令和6年12月定例会に、市内全小・中学校の体育館に空調設備を設置するための補正予算案が提案され、可決されました。
補正予算の内容
エアコンは、市内全小・中学校(小学校7校、中学校4校)に設置されます。公平性の観点から、全校一斉の設置となりました。
補正予算は、令和6年度及び令和7年度の継続費として計上されました。令和6年度中の支出額は0円で、全額が令和7年度に支出されます。事業の内容は、実施設計及び設置工事です。実際の設置工事は、令和7年度の冬休み頃になりそうです。
事業費は、小学校が5億9,555万円(財源は市債5億9,550万円、一般財源5万円)、中学校が4億716万2千円(財源は市債4億710万円、一般財源6万2千円)です。財源の市債(借入金)は緊急防災・減災事業債という種類のもので、元利償還金の70%が財政措置されます(市の実質的な負担は30%ということです)。つまり、事業費は約10億円ですが、そのうち市の負担は約3億円ということになります(おおむね10年程度で返済することとなる見込みです)。
CM業務の検討結果
小中学校へのエアコン設置については、令和6年度当初予算に基本設計・実施設計の費用が計上され、一般競争入札を実施しましたが、応札業者がありませんでした。また、当初予算の審査の際に、議会から「断熱化についても検討すること」を求められ、検討することを約束していました。
以上のことから、令和6年6月定例会においていったん設計費を減額し、新たに発注支援業務委託としてコンストラクションマネージメント業務(CM業務)を行うこととする補正予算が計上されました。そしてCM業務の中で断熱化についての検討を行うこととなりました。
体育館へのエアコン設置については、国から2通りの財政的支援があります。文部科学省の補助金は補助率が50%ですが、設置工事と合わせて断熱工事を行うことが条件です。断熱化を行うことで、初期費用(設置工事+断熱化工事)は高額になりますが、エアコン本体の性能を抑えることができ、電気代も安くなります。一方、緊急防災・減災事業債を使う場合は交付税措置率が70%で、文部科学省の補助金よりも市の負担割合は少なくなりますが、断熱工事をしなければ電気代が高くなります。検討の結果は、次のとおりでした。
断熱化をする場合には、初期費用が高く、維持費用が安くなります。初期費用を何年で回収できるか計算したところ、機器を1回更新すると仮定した場合、緊防債を利用した場合は約76年(グラフ外)、補助金を利用した場合は約49年掛かることが分かりました。これでは回収する前に体育館自体の耐用年数が到来してしまいます。
2回更新すると仮定した場合は、緊防債利用が約60年、補助金利用が約32年(グラフは20年毎に更新した場合で作成しているため、2回目の更新で回収)となりますが、建替えの直前に機器更新することは考えにくく、あまり現実的な試算とは言えないでしょう。
以上のことから、断熱化をせず、緊急防災・減災事業債を利用して、実施することとなりました。なお、一部の体育館にはすでに断熱化が実施されているとのことです。
ゼロカーボンシティ宣言との兼ね合いは?
本市は、令和4年1月に『ゼロカーボンシティ宣言』をしており、2050年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロにすることを目指していますが、断熱化を実施した方がCO2排出量が少ないことは当然です。
執行部は、よりCO2排出量の少ない方式(電気・都市ガス・プロパンガスを比較し、電気を選択)を採用したと説明しましたが、エアコン設置前よりもCO2排出量は増加しますから、ゼロカーボンには逆行することになります。再生可能エネルギー由来による電気の供給についても、検討するとのことでした。
児童生徒の安心安全が最優先なので、早期のエアコン設置が望まれますが、どのようにゼロカーボンを達成するかということも今後検討しなければならない課題です。