◆一般質問 台風19号への対応を踏まえた災害対策の見直しについて

令和元年第3回定例会における一般質問 12月6日(金)

件名1 台風19号への対応を踏まえた災害対策の見直しについて

要旨1 避難指示に応じていただくための平時からの取組について
要旨2 市民への情報伝達について
要旨3 暴風による高齢者等の避難支援について

要旨1 避難指示に応じていただくための平時からの取組について

質問

北本市が作成した洪水ハザードマップ(荒川が200年に1回程度発生する大雨により氾濫した場合に想定される区域を浸水想定区域として指定し、その区域と浸水の深さを公表したもの)のとおり、北本市では特に人家があるところで浸水の恐れがある地域はかなり限定的。洪水による人家への被害は、予測がしやすい。

今回の台風19号において、本市では荒川の水位の状況や降雨の状況などつぶさに観測しながら、かなり地域を限定した形で避難指示を発令した。

実際には浸水の恐れがある家庭を1件1件回って避難を促したが、中には経験則から我が家は大丈夫ということで、避難指示に応じていただけない状況もあったと聞いている。今回は荒川の決壊がなかったので大事には至らなかったが、いざ浸水してしてから救助するとなれば、救助する方も、される方も命の危険がある。

いざというときに速やかに避難をしていただくためには、平時から防災意識を高めておく取組が必要ではないかと思う。

平成27年9月の関東・東北豪雨災害では、鬼怒川などの氾濫により堤防が決壊、茨城県の常総市などで広範囲にわたり浸水被害が発生し、避難の遅れ等により多くの住民が孤立をした。ハザードマップ等の防災情報が作成されていたにもかかわらず、十分に認知されていないことが、結果として浮き彫りになった。

このことから、平成29年に水防法が改正され、市町村長が過去の浸水実績等を把握したときには、これを水害リスク情報として浸水範囲等を示した地図や浸水深を示した看板等により、住民等に周知をすることとなった。

国土交通省ではこれを受け「まるごとまちごとハザードマップ実施の手引き」を改定し、住民への周知の取り組みを推進している。例えば洪水標識では、どの高さまで水が上がってくるのか、避難所はどこにあるのかなどが明示されている。

こうした標識を浸水が見込まれる地域に設置をすることは、日ごろから地域住民の防災意識を高める上で、非常に有効と考える。これは一例だが、避難指示に速やかに応じていただくための平時からの取組について、今後どのような対策を講じていくのか伺う。

答弁(市民経済部長)

今回の台風19号の避難勧告及び避難指示は、洪水被害が予測されていた地域が限定的であったことから、対象の世帯へ職員が直接避難を呼びかけました。また、ワコーレマンションについては自主防災組織を通じて、館内放送を利用させていただきました。

職員の呼びかけに対し、過去の経験から我が家は大丈夫ということで、避難指示に応じていただけない方がいらっしゃったケースがあったのは事実です。これらの方々には避難指示を出し、鴻巣警察署員の協力もいただきながら、結果として無事避難をしていただきました。

今後の取組ですが、今回の浸水被害は市が作成したハザードマップのエリアとほぼ一致しており、浸水害による避難が必要な地域、家屋がある程度明確化できたことから、そのエリアの自治会、自主防災会や対象となる各家庭に避難の必要性を説明し、理解を求めるとともに、あらかじめ電話番号等を伺うなど連絡体制を強化してまいります。あわせて全市民に対しては、ハザードマップの周知が有効であると考えています。

まるごとハザードマップの設置については、本年4月に国交省から改めて「まるごとまちごとハザードマップのすすめ」が示され、その有効性を認識しておりますので、設置について今後検討してまいります。

再質問

Q.荒川の水位は、吉見町側の堤防の高さを考慮した場合、北本市側では最大であとどの程度水位が上がる可能性があったのか。

A.吉見町に確認したところ、吉見町側の堤防の高さまであと2メートル程度に迫っていました。

Q.今回、避難指示を発令した区域は、荒川が吉見町側に越水する程度まで水位が上がった場合に浸水する可能性のあるお宅に対して避難を呼びかけたということか。それとも、もう少し上の区域まで避難をお願いしたのか。

