◆一般質問 子どもの権利条例の施行に向けて(令和4年6月)

北本市議会令和4年6月定例会における私の一般質問について、その概要をお知らせします。

件名1 北本市子どもの権利に関する条例の施行に向けて
(1)市長として条例の制定をどう受け止めたか(市長)
(2)学校における子どもの権利の定着に向けて(教育長)
(3)条例を施行するための体制の整備について
(4)職員(教員を含む)に対する研修等の実施について
(5)普及啓発について
(6)相談窓口の設置について
(7)特別な配慮が必要な子どもと保護者への支援について

(1)市長として条例の制定をどう受け止めたか

Q.令和4年第1回定例会において議員提案で条例を制定した。本市では平成22年12月定例会において「(仮称)北本市子どもの権利条例の制定を求める決議」が全会一致で可決されており当時議員であった三宮市長も賛成している。それから11年経ち議員提案により条例が制定されたが市長はこれをどう受け取め、今後どのように取り組んでいくか。

A.(市長)本市では児童館の開設、こども医療費の支給対象の拡大、他子出産祝金、乳児用品貸出事業など「めざせ日本一!子育て応援都市」宣言に基づき様々な子育て支援施策の充実に取り組んできた。子どもの権利条例は、先進事例の調査研究や国の動向にも注視していたが、その後進展がなかった。議員提案で全会一致で条例が可決されたことはありがたく思う。この条例は全国にも誇れる素晴らしい内容である。市民・市議会・行政が一体となって、全ての子どもが幸せな生活を送ることができるまちづくりに努める。

(2)学校における子どもの権利の定着に向けて

Q.児童福祉法は平成28年の改正で「児童の権利に関する条約の精神にのっとり」と明記され「子どもの最善の利益を考慮し、人権に配慮した保育を行う」ことが明記されたが、教育現場においてはその拠り所となる『学習指導要領』や『生徒指導提要』に子どもの権利が明記されていない。本市に限らず学校ではこれまで『子どもの権利条約』に基づいた指導が行われておらず、大きな転換が求められることになるが、これまでの子どもとの関わり方をどのように総括し、今後どのように取り組んでいくか。

A.(教育長)教育振興基本計画の6つの重点目標の中に「豊かな心と健やかな体の育成」を掲げ、相手を思いやる心や公共の精神を養うことを目的とした「特別の教科道徳における学習指導の工夫」や、よりよい生活づくりに向けた自主的な態度を養うことを目的とした「特別活動の充実」等に取り組んできた。具体的には、自分の思いを語り合うことを通して、自己のより良い生き方を考えて行くことを重視した「考え、議論する道徳」。課題解決に向けて、計画を立てて、役割を分担し、協力して運営することに自主的・実践的に取り組む特別活動等、子どもたちの思いや考えを重視した学習活動を取り入れ、授業改善を図ってきた。
実際の学校生活では、よりよい社会の担い手の育成を目指し、時には一定の約束やルールを設けることも必要。しかし、教職員は、子どもの権利を擁護・尊重する立場でありながら、時に行き過ぎて子どもの権利を制限してしまうおそれもあることを自覚して、子どもたちへの指導に取り組まなければならないと認識している。そのため、子どもの権利に関する正しい理解を持ち、本条例の基本理念について、研修により教職員の認識を深め、教育活動を進めることが大切。
授業では、教員が一方的に教える一斉授業ではなく、子どもたちが自分の考えを持ち、他者を含めたそれぞれの意見や考えを尊重し合い、互いに学びを深められる授業「主体的・対話的で深い学び」への転換を進める。子どもたちには、ルールや権利は大人から与えられたものとして捉えるのではなく、その必要性を自分事として考え判断することで権利は自分たちで守るべきものとして捉えることができるよう、人権意識を醸成していくことが子どもの権利の定着にもつながる。教職員が子どもの意見を受け止めることが必要。子どもにとって最も良いことは何かを共に考え、子どもたちが自分らしく、幸せな生活が送れるよう手助けできるように、学校訪問等の機会を捉えて適切に指導する。

