採択された請願のその後(スクラップヤードの騒音・振動等から市民の生活環境を守ることを求める請願)

この件については2024年7月発行のきたもとウェルビーイング通信第41号に簡単に触れていますが、改めて詳細を報告します。

請願の採択

令和6年第1回定例会に、中丸6丁目自治会長関口浩一様他419名から『スクラップヤードの騒音・振動等から市民の生活環境を守ることを求める請願』が提出されました。

この請願の主な内容は、次のようなものでした。

  1. 地域住民から埼玉県生活環境保全条例第4条第1項に基づく調査が請求された場合には、同条第2項に基づき速やかに調査を行い、その結果等を請求者に通知すること。
  2. 1.の調査を行う場合は、同条例施行規則に従い、正しい方法で測定すること。
  3. 2.の測定結果が規制基準に適合していない場合は、原因者に対し、改善等必要な措置をとるべきことを勧告すること。また、勧告に従わない場合には改善命令を発すること。さらに、改善命令に違反した場合には躊躇なく告発すること。

スクラップヤードから発生している騒音について、県条例に基づいて調査請求があった場合には、条例に則って、調査を行い、基準を超過していた場合には勧告、改善命令、告発等を行ってくださいという内容です。本請願は全員賛成により採択されました。

なお、本請願が提出されるに至った経緯については、令和6年第1回定例会の議事録をご覧ください。
日程一覧ページ (kaigiroku.net)

調査請求の内容

本請願が採択されたことを受け、当事者である中丸6丁目自治会は、地域住民を代表して自治会長が調査請求を市長に提出しました。提出日は令和6年4月16日です。調査請求に記載した『調査請求するに至った経緯』は次のとおりです。

  • 市は、令和2年2月7日から令和5年3月20日まで、計8回の測定を行っているが、令和5年3月20日(以下、「最後の測定」という)を除く7回について、騒音の環境基準値である55デシベルを上回っている。
  • 最後の測定は、令和4年12月にレイアウト変更を行ったことに伴い、ヤード北側のみで騒音測定を行ったものであるが、事業所はレイアウト変更前と同様の場所での作業をその後も頻繁に行っている。これについても、住民側は証拠の動画も撮影し市に報告しているにもかかわらず、最後の測定の結果をもって、北側の世帯の騒音問題が解決したかのように測定を終了していることは、市の不作為である。
  • 要するに、新たに被害が発生したのではなく、北側のみを注視した改善案を施行させたがために被害が広がったものであるので、最後の測定は無意味であり、その結果も取り上げられる測定値ではない。
  • 以上のことから、改めて測定を求めるものである。

調査請求に対する市長の回答

調査請求に対し、ゴールデンウィーク前か遅くともゴールデンウィーク明けには回答があるものと考えていましたが、回答を求めても県に相談しているなどと言って、なかなか回答が届きませんでした。速やかに回答しない時点で、すでに県条例第4条第2項違反です。

回答があったのは、請求から2か月が経過した、令和6年6月17日でした。担当課長と担当者が請求者である自治会長宅を訪れ、回答を手交しました。その内容は次のとおりです。

市長の回答は、調査は実施しない、というものでした。その理由は次の2つです。

  1. 調査請求書に添付の別紙1●●●●騒音振動問題関係略図によると、請求者である●●様は、公害に係る被害を受けている者又は受けるおそれのある者に該当しない。
  2. 当該地においては、すでに市による調査が実施されていることや、公害の状況及びその原因が既に実施した調査で明らかであり、公害の原因の改善に向けた取組が実施されている。

1つ目については、地域住民(被害世帯は5世帯+1事業所)を代表して自治会長が調査を請求しましたが、回答文書では「自治会長」の肩書をあえて削除し、会長の個人名を宛名としたうえで、あなたは被害者ではないとしています。請求人と異なる宛名とするならば、請求の時点で「自治会長名では受け取れない」とすべきです。普段は地域の代表として自治会長に色々とお願いしているにも関わらず、こういう時だけ「あなたは地域の代表として認められない」というのはあまりにも失礼な対応であり、自治会長を愚弄するものです。

2つ目について、調査請求では別紙を添えて、なぜ改めて調査が必要なのかを説明しています。最後の騒音測定では重機による作業の中心から離れた箇所で実施されており、結果として騒音基準を僅かに下回りましたが、作業の中心に近い住宅等では以前よりも騒音が酷くなっています。また、作業場所も日によって異なります。作業の場所を変えるというのは根本的な解決方法ではないため、一度の測定で基準を下回ったとしても、改めて測定すれば基準を超過することも考えられます。2つ目の理由も、調査を行わない理由にはなりません。

議員と地元自治会の反応

市長からの回答を受け、令和6年7月27日(土)午後6時から、中丸6丁目自治会員への報告会が開催されました。この報告会には自治会長から全議員に出席又は回答に対する意見の提出が求められました。当日の出席議員は次のとおりです。

滝瀬議長(彩桜きたもと)、青野議員(彩桜きたもと)、村田議員(緑風会)、桜井議員(緑風会)、斉藤議員(公明)、金森議員(みらい)、工藤議員(市民の力)、毛呂議員(れいわ新選組) ※滝瀬議長と毛呂議員は途中退席

日本共産党を除く前回はから出席がありましたが、欠席議員からの意見提出はありませんでした。

当日は、請願の紹介議員でもある私が調査請求の経緯と結果、その結果について見解(上記のとおり)を説明したうえで、各議員の意見を求めました。工藤議員を除く議員は「請求者を実際の被害者(=近隣住民)として再度調査請求をすべき」という意見を述べました。これは市長からの回答を「是」とするものです。

これに対し工藤議員は「自治会長が被害者の代表として請求人になれないというのはおかしい。それにそれが調査を実施しない理由ならば2つ目の理由は書く必要がない。2の理由があるのは、誰が請求しても再度の調査をしないという市長の意思表明であり、請求人を変えても結果は変わらないのではないか」と見解を述べました。私もその通りだと思います。まずは市長からの回答を「否」としたうえで、速やかな調査の実施を求めるべきです。

自治会の皆様にも意見を伺いましたが、市長の回答に誰一人納得している人はいませんでした。

今後の方針

しかし、残念ながら市長からの回答は「行政処分」には当たらないため、審査請求(不服申立て)をすることができません。市長からの回答は納得できるものではありませんが、これを覆す方法はありません。そこで今後の方針として、次のような提案をしました。

  1. 請求者を変えて調査請求をし直す。
  2. 自分たちで測定をした結果を付して調査請求する。

1.については「被害者ではない」という理由で調査の実施を拒否されることはないものの、今回の回答の2の理由により再度調査を拒否される可能性が高いと考えています。

これを回避するためには、2のとおり、引き続き被害が続いていることを示すため、自治会又は被害者において独自に騒音測定を実施したうえで、その結果を添えて再度請求をする方法が考えられます。

しかし、騒音調査を専門業者に依頼すれば数十万円の費用が掛かります。機器をレンタルして測定すればもっと安く実施できますが、基準値を超過しているかどうかの判定までは素人にはできません。

今回の市長の回答は、住民に多大なる精神的負担や経済的な負担を強いるものであり、到底納得のできるものではありません。市長には誠意ある対応を強く求めます。