軽に相談することもできます。県内では川越市、所沢市、草加市、上尾市の4市が採用しています(参考:日本弁護士連合会ホームページ)。

また、社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師、保健師も、様々な場面で必要となります。生活保護のケースワーカーはこれらの資格を持っていなくても従事できますが、専門的な知識・技術があった方が、適確な支援ができます。

資格を持った人や実務経験がある人を積極的に登用し、質の高い行政運営を行うべきと考えます。