久保特別会計を含む財政計画の策定を求める決議を可決

北本市議会令和6年第1回定例会に『久保特定土地区画整理事業特別会計を含む財政計画の策定を求める決議』を提案し、全員賛成により可決されました。決議の概要をお知らせします。

決議の内容

令和6年度当初予算における一般会計の市債発行額は、臨時財政対策債を除いて9億9,070万円で、令和5年第1回定例会の総括質疑において当時の行政経営部長が目安とした10億円を下回っている。一方で、久保特定土地区画整理事業特別会計における市債発行額は、前年度の約2.3倍となる4億9,230万円が計上された。本特別会計における公債費の財源は、保留地処分が始まるまでの間は、一般会計からの繰入金に頼らざるを得ない。さらに予算審査の中で、国からの交付金が予算額に不足する、いわゆる内示割れがあった場合には、事業の進捗を確保するため、不足する財源を一般会計の南部地域整備基金から繰り入れることが説明された。事業の進捗を確保する必要性は理解するが、急激な市債発行額の増加や基金の減少による財政状況の悪化が懸念される。

本市では、平成20年代半ば、小・中学校校舎等の耐震補強及び大規模改修並びに市役所庁舎建設を同時に実施し、多額の市債を集中的に発行したことで、その後の公債費負担が大きくなり、令和3年度まで市債の発行、つまり投資的事業を抑制せざるを得なかった。市債の発行及び基金の繰入れに当たっては、将来的な財政見通しに基づき、できる限り平準化することを意識して、計画的かつ安定的に行う必要がある。

今後、公共施設適正配置計画に基づく公共施設の統廃合及び改修の実施、2市1町による新ごみ処理施設整備なども予定されており、より計画的かつ安定的な財政運営が求められる。しかし、本市の財政計画は一般会計のみを対象に策定されており、久保特定土地区画整理事業特別会計を含めた実質的な公債費の将来推計が作成されておらず、計画的かつ安定的な財政運営を行うことが困難な状況にある。

よって市長は、久保特定土地区画整理事業特別会計を含む財政見通しに基づく財政計画を策定し、公表するとともに、財政計画に則った財政運営を行うこと。

以上、決議する。

決議を提案した理由

上のグラフをご覧ください。決議文にもあるとおり、北本市では平成20年代に小中学校の耐震補強・大規模改修や市役所庁舎建設により市債発行額(借金)が急増し、その後の公債費(借金の返済)の増加につながりました。公債費の増加により投資的事業(特に施設や道路の整備)を抑制する必要が生じ、公債費が減少する令和3年度まで投資的事業を極端に抑制していました。その結果、特に生活道路の損傷が目立つようになり、議会でもたびたび指摘されるようになりました。

黒字決算が続いたこと、基金(貯蓄)残高が増加したこと、公債費の水準が低下したことなどから、令和4年度当初予算から投資事業を増額し、特に公共施設の老朽化に対応する方向に舵を切りました。また令和6年度からは、遅れている久保特定土地区画整理事業のスピードアップを図るため当初予算を大幅に増額することとなりました。特に久保特定土地区画整理事業については、例年予算で計上した国からの交付金が満額交付されない、いわゆる内示割れの状況が続いていましたが、令和6年度からは国からの交付金が内示割れで財源が不足した分について、南部地域整備基金から繰り入れて財源を確保し、事業を遅らせないようにする方針が示されました。

しかし、グラフのとおり、令和6年度当初予算では市債発行額が急増しており、平成20年代半ばの水準に近づいています。令和5年第1回定例会における私の総括質疑に対し、当時の行政経営部長は、今後の公債費を20億円以内に抑える。そのためには市債発行額を10億円以内とする(臨時財政対策債を除く)と答弁していました。確かに令和6年度当初予算における市債発行額は10億円を下回っていますが、前年度からの繰越分と久保特定土地区画整理事業特別会計分を含むと約21億円となります。

さらに、北本市では財政計画を策定していますが、現状では一般会計しか対象にしていません。これまでは久保特別会計での借入額が少なかったため大きな支障はありませんでしたが、今後は久保特別会計でも借入金の大幅増が見込まれるます。久保特別会計で発行した市債についても、返済(公債費)の財源は一般会計から繰り出す必要があるため、久保特別会計を含む公債費の将来推計が必要となります。一般会計と久保特別会計を合算した将来推計を作成し、それを踏まえた財政計画を策定することで、安定的かつ計画的な財政運営が可能となることから、久保特別会計を含む財政計画の策定を求めたものです。

北本市の財政計画

北本市が策定している財政計画は、北本市のホームページで公開されています。

https://www.city.kitamoto.lg.jp/soshiki/seisakusuisinbu/zaisei/gyomu/g2/1490316569154.html

令和4年度以降の主な投資的事業

令和4年度
 新中央保育所整備(617,490千円)
令和5年度
 総合公園野球場スコアボード改修(150,701千円)
 栄市民活動交流センター整備・改修(550,179千円)
令和6年度
 体育センター天井等改修(350,000千円)
 (仮称)中丸第二学童保育室整備(69,929千円)
令和7年度以降
 小・中学校体育館空調設備整備
 文化センター大規模改修
 新ごみ処理施設整備(埼玉中部環境保全組合)

今後の財政運営について

北本市の財政状況は良好な状態が続いていましたが、令和6年度当初予算や今後控えている大規模投資事業を踏まえると、今後は急速に悪化する恐れがあります。一方で、久保特定土地区画整理事業や新ごみ処理施設の整備だけでなく、市長公約に基づく事業(駅東口ロータリーの屋根掛け、小中学校体育館への空調設備設置など)、都市基盤整備(台原地区・中丸南地区の市街化、上尾道路沿線開発)など、やるべきことはたくさんあります。

令和6年度当初予算には北本市の最上位計画である『第6次北本市総合振興計画』やコンパクトシティを進めるための『立地適正化計画』を策定する予算が計上されており、今後のまちづくりの方向性を決める転換点を迎えようとしています。

早急に財政計画を策定し、財政計画に基づく安定的・計画的な投資的事業の実施を求めてまいります。