北本市 令和2年度 決算【詳報】

北本市の令和2年度決算について、12月定例会において全ての会計について認定されました。

各会計の決算の内容について詳しく解説します。

北本市令和2年度決算状況(北本市ホームページ)
https://www.city.kitamoto.lg.jp/soshiki/gyouseikeiei/zaisei/gyomu/g2/kessan/12897.html

一般会計

主な決算指標(普通会計ベース)

主な財政指標は上の表のとおりです。将来負担しなければならない負債の割合を示す将来負担比率の低下は良い傾向です。

指標の説明 総務省ホームページ(https://www.soumu.go.jp/main_content/000264701.pdf

歳出

令和2年度の一般会計歳出額は、前年度から約76億円、37.6%増の278億5,291万603円となりました。約76億円増のうち約72億円が総務費、約5億円が教育費です。

総務費の増加の要因は、新型コロナ対策として1人10万円交付した特別定額給付金が約66億4千万円。ふるさと納税寄附の増加に伴う返礼品、手数料、積立金等の増額が約2億6千万円です。

教育費の増加の要因は、GIGAスクール対応(小中学校のオンライン環境整備・1人1台タブレット導入など)がその多くを占めています。

民生費も約3.2億円増加しています。高齢化の進展に伴い、後期高齢者医療特別会計繰出金と介護保険特別会計繰出金などで社会福祉総務費が約1.5億円増加しているほか、幼保無償化により保育施設の需要が増加していることから児童福祉費も約1.7億円増加しています。

一方で土木費は約2.3億円の減少となっています。前年度は宮内緑地の公有地化(約1.6億円)があったため、平成30年度よりも約2.6億円増加していたものです。

また、農林水産業費は農業ふれあいセンター(桜国屋など)の整備が令和元年度で完了したため、約1.7億円の減となりました。

歳出(性質別)

次に性質別で見てみます。補助費や物件費は特別定額給付金の給付や各種新型コロナ対策を講じたことによるものです。

一方で、普通建設事業費は前年度から約4億円減の約7.5億円となりました。これは過去10年でも最少の決算額です。

人件費、公債費はほぼ横ばいですが、扶助費がここ2年で大きく増加しており、今後も増加が懸念されるところです。

歳出(高額事業など)

上の表は、高額事業、特別会計への繰出金、一部事務組合への負担金、職員人件費、公債費についてまとめたものです。

高額事業では、児童施設運営費が近年大きく増加傾向にあります。幼保無償化に伴い保育所や認定子ども園の需要が増えていることが主な要因です。学童保育事業でも需要は不足しており、引き続き増加が見込まれる分野です。

特別会計繰出金では、高齢者関係(介護保険、後期高齢者医療)が増加傾向にあります。久保特定区画整理事業特別会計への繰出金は、同会計の決算額が減少傾向にあるにも関わらず増加傾向にあります。同特別会計の公債費が増加している影響と考えられます。市では一般会計の公債費の将来推計は公開されていますが、同特別会計の公債費の将来推計は作成すらしていません。早急に作成し、公開するよう求めました。

歳出(新型コロナ関連)

令和2年度は新型コロナウイルス対策で歳出決算額が大きく増加しています。

市がまとめた令和2年度の新型コロナ関連事業は、計73事業、76億5,862万9千円に上ります。主な事業は次のとおりです。

特別定額給付金支給事業 66億3,785万9千円
学校ICT環境整備事業 3億6,593万8千円
子育て世帯への臨時特別給付金給付事業 7,011万5千円
ひとり親世帯臨時特別給付金給付事業 6,874万4千円
水道料金軽減支援補助金交付事業 4,024万8千円
プレミアム付商品券(クーポン型)事業 3,621万2千円
新生児特別定額給付金 3,220万円
中小規模事業者等支援給付金給付事業 2,730万9千円
キャッシュレス型消費活性化事業負担事業 2,675万4千円
インフルエンザワクチン接種事業 2,606万4千円 など

歳入

令和2年度一般会計の歳入です。水色のところを注目してください。市税については次項で解説します。

地方消費税交付金は令和元年10月から税率が10%に引き上げられたことにより増加したものです(10%のうち2.2%が地方消費税で、県と市町村で折半)。

地方交付税の増加は、基準財政需要額が増加したことによるものです。次項で解説する地域社会再生事業費(約8,500万円)が新設されたほか、社会福祉費(約6,600万円)、高齢者福祉費(7,500万円)が大きく増加しています。

歳入全体で前年度から約78億円増加していますが、そのほとんどが国庫支出金です。前年度から76億円増加しています。新型コロナウイルス対策として1人10万円の特別定額給付金が給付されましたが、総額約66億4千万円で、財源はすべて国庫支出金です。また、市町村が比較的自由に使える財源として新型コロナウイルス対応地方創生臨時交付金(約6億4千万円)が交付されました(使途については歳出のところで解説しています)。

寄附金が前年度から約3.5億円増加し、約6億円となりましたが、このほとんどがふるさと納税寄附金です。北本市へのふるさと納税寄附額は年々増加し、令和2年度は埼玉県内の市町村で第1位となりました(詳しくはこちらをご覧ください)。