A.今回、非難を呼びかけたお宅は、基本的にはハザードマップで浸水想定区域内にある住宅としました。実際には、その想定区域図だけでなく、職員が直接現地を確認し、荒川の水位の状況と住宅の高さから判断をしました。例えば、高い位置にあっても避難する際に、袋小路等で一旦荒川側におりることになる家屋につきましては、声がけをしました。なお、避難指示発令後に鴻巣警察署員が、指示の対象とした家屋以外の家にも声をかけたというケースもありました。

Q.今回の台風19号で浸水した地域についての情報を、今後どのような形で共有し、また記録としては保存するのか。

A.浸水した地域だけでなく、家屋の被害の状況、また自主避難所の開設状況、当時市がとった対応、行動、またその後の他市への支援等、さまざまな状況を取りまとめ記録した報告書を、現在作成しています。報告書は個人情報も含まれることから庁内で共有をするとともに、今後の対応に役立てることとしますが、その概要は地域の住民とも共有し後世に語り継ぐべきものと考えています。

Q.ハザードマップを配布しても日ごろ意識はしていないし、自主防災会の防災訓練も参加者はわずか。十分に周知できると思えない。日ごろから目につくところに標識を掲示することで、危険な場所であることを意識にすり込むことができる「まるごとまちごとハザードマップ」は大変有効であり、設置を検討するべきだと考えるがいかがか。

A.まるごとまちごとハザードマップの有効性については、認識をしています。最近では都心等で電柱等に想定水深深を示している例がありますが、本市では極めて(地域が)限定的でありますので、むしろハザードマップそのものの周知や、広域避難所への誘導標識としての役割等の効果が期待できると考えます。今後設置について検討してまいりたいと考えます。

要旨2 市民への情報伝達について

質問

台風19号は非常に大型の台風であったことと、また、9月に上陸した台風15号が千葉県に未曽有の被害をもたらしたこともあり、関東地方が暴風圏に入るかなり前から、注意を呼びかける報道がなされていた。実際に台風が近づいてきてからは、命を守る行動をとるように繰り返し注意喚起がなされていた。

しかし一方で、雨による被害はある程度想定ができる。本市では限定的に避難指示を出して、市のホームページだけでなく、個別に避難指示を伝えたが、一方でそれ以外の方には直ちに避難が必要ではないこと、切迫した状況ではないことは伝えられていなかった。

気象庁のホームページに掲載をされていた北本市の雨や風の予報を見ると、北本市における風速は最大でも20メートル程度で、屋根が飛ばされることはないだろうという予測もできるが、テレビの報道だけでは不安になる方もたくさんいたのではないか。本庄市の吉田市長はフェイスブックでこうした情報を発信していた。

災害時には市民の不安を軽減するという意味でも、避難が必要な人だけでなく広く市民に対して、複数の媒体を用いて正しい情報を伝え、とるべき行動を示す広報が必要と感じたが、市民への情報伝達のあり方について見解を伺う。

答弁(市民経済部長)

台風19号の接近に伴う本市の情報発信としては、自主避難所開設はホームページ、登録している方へ発信する北本メール、またヤフーが作成した防災アプリの3つの手段で周知しました。気象庁の本市における雨量や風速、また国土交通省の河川の水位がわかるように市ホームページのトップページにリンクを掲載し、周知を図りました。

直ちに避難が必要でないことや、切迫した状況でないことの発信につきましては、電話でお問い合わせいただいた方にはその時点での状況をお伝えし、自宅での待機をお願いしましたが、各地で甚大な被害が発生している中で、本市が安全だという情報を、積極的に発信することは困難でした。

今後は、発信する情報の内容、手段についてよく検討し、必要な情報を適切に伝達できるよう努めてまいります。

再質問

Q.避難所の開設は、ホームページや北本メール等でお知らせをしたということだが、いずれもITに強い方、あるいは防災に対する意識の高い方にはお知らせができるものの、高齢者を含め広く一般の方に対する周知としては不十分ではないか。北本メールや、ヤフーの防災アプリに登録している人はどれくらいいるのか。

