ふるさと納税 ようやく沈静化か(令和元年度現況調査から)

ふるさと納税は7年ぶりに減少

8月5日に総務省から令和元年度のふるさと納税実績が発表されました。ふるさと納税の寄附額は平成26年度から増加の一途をたどっていましたが、令和元年度は7年ぶりに前年度を下回りました。令和元年度中の寄附総額は4,875.4億円(前年度から5%減)、寄附件数は2,333.6万件(0.5%増)でした。

出典:令和2年度ふるさと納税に関する現況調査結果(総務省)

北本市の寄附額は県内4位

令和元年度の北本市のふるさと寄附受入額は、2億4,784万9千円(前年度比54.6%増)でした。これは県内第4位の受入額となります。「銀座王國屋オーダー補助券」の人気が高く、高額のふるさと納税を集めています。

一方で、北本市内にお住いの方が他の自治体にふるさと納税を行ったことによる個人市民税控除額も7,197万8千円に上りました。北本市では差引き1億7,587万円のプラスとなりましたが、県内の多くの自治体がこの制度により多くの税収を失っています。制度がある維持される限りはその中で最大限の努力を続けるしかありませんが、地方のために良い制度だとはとても思えません。

令和元年度埼玉県内市町村のふるさと納税寄附受入額・寄附金税額控除額(Excel)

総務省資料を元に桜井作成

寄附額1位は泉佐野市で約185億円

令和元年度の寄附受入額第1位は泉佐野市(大阪府)で約185億円でしたが、前年度は約498億円でしたから、これでも大幅減です。寄附額上位10団体が集めた寄附の合計額は約734億円で占有率は15.1%。前年度は1,554億円で30.3%でしたから、寡占状態は大幅に改善されたと言えます。

令和元年度ふるさと納税寄附受入額上位100団体(Excel)

総務省データを元に桜井作成

泉佐野市は約185億円の寄附を集めましたが、返礼品の調達に約112億円(なんと寄附額の60.6%)を要しています。制度改正前に駆け込み的に寄附を集めたもので、返礼品の上限が寄附額の30%以内と明確に定められた現在は、同じ手法は使えません。

総務省が再三わたり「良識ある対応」を求めていたにも関わらず、一部の自治体が暴走を続け、総務省としても「指定制度」を設ける事態となりました(詳しくは総務省HPをご覧ください)。令和2年度は指定制度に加え新型コロナの影響もあり、寄附総額としては頭打ちになると見ています。

返礼品だけじゃないコスト、寄附の半分は事業者へ

総務省が「返礼品は寄附額の30%以内」と定めたことで、調達コストも前年度の55.0%から46.7%に減少しました。返礼品の調達に要した費用は寄附額の28.2%(前年度35.4%)でしたが、前述の泉佐野市を除くと26.9%まで低下します。

出典:令和2年度ふるさと納税に関する現況実態調査(総務省)

しかし返礼品以外にも、決済費用に2.0%、ふるさと納税ポータルサイトの手数料等の事務費に8.1%など、寄附額の半分がコストに消えています。送料は実費で仕方ないとして、決済費用、ポータルサイト手数料、広告手数料は、ごく限られた少数の事業者に多くの費用が流れているものと思います。

寄附を受入れる自治体があれば、税収を失う自治体もあります。失われた税収の総額は3,391億円にもなります。地方交付税の計算上は、寄附金税額控除分は基準財政収入額から差し引かれますので、失われた税収の約75%が交付税措置されることになります。ふるさと納税で失われた税収の大部分が地方交付税で穴埋めされているわけで、そのコストは国民が負担していることなります。

制度改正をしたとは言え、依然として特産品のある自治体と一部の事業者と富裕層が得をする制度である点は変わりありません。ふるさと納税が地方税の偏在是正や地域振興に役立っている面があるとしても、制度としてあまりに不公平で非効率です。

地方税財政制度の抜本的な見直しをしたうえで、ふるさと納税制度を廃止するべきだと思います。

 

※ふるさと納税に関するさまざまな情報は、総務省のふるさと納税ポータルサイトに掲載されています。