今回から日本の教育費について何回かに分けてお話しします。
少子化が改善されない理由は、教育にお金がかかりすぎること
日本の合計特殊出生率は2005年の1.26を底に上向き、2016年は1.44となりましたが依然として低い水準のままです。なぜ出生率が向上しないのでしょうか?
2015年に国立社会保障・人口問題研究所が実施した「第15回出生動向基本調査」によれば、夫婦が理想の子ども数を持たない理由の第1位は「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」です。実に56.3%がその理由として挙げています(複数回答可)。この調査は妻の年齢別に集計していますが、35~39歳では64.9%、30~34歳ではなんと81.1%の人が「お金がかかりすぎること」を理由に挙げています。
日本は諸外国と比較して教育費の公的支出が少ないことはご存知だと思います。OECDの発表によると、国内総生産(GDP)のうち小学校から大学までの教育機関に対する公的支出の割合がOECD加盟国の平均が4.2%なのに対し、日本は2.9%で34か国中最下位です。アメリカや韓国でも4.1%です。
ここを改善しないことには少子化が改善されないのは明らかですし、教育にお金が掛かるということは親の経済状況に子の教育が左右されるということですから、貧困の連鎖も解消できないということです。
子どもを大学卒業させるまでに、実際にはどのくらいの教育費が掛かるのか?
高校までの費用は文部科学省の「平成28年度子供の学習費調査」、大学の費用は独立行政法人日本学生支援機構の「平成28年度学生生活調査」のデータを使います。
文科省の調査は子供の学習費を調べたもので、学校関係では授業料のほかにPTA会費や学用品・教材費、部活動、塾や習い事、学童保育などの経費が含まれます。日本学生支援機構の調査には、授業料のほかに、通学・下宿費や生活費・娯楽費なども含まれています。
平均的な費用は上の表のとおりです。小学校から高校まで公立、大学が国立の場合、つまり一番費用が掛からない場合(オール国公立)でも約1,000万円、小・中学校が公立で高校・大学が私立の場合は約1,450万円にもなります。大学が理系の場合、修士課程まで進んだ場合、下宿をした場合などは、さらに費用が掛かることは言うまでもありません。
先に見た出生動向基本調査によれば、1982年の調査では未婚者の希望する子どもの数は男性が2.34人、女性が2.29人でしたが、2015年調査では男性が1.91人、女性が2.02人にまで低下しています。女性の平均初婚年齢が上昇していることと相まって、たくさんの子どもを持つことを諦めた姿が浮かんできます。
今後の連載では、教育費のどこにお金が掛かっているのかをさらに分析し、どうすれば少子化が改善されるのかについて考えていきたいと思います。