A.北本メール登録者のうち、防災関係の受信設定をされている方は11月末現在で約2,600名です。ヤフー防災アプリを登録している方で、本市在住の方は約1万2,000名と伺っています。

Q.やはり人口に対する人数としては十分ではない。これらは、いずれもインターネットを通じた。危機管理の観点からも複数の伝達手段を確保しておく必要があるのではないか。ネット経由以外のポピュラーな伝達手段しては防災行政無線があるが、今回は防災無線により自主避難所の開設や避難指示の情報を流していないが、その理由は。

A.自主避難所の開設の周知は、自主避難所ということで積極的にそこへ避難を推奨するものではなく、在宅避難を基本と考えていたため、防災行政無線で周知した場合、広く非難を呼びかけるものと誤解される恐れがあったこと、また不安をあおることになる恐れがあったこと等を考え、使用をしなかったものです。避難勧告も、荒川の水位上昇による浸水が想定される区域が極めて限られていたために防災行政無線を使用せず、職員が直接伺う、またワコーレマンションは、自主防災会と日ごろより連絡をとっているため、事前に連絡調整を行った上で、避難所の開設等の準備もお願いした上で、館内放送での周知という方法をとらせていただきました。

Q.今回の台風被害では、防災無線を使う場面がなかったが、いずれ防災無線が必要になることがある。加須市では今回の台風を踏まえ、市内の全約4万7,000世帯を対象に、防災行政無線を受信するラジオを無償で貸与するという報道があった。これまで防災無線の内容を、エリアメールなどをとおして市民に周知をしてきたが、高齢者をはじめ、スマートフォンなどを所有していない住民への防災情報の伝達が課題だったと、また防災無線は豪雨や暴風の中で防災無線が聞こえなかったという苦情が相次いだということ。これらの課題はどの自治体も同じ。高齢者世帯などインターネットによる情報入手が難しい家庭に対しては、希望に応じて有償、または無償で防災ラジオを貸与することも検討するべきと思うが、いかがか。

A.防災行政無線が聞こえにくい場合の代替手段として、アプリやメール以外でも電話でその内容を再度聞くことができる自動応答サービスがあります。これも、もう少し周知が必要と考えています。また、総務省の調査によれば、国内で携帯電話を保有している世帯が、今95.7%となっていることから、多くの御家庭で御利用いただけているものとは考えています。しかし、必要な情報、正しい情報を市民に漏れなく伝える必要があると考えておりますので、この情報発信につきましては、その内容、手段について、防災ラジオも含め、今後検討してまいります。

Q.正しい情報を伝えるための手段として、ホームページに関しては、見に来ていただかなければ、その情報を知っていただくことができない。メールやアプリは、登録されている方にはお知らせができるが、そこからの拡散は期待ができない。拡散性を考えると、本庄市長がやったように、フェイスブックやツイッターも有効ではないか。いずれも市の公式のアカウントがあり、今後はSNSによる発信も行うべきと考えるが、いかがか。

A.プッシュ型でかつ拡散性の高いSNSの活用は有効であると考えます。情報伝達手段にもそれぞれメリット、デメリットがありますので、発信する内容によって適切かつより多くの手段で発信できるように努めます。

要旨3 暴風による高齢者等の避難支援について

質問

今回の台風19号では、当初の予報では関東地方では最大風速が50メートルになるとも言われていた。9月に上陸した台風15号では、千葉県などにおいて強風により甚大な被害が発生した。実際には風速20メートル程度で事なきを得たが、悪い条件が重なれば千葉のような強風が発生する可能性もあったと思う。

風は、洪水と違って被害が発生する地域を事前に予測することができない。事前に避難を促すことが、大変困難である。特に心配なのは、警戒レベル3で避難を開始する高齢者等の避難。実際に避難準備、高齢者等避難開始を発令する場合には、さまざまな課題があると思う。

発令を受けて避難すべき高齢者等とは誰なのか、避難すべき人に対して避難すべきことを誰がどのようにして漏れなく伝えか、自力では避難できない人に誰がどのように避難をさせるのか、避難すべき人がきちんと避難したかどうかを確認することができるのか、特に暴風を想定した場合、学校の体育館等の避難所に避難をすることが本当に安全なのか等々、さまざまな課題が考えられる。
暴風により警戒レベル3、高齢者等避難開始を発令した場合に、行政や住民がとる実際の行動や課題となっている点について伺う。

