令和5年度議会運営委員会行政視察報告

令和5年11月14日(火)から15日(水)の日程で、北本市議会運営委員会として行政視察を行いましたので、その概要を報告します。

1日目 議会におけるICTの活用(長野県千曲市)

長野県千曲市 人口57,890人(R5.11.1)面積119.79㎢

1.タブレットの導入

平成29年度に議員有志で「タブレット導入研究会」を発足。導入に向けた検討や先進地視察を行った。平成31年3月に議長から議会運営委員会に「市民にわかりやすく親しみのある開かれた議会を目指す」ことについて諮問し、タブレット導入の予算措置を市長に提言するよう答申を受けた。導入は令和2年。

タブレットはiPadPro12.9インチ128GB、システムはSideBooks。3年間のリース。アプリのインストールは不可、インターネットの閲覧は自由だがログは管理している。

Q.導入に当たり反対する議員はいなかったか。
A.当初は難色を示す高齢の議員がいたが、改選によりいなくなった。

Q.どの程度ペーパーレス化できているか。
A.原則として紙媒体の配布をやめたが、大型の図面、新旧を対照で見る必要があるものなど、事務局の判断で紙媒体で配布しているものがある。予算書・決算書については希望者に紙媒体を配布している(約8割の議員が希望)。

Q.タブレットだけで対応できているか。議場に自分のPCを持ち込み、複数の機器を閲覧することは可能か。
A.PCの持ち込みは認めていない。SideBooksが2顔面表示に対応していないため不便が生じている。紙媒体の予算書・決算書を持ち込み、タブレットで前年度のものなどを参照している人が多い。

Q.クラウドサーバを使うことは可能か。
A.アプリのインストールができないため、アプリを使わずに閲覧することができるなら可能である。

Q.画像、映像の保存や議員間での共有は。
A.保存は可能だが、共有する場合には一度事務局に送り、事務局がSideBooksで保存することになる。

2.議会のオンライン化

令和3年度に会議規則を改正し、オンライン会議を実施できるようにした。対象は、常任委員会、議会運営委員会、特別委員会、その他協議会(本会議は法律上不可能)。

Q.運用としてはどのように行っているか。オンラインで出席する場合の映像や音声は。
A.特別委員会で実施したときには、委員長の近くにモニターを設置し、委員が画像や音声を確認できるようにした。

Q.原則として自宅からの参加で、第三者が近くにいない状態でなければいけないと考えるが、どのように確認しているか。
A.委員会ではないが、研修会に自宅以外の場所からオンライン参加したいということがあったが、参加する環境として適切ではないとして認めなかった。具体的な確認方法について明文化されたものがないが、ルールを定める必要があると考えている。

Q.全員がオンラインで参加することは可能か。
A.今のところは想定していない。現在、議会基本条例の策定を検討しており、その中で話し合っていきたい。

2日目 議会による事務事業評価(長野県大町市)

長野県大町市 人口25,760人(R5.10.31) 面積565.15㎢

(参考)大町市議会ホームページ 議会における事務事業評価について

大町市議会では平成25年度から事務事業評価を実施している。予算決算特別委員会に2つの分科会(常任委員会と同じ)を設置。政策的事務事業(令和3年度は169事業)から、各分科会5事業程度を選定のうえ、執行部による内部評価(自己評価)を元に各委員が評価を行い、その評価を元に分科会としての評価を取りまとめる。取りまとめた意見は予算決算特別委員会の全体会で最終決定し、議長から市長に提言を提出。提言を受け、執行部としての対応案をまとめ、議会に回答する。スケジュールは次のとおり。

6月上旬 全事務事業の提示
6月下旬 事務事業の選定→執行部へ通知
7月中旬 執行部で内部評価を実施→議会へ提出
7,8月 分科会で審査、委員間討議
8月中旬 分科会で最終評価決定
8月下旬 議長から市長へ提言、結果の公開
11月下旬 市長から議会に回答

令和3年度までは、9月定例会最終日に意見をとりまとめ、10月に市長へ提言していたが、翌年度の予算編成作業に間に合わず、市長からの回答が2月になっていた(次年度当初予算に反映できない)。このため、令和4年度から提言時期を8月中に早め、次年度当初予算に反映できるようにした。

評価は、「必要性」「公共性」「効率性」「成果」の4項目について、採点し、合計点によって「拡充」「現状のまま継続」「改善のうえ継続」「見直し」の4段階で評価される。また、点数だけでなく改善提案や意見等を記述する欄もあり、分科会として協議のうえ、意見をまとめる。まとまらないときは、両論併記することもある。

質疑応答

Q.6月定例会から9月定例会の間は、議会も執行部も業務が比較的忙しくなく、この間を利用して事務事業評価を行うのは効率的だと考えるが、監査委員にとっては一番忙しい時期である。監査委員も事務事業評価には参加しているか。
A.監査委員にとってはかなり大変だが、監査の日程を先に確保して、空いている日に分科会を行うようにしている。

Q.各委員の自由記述意見をとりまとめ、分科会の意見とするのはかなり大変だと思うが、事務局としてはどこまで関わっているか。
A.基本的に議員の方で作業をしている。分科会でまとまっても、全体会で別の分科会の委員から細かな文言の部分で意見が出され、改めて分科会に戻して文言調整をした例もある。

Q.執行部の事務事業評価との兼ね合いは
A.ほぼ同時期に内部評価を実施しているが、議会に選定された事務事業を優先的に評価している。議会の事務事業評価がなくても、執行部として全事業について評価しており、大きな負担にはなっていない。

委員会による代表質問

大町市議会では、委員会として代表質問を実施している。毎議会実施するのではなく、必要が生じた場合に実施する。必要なテーマがある場合に、誰が、何を質問するかを決め、担当する議員が質問案をまとめる。質問案は委員全員で協議し、最終的な決定を行う。委員会で決められたこと以外は質問してはいけない。1回で終わらなければ、次の議会でも継続して行う。委員会として質問するので、執行部としても重く受け止め、政策実現につながることが多い。