令和5年度 北本市議会 健康福祉常任委員会 行政視察報告

2023年10月3日(火)13:30~15:30

岐阜県可児市 高齢福祉課

人口 100,297人(R5.4.1現在)
面積 87.57㎢
財政力指数 0.821

事業の概要

可児市は名古屋市のベッドタウンで、昭和40年代、50年代に丘陵地を切り拓いて大規模な住宅団地が造成された。現状の高齢化率は全国平均以下だが急速に高齢化が進んでいる。当時造成された団地の高齢化率はすでに40~50%になっている。高齢者の孤立防止が喫緊の課題となっている。

令和元年度に80歳以上の高齢者を対象に訪問事業を実施。介護認定を受けている人はケアマネ・地域包括支援センターが、認定を受けていない人は民生委員と市職員が戸別訪問を行った。令和2年度以降は、80歳の人を対象として訪問している。
 令和4年度の実績 https://www.city.kani.lg.jp/secure/23019/koritsu.pdf

孤立防止が本来の目的だが、訪問することが目的となりつつあることが課題。また、今後訪問対象者の増加が見込まれ、訪問する人材の確保も課題である。

令和5年度は対象を「80歳の高齢者」から「医療や地域とのつながりのない可能性がある健康状態不明の75歳以上の高齢者」に変更(300人程度)。10月に事前アンケートを実施、11月に市職員(52人・26組)による戸別訪問を実施し、12月には専門職による訪問を実施する。令和6年度以降は、令和5年度の実施状況を踏まえて実施内容を検討する。

75歳になると自動的に「可児あんきクラブ」に加入する。加入者には「あんきクラブ便り」を年2回に郵送(DM)している。広報やインターネットでもお知らせしているが、なかなか認知されない。特に知ってもらいたい