視察報告【令和4年度 議会運営委員会(会津)】

令和4年10月17日(月)から18日(火)の日程で、北本市議会運営委員会で福島県会津若松市と喜多方市に行政視察にいってまいりましたので報告します。

会津若松市 議会改革・政策サイクルに基づく議会活動

人口 114,639人(R4.4.1)
面積 382.99㎡
議員数 26人(定数28人)
事務局 13人
※北本市議会は議員数20人、事務局5人

会津若松市議会では、議会の①監視機能、②政策立案機能、③民意吸収機能を果たすため、議会として「仕組み」を作り、住民意思の反映を実現している。一般質問は議会の華ではない。重要なのは議案。執行部が拡げた風呂敷(条例・議案)に穴やシワがないかを確認するのが議会。議員個人ではなく議会全体で対処することが大事。北本市にも議会基本条例があり、その仕組みはできている。あとはどうやって運用していくか。

会津若松市議会では、市民との意見交換会を年2回開催、市内15地区で開催している。1班5人の議員が5班に分かれ、3地区ずつを分担。議会報告、地区別の課題・要望、市政全般の課題・要望について意見交換する。いただいた意見は広報広聴委員会が交通整理して分類ごとに分科会(委員会)に割り振って対応する。担当する地区は毎回変わり、解決していない事案は次の班に引き継ぐ。具体的な事例として、上水道未整備地区からの上水道整備の要望に対し、調査委員会を立ち上げ、1年間かけて実地調査や市の担当者へのヒアリングなどを行い、報告書をまとめ、賛成総員で決議を可決した。市長も賛成総員での決議を重く受け止め、5年間の整備計画を策定し、整備を行った。飯森山の公衆トイレの水洗化では、先に市長に対し要望書が提出されたが、議会としても意思決定を行うため陳情を提出してもらった。議会が公衆トイレの水洗化を認めたため、市長としても補正予算を迷いなく計上することができた。議員個人が要望を吸い上げて執行部に提案するのではなく、議会全体で要望を受け止め、議員間で討議し、意見をまとめて執行部に対応を求める。こうしたプロセスを経ることで、執行部も重く受け止めざるを得ない。

以前は定例会の合間に「政策討論会」を開催していたが、通年議会化によりこれを廃止。予算決算委員会の所管事務調査として分科会において審査をしている。学識経験者からのレクチャー、先進地への行政視察、委員間での討議を行う。決算に向けては7月下旬から準備会を開催し、各委員が論点抽出シートに論点をまとめ、分科会に持ち寄る。9月議会前に3,4回集まって決算審査に臨む。委員全体で共有することが重要。委員会では質疑の後に委員間討議を行う。全ての議案について質疑を行い、その後執行部を退席させ、委員間討議を行う。ここで「要望的意見」や「付帯決議」をまとめ議会としての意思を示している。

主な質疑

 

Q.分野別意見交換会とはどういうものか。

A.地区別と異なり、行財政、健康・福祉、産業・経済などの分野別に関係団体からの要望に基づいて開催するもの。

Q.地区別意見交換会の参加者は固定化しないか。どのように集めているか。

A.議員が自治会長に参加依頼をしている。自治会長自身が参加してくれるほか、退任後も参加してくれることもある。意見交換のテーマを示しているので自治会でもテーマに合った市民に声掛けをしてくれる。

Q.繰り返し同じ意見が提案されることはないか。

A.きちんと対処しなければそうなる。提出された意見についてはきちんと対処し、返している。例えば道路修繕の要望があれば、1週間以内に現地を確認し、市に対応を依頼。市の対応状況についても確認する。