答弁(市民経済部長)

暴風による被害は、被害が発生する地域の予測が困難であり特定できないこと等から、暴風のみを対象として高齢者等避難開始を発令することは現実的ではありません。暴風による高齢者等避難開始を仮に発令する場合に考えられる課題としては、発令対象が限定できないので、エリアが市内全域となり、高齢者のみならず全市民が対象となります。その場合、全市民が同時に避難できるような避難所、代替施設はなく、また、そこで対応する人員がいないことが課題となります。

また、避難所へ避難する際に飛翔物等で被災する危険性が高いこと、さらには無事避難所に避難できた場合でも、避難所として指定している主に学校体育館はガラスが多い構造です。そのため、避難所にて被災する危険性もあるということが考えられます。したがって、暴風による警戒対応としては在宅避難、または近くの頑丈な建物への避難が望ましいと考えています。

地域防災計画の中で暴風のみに特化した対策は規定しておらず、風という視点では竜巻等の突風対策の中で命を守る対処法として、
①頑丈な建物へ避難する、
②窓ガラスから離れる、
③壁に囲まれたトイレなどに逃げ込む、
④避難時は飛来物に注意する
の4点を記述しております。このことを強く啓発していきたいと考えます。

再質問

Q.現状の地域防災計画では、暴風に特化した個別細則は盛り込まれていないということだが、北本市においても、台風15号において南関東で発生したような非常に強い40~50メートルの強風が発生する可能性があるとお考えでしょうか。

A.本県は、千葉県のような海沿いというところでは立地条件が異なりますが、本市において絶対にないということは言い切れないものと考えます。台風19号の際にも千葉県で竜巻と思われる突風による被害が発生しており、実際に埼玉県南部においても一時警報が発令されたと記憶しています。そのため、警戒本部としては当時、気象情報を注視していました。なお、竜巻の発生を事前に正確に予測するということについては困難と考えています。

Q.実際、埼玉県内においても越谷や熊谷のほうで竜巻が発生して、人家に被害が及ぶということがあったので、北本市でも可能性はあるはず。現状では、暴風による避難勧告や避難指示は現実的ではない、在宅避難が望ましいという説明だったが、市民にはそういった認識がないのではないか。暴風に対しての避難のあり方を、きちんと市民に周知すべきと考えるがいかがか。

A.強風のさなかに避難行動をとることは大変危険であり、推奨できません。暴風に対する避難の考え方としては、台風等の接近により避難する場合は、暴風になる前に避難行動をとっていただき、風が強まってからは在宅避難ということについて、先ほどの防災計画に定る竜巻等の突風対策に挙げられている4つの注意点等と合わせて、強く周知をしていきたいと考えています。

Q.高齢者等も在宅避難が原則になると思うが、老朽化した家屋にお住まいの方など、自宅にいることが危険な方もいると思う。特に介護が必要な方については、地域包括支援センターと連携して、事前の自主避難に支援が必要な人を把握したり、福祉施設や医療機関への一時避難が可能かどうか検討、協議したりするなど対策を講じていく必要があると思うがいかがか。

A.一人での避難が困難である要介護者や障害のある方については、避難行動要支援者として現在、名簿を作成しており、現在4,481名の方に登録をいただいています。また、その内容について提供に同意をしていただいた方の情報は、消防や警察、民生委員、自治会等に配付をしています。
これらの方々の具体的な避難支援については、自治会や自主防災組織等の共助の力をお借りする必要があると考えています。
また、福祉施設等の避難所としての活用については、災害時における福祉協力等に関する協定を現在4事業所と締結しています。その拡大等を検討してまいります。

要望

今回は、私が感じた課題について質問した。特に高齢者等への避難支援については非常に重要な問題です。ぜひ万全を尽くしていただきたい。私が質問したもの以外にもいろいろと見えてきた課題があると思うので、被害の大きかった他市の状況や対応状況、国の動向なども踏まえ、地域防災計画の見直しをお願いしたい。