市税

令和2年度の市税決算を見ると法人市民税(法人税割)と固定資産税(償却資産)が大きく減少しています。

法人市民税(法人税割)の減少のうち約3,100万円は、税制改正(税率引下げ)によるものです。税率が引き下げられた代わりに、新たに法人事業税交付金(約4,300万円)が交付されることになりました。また、地方交付税でも新たに地域社会再生事業費(約8,500万円)が計上されています。北本市の場合は、税率引下げによる税収減よりも、法人事業税交付金と地方交付税(地域社会再生事業費分)の増額の方がはるかに大きくなっています。

固定資産税(償却資産)については、課税資産の償却が進んだ影響ですが、新規資産の捕捉がきちんとできているのか懸念しています。課税資料や現地調査により正しく申告されているか確認する必要があり、執行部にも課税漏れがないかきちんと調査するよう求めています。

個人市民税は、高額所得者の課税額がむしろ増加しており、前年度比で増額となっています。また、入湯税は、市内に温泉のある宿泊施設ができたことで、令和2年度から課税されています。

基金残高(普通会計ベース)

令和2年度は新型コロナウイルス対策関連経費のほとんどを国庫支出金で実施できた上、新型コロナの感染拡大の影響で実施できなかった事業が多数あったため、財政調整基金等の基金を大きく積み増しました。

令和2年度中の増減額が大きかった基金は次のとおりです。

財政調整基金 +241,177千円
公共施設整備基金 +42,844千円
南部地域整備基金 +50,381千円
一般廃棄物処理施設整備基金 +100,220千円
ふるさと応援基金 +209,497千円

市債残高

令和2年度は大規模な施設整備など投資事業がほとんどなく、市債発行額が前年度を約2.6億円下回りました。一方で返済にあたる公債費は前年度並みだったことから、市債残高は約7.3億円減少しました。

一方で、地方交付税の振替措置である臨時財政対策債の残高は減少していません。国は国税の一定割合を財源として交付する地方交付税の不足分を臨時財政対策債という名目で地方に借入れさせるのではなく、法定割合を引き上げて地方交付税の財源を確保すべきです。

【参考】令和3年度北本市財政計画(令和3年度~令和5年度)
https://www.city.kitamoto.lg.jp/shisei/unei/2/1490316617356.html

特別会計

後期高齢者医療特別会計

保険者は都道府県単位の広域連合。被保険者数は10,499人(R元:10,178人)。

歳出のほとんどが保険者への納付金。高齢化の進展に伴い被保険者が増加し、広域連合への納付金が増加しています。

久保特定土地区画整理事業特別会計

令和2年度の決算額は3億円を大きく下回りました。特に、区画整理事業の本体である「事業費」が大きく減っていることがわかります。国庫補助の内示額が少なかったこと、区画整理事業の見直しに伴い見直しに影響しない範囲でしか事業が実施できないことなどにより、事業費が少なくなっています。一方で公債費は増加傾向で、令和2年度は決算額の約半分を占めました。公債費が増えれば一般会計からの繰出金も増えます(歳入参照)。本事業における公債費の将来推計を明らかにするよう求めています。

国民健康保険特別会計

保険者は各市町村ですが、財政的な仕組みとしては、市が県に納付金を納付し、県が市町村に保険給付の費用である交付金を交付します。市は県から示される交付金を納付できるよう、保険税の税率を設定し、被保険者に課税・徴収します。

令和2年度の被保険者数は15,096人で前年度から288人減少しました。75歳以上になると後期高齢者医療保険に移行するため、国民健康保険の加入者は減少傾向にあります。

令和2年度決算を見ると税率引上げの影響で保険税収入が増加しています。歳出では、保険給付費が減少していますが、これは新型コロナウイルスの感染拡大による受診控えの影響と考えられます。

また人間ドック・脳ドック受診者の減(R元:421人→R2:306人)などの影響で、保健事業費も減少しています。

介護保険特別会計

介護保険の保険者は市です。令和2年度の被保険者数は20,986人で前年度から301人増加しました。

介護保険特別会計については、令和元年度末の予算補正において誤って減額してしまったため、令和元年度が11か月分の歳出となり、令和2年度が13か月分の決算となっています(この誤りのため、令和元年度決算は議会において不認定となりました)。歳出を比較する際には、この補正誤りの影響を考慮する必要があります。誤りがあった保険給付費の部分の実質的な決算は次のとおりです。

居宅介護サービス、施設介護サービス、高額介護のいずれも増加傾向にあります。高齢化に伴い介護サービスの利用者が増えていることが要因です。しかしその内容を見ると、居宅介護サービスよりも施設介護サービスの方が大きく増加していることがわかります。平成30年度から令和元年度の伸び率を見ると、居宅が+6.0%、施設が+6.4%だったので、新型コロナの影響で居宅系サービスの利用がやや控えられた可能性があります。この傾向は引き続き注視していきたいと思います。

令和2年度は新型コロナの感染拡大により、地域ケア会議が開催されませんでした(R元は14回開催)。認知症対策でも多くの事業が控えられました。新型コロナの感染拡大があっても、介護の必要性は変わらず、むしろ困難さを増した可能性もあります。そうした中で感染拡大を理由として必要な事業が手控えられたことは誠に遺憾です。地域ケア会議は令和3年度からはオンライン会議を導入をしたとのことですが、もっと早い段階で対応すべきでした。