視察報告【令和4年度 埼玉中部環境保全組合(佐賀)】

令和4年10月27日(月)から28日(火)の日程で埼玉中部環境保全組合の行政視察に行ってまいりましたので、概要を報告します。視察先は佐賀県佐賀市と福岡県大木町です。

佐賀市清掃工場 CO2分離回収事業等

ミライアイズ
~イノベーションで未来を切り拓く ”CCUS”~ 佐賀市 編
https://youtu.be/QwcCuCfG6-c (YouTube)

佐賀バイオマス産業パンフレット(PDF)

佐賀市では2005年と2007年に市町村合併。ごみ焼却施設が4か所になった。2003年の稼働した佐賀市清掃工場で市内全ての可燃ごみを処理できることから集約すると市長が打ち出したが、地元とは「旧佐賀市以外のごみは受け入れない」と約束しており、大きな反対にあった。佐賀市では2009年に下水汚泥の肥料化を開始するなどバイオマスに取り組んでいた。単に集約するのではなく、清掃工場において二酸化炭素を回収し、周辺で活用することで、産業を呼び込み、雇用の創出を図る『バイオマス産業都市』構想を打ち出した。熊本では焼却施設の熱を農業に利用する取組を行っており、住民とともにこれを視察することでエネルギーの農業への活用なことを知ってもらうなど、7年かけて地元住民に説明し、ようやく理解を得られた。

大牟田市において、東芝が火力発電所で二酸化炭素を回収する実証実験をやっていた。これを視察し、平成25年に1日10キロ回収する実験プラントを製造。野菜の栽培に利用して、安全であることや、成長が促進されることなどを確認。回収過程で塩化水素が発生し、管が錆びてしまうため、これを除去することが必要だった。農水省に協力を求めたが断られたため、東芝、九州電力、荏原環境プラントと佐賀市の共同研究として実施した。

回収ができることは分かったが、どうやって活用するかが重要。微細藻類培養事業の(株)アルビータ(https://www.alvita-saga.com/)、バジル栽培を行い地元の高校生と共同で商品開発を行うグリーンラボ(株)、きゅうりの多量収穫に取り組むゆめファーム全農SAGAなどが活用することとなった。特にアルビータでは将来的に1日7~8トン活用したいとの意向から、1日10トン供給できる施設を整備することとした。アルビータは清掃工場北側の土地を使い、事業を拡大することになっている。

下水浄化センターでは、味の素と連携した汚泥の肥料化や、処理水の産業利用に取り組んでいる。通常は処理水の窒素やリンの除去に努めるが、処理水が流れ込む有明海で栽培している『海苔』には栄養分が必要。特に冬季には不足することから、処理水に含まれる窒素濃度を調整し、放流基準の上限近くで放流し、海苔の品質維持に貢献している。当初は二酸化炭素の活用について(株)ユーグレナに相談したが、(株)ユーグレナではむしろ下水浄化センターの取組に着目し、実験プラントを作っている(https://www.euglena.jp/news/20210426-2/)。

◆主な質疑

 

Q.市町村合併により4つの焼却施設を佐賀清掃工場1つにまとめたとのことだが、増設等は行わなかったのか。

A.ごみ排出量が減少しており佐賀清掃工場の処理能力で十分受け入れられると判断した。増設はしていない。

Q.清掃工場周辺の二酸化炭素を活用している民間事業者に対しては、どのように場所を提供しているのか。

A.場所によって異なる。地主から直接購入したり、借り受けているところもあれば、市の土地を貸し付けたり、売却したりしたところもある。

Q.清掃工場周辺は圃場整備を実施した場所か。転用にあたり制約はなかったか。

A.圃場整備は実施していないが、青地(農業振興地域内の農用地区域内農地)である。藻類の培養が農業に当たるかどうかについて、農水省では当初は農業と認めてくれなかったが、何度も協議を行い、学識等の意見も得て、農業として認めてもらった。農用地から農業用施設用地、利用目的の変更で済んでいる。

Q.佐賀市議会の中では採算性に問題があると指摘されているようだが。

A.整備費15億円、農水省が特別に5億円を補助してくれた。市の負担は10億円。17,8年で減価償却。当初はアルビータが1日1トン利用する予定だったが、泡が大きすぎ効率が悪かったためナノバブルに替えたところ利用料が10分の1になってしまった。ただ、その分は他の事業者が利用できることになる。二酸化炭素販売事業者として考えたら、やめたほうがいい。清掃工場の周りに産業が集積し、税収や雇用につながる。経済波及効果は60億円を試算されている。

佐賀市清掃工場二酸化炭素分離回収設備

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福岡県大木町 おおき循環センターくるるん

『大木町では子どもたちに「つけ」を残さない町』を合言葉に大量生産・大量消費・大量廃棄からの脱却を目指しています。平成20年度に全国で2番目に「ゼロ・ウェイスト宣言」をし、徹底した分別収集とリサイクルに取り組んでいます。

生ごみは分別収集し、メタンガス化しています。家庭では専用のバケツに生ごみを溜め、週2回の収集日に集積場の大きなバケツ(10戸に1か所程度)に廃棄します。町がこれを収集し、メタンガス化施設に運搬し、浄化槽汚泥とともに処理します。湿式の処理で大量の液肥が発生しますが、全量を水稲や野菜等の肥料として活用しています。液肥代は無料で、散布量として10a1,000円徴収しています。全体では100haに散布しています。液肥を全量活用しているため、大規模な排水処理施設が要りません。メタンガスは発電機で発電し、できた温水や電気は場内施設で利用しています。生ごみの分別収集により可燃ごみの量は約4割削減されました。また、可燃ごみの指定袋の料金を1枚30円から60円に引上げ、分別収集を促進しました(可燃ごみの収集は週1回)。液肥で栽培した米や野菜は学校給食で提供されるほか、循環センター併設のレストランでも提供されています。施設整備費は約11億2千万円(国の補助制度あり)ですが、ごみ処理費用は年間約3千万円削減できています。

生ごみの他にも分別収集とリサイクルを徹底しています。紙おむつは専用の指定袋に入れ、各地区の回収ボックス(町内約50か所)に入れてもらいます。民間事業者により建築用壁材にリサイクルされるほか、サーマルリサイクルをしています。紙おむつの分別収集・リサイクルは全国初の取組です。プラスチックは容器包装とその他のプラを一緒に捨てられます。町で容器プラとその他プラに分け、容器プラは通常の容器包装リサイクルの仕組みで処理し、その他プラは油化しています。カン・びん・ペットボトルは3つの小学校区ごとに常設の回収ボックスを設置。いつでも捨てられ、売却益は地域に還元しています。

大木町ではリサイクルできるものは徹底的に分別収集しています。大木町環境プラザでは燃やすごみ以外の資源ごみや粗大ごみを回収しています。多くの町民が直接ここまで持ってくるそうです。大幅に減量化された燃やすごみは、お隣の大川市清掃センターで焼却処理されています。

おおき循環センターメタン発酵槽

おおき循環センター液肥貯留槽大木町生ごみ回収バケツ