(3)条例を施行するための体制の整備について

Q.条例の施行により子ども・子育て支援業務が増加する。子どもの権利に関する事務はどこが所管するか。また、組織体制をどのように整備するか。

A.子どもの権利に関する事務の所管課を福祉部子育て支援課とするが、子どもの権利に関する相談及び救済等に関する事業の所管課は、その独立性及び権利の侵害防止の観点から総務部人権推進課とした。条例施行等の事務の増加を勘案し、令和4年度は子育て支援課と人権推進課に各1名の職員を増員した。

(4)職員(教員を含む)に対する研修等の実施について

Q.学校の教員を含む市の職員がいち早く子どもの権利を理解し、適切に対応する必要がある。業務における子どもとの関わりの度合いに応じた計画的な研修を実施する必要があると考えるが、今後どのように研修を実施していくか。

A.既存の市職員研修、教職員研修などに子どもの権利に関する内容を追加し、計画的に研修を実施するよう努める。具体的な内容やスケジュールは今後検討するが、子どもの権利擁護委員等、見識のある方を講師に招き実施したい。

Q.市では勤務年数、役職、職種等に応じて具体的な研修計画を策定しており、その中に子どもの権利の研修を位置付けるという理解でよいか。

A.新任職員研修や中級職員研修など、新規採用後の勤務年数や役職等に応じて計画的に受講させる研修計画を策定している。どのように位置付けるかについては、今後関係部局と調整しながら検討するが、子どもの権利に関する事項を研修計画に位置付け、これから策定する行動計画でも計画に位置付けて事業を進める。

(5)普及啓発について

Q.条例自体は一般の人には理解が難しい。特別委員会が行った意見聴取でも市民に分かりやすく周知する必要があるとの意見をいただいている。子どもの権利を分かりやすく、確実に伝えるため、計画的な普及啓発が必要と考えるが、今後どのように取り組んでいくか。

A.今議会に条例の普及啓発に係る補正予算を計上している。その一つとして、子どもの権利に関する条例を解りやすく解説した小冊子を作成する計画。小学校低学年向け、小学校高学年向け、中高生向け、一般向けに分けて作成し、職員研修や教育活動など、様々な普及啓発で活用する。具体的な内容は子どもの権利擁護委員に監修をお願いする。

Q.普及啓発も計画的・戦略的に行う必要がある。個別に計画を作るか、行動計画に具体的に位置づける必要があると考えるがいかがか。

A.行動計画に位置付け、計画的に普及啓発を行うよう努める。

(6)相談窓口の設置について

Q.条例が施行される10月以降、どのような窓口を設置し、どのような方法で相談を受け付けるのか。

A.平日10:30~18:00、人権推進課に相談員を配置し、面談、電話、手紙、インターネットを利用した相談対応を予定している。面談は庁内の相談室を使用する。電話は専用回線を1回線(子ども用フリーダイヤル1回線、その他1回線)。インターネットを利用した相談は、市のホームページに相談フォームを用意する。休日・時間外は相談フォームを利用していただき、後日相談員から連絡することを考えている。先進自治体の事例を参考に、SNS等の活用を含め、子どもの権利擁護委員・相談員と議論を重ねながら、相談しやすい窓口づくりに努める。

(7)特別な配慮が必要な子どもと保護者への支援について

Q.今定例会には行動計画を策定するために標本調査を行う補正予算が提案されているが、条例第19条第2項で想定している調査は実際に特別な配慮が必要な子どもを把握するための個別具体的な調査。条例に基づく調査、訪問等と、特別な配慮が必要な子ども及びその保護者への支援をどのように行っていくか。

A.行動計画を策定するに当たり市民と子どもの現状を調査するため大人・子ども各1,500人に対して書面アンケートを実施するが、市全体の子どもがどのような課題や問題を抱えているかを把握する、全体の傾向を掴むための調査である。条例第19条第2項の調査・訪問等は、市の各部門がその目的と主旨を理解し、行政機関自らが子どもの状態を把握していく必要性を規定したものと理解している。現段階で具体的な内容はないが、各分野において電話・面談・家庭訪問等のアウトリーチ等により、特別な配慮が必要な子どもを把握し、必要な支援につなげられるよう努める。