Q.意見交換会での議会報告は短時間(15分)。説明すべきことは多い。どのように説明しているか。

A.議会広報紙の配布後に意見交換会を開催しており、すでに読んでいることを前提として、簡単な説明に留めている。

Q.全ての議案について議員間討議を行うのか。

A.全ての議案について質疑を行い、その後に議員間討議を行う。議案ごとではない。

Q.意見を吸い上げ政策化するシステムとして非常に素晴らしいと感じるが、論点シートなどはとても役人的。こうした様式やシステムを議員主導で作り上げたのか。

A.執行部の手は借りていないが、論点シートへの入力などは議会事務局が入力を行うなどしている。

わたしの感想

 

市民からは地区別意見交換会において意見や要望を聴き取り、意見交換会以外にも有識者を招聘してレクチャーを受けたり、先進地視察により市政の課題を発見・整理したりして、徹底的な議員間討論により議会としての方向性を定め、決議や要望的意見として議会の意思を決定し、執行部に対応を求めることで市民の意見を反映させる政策サイクルの仕組みは、二元代表制の一翼を担う議会として模範とすべき手法だと感じました。

 

北本市議会で同じことをやるために必要なのは、議員の資質の向上と議会事務局の強化だと思います。兼業の議員も多い中で、議員自らが議会活動のための時間を確保し、学び、考え、表現しなければなりません。今、健康福祉常任委員会では「いわゆるごみ屋敷の現状と対策」をテーマにごみ屋敷への対処方策を検討しているところですが、委員長である私が全体のスケジュールを組み、資料を作り、説明し、方策案まで示して、他の委員に意見を求めたり、役割を割り振って行動してもらうという形を取っています。そうしないと事が進まないというのが現実です。

 

会津若松市議会の仕組みを一つの理想として、北本市議会の現状からどうやって差を埋めていけばよいのか。仕組みを作るのが先か、議員の資質を向上させるのが先か。とても悩ましく、今のところ妙案はありません。

喜多方市 議会におけるタブレット端末の活用

喜多方市では平成27年9月から議会におけるタブレット端末の利用によるペーパーレス化について検討を開始。平成29年4月に全員協議会において導入の方針を確認。体験会や先進市視察、専門家による講演会などを経て、平成30年4月の補正予算(市長選挙のため当初予算が骨格予算だったため)に議会タブレット導入事業予算327万5千円を計上。平成30年9月議会から試行を開始しました。

端末は各議員に配布され、議員個人の活動にも使用できるものの、アプリのインストールは制限されています。機種はiPad。インストールされているアプリは、PDFファイルを閲覧・書込みなどするための『SideBooks』、ビジネスチャットの『Wow Talk』、ファイルを共有するための『Dropbox』。その他に、スケジュールを共有するための『Googleカレンダー』、議会中継など動画を視聴するための『YouTube』などを利用しています。特にGoogleカレンダーによるスケジュール共有やビジネスチャットが便利。導入事例の多いSideBooksを採用したが、PDFしか使えないので、Slackの方が良かったかもしれない。

タブレットはリース(29台)で、通信費等を含む初年度の経費は327万5千円(7か月分)、2年度目は331万4千円。予算説明書や行政報告書などの資料はPDF化して配布しているが、引き続き紙による配布も行っており(辞退する議員もいる)、ペーパーレス化には至っていません。

主な質疑

 

Q.財源の捻出に当たって当局とはどのように調整してきたか。

A.議会では議員定数の削減に取り組んできた。議会費の抑制に努めており、議会が必要とした経費については最大限配慮して予算計上してくれている。

Q.オンライン会議の導入は検討しているか。

A.議会のオンライン化は法律が改正されないとできない。Zoomの導入も検討したが、セキュリティの面で懸念があり導入に至らなかった。Wow Talkでも5人までの会議は可能であり、施行している。

Q.議会事務局の負担は。

A.資料を郵送する手間がなくなり、Wow Talkでは誰が閲覧したか分かるようになっているので大変助かっている。

Q.配布されたタブレットだけでなく個人のスマホにもアプリを入れて活用しているとのこと。タブレットがなくてもかなり便利になるのでは。

A.無料で使えるアプリが多い。Wow TalkやGoogleカレンダーだけでもかなり便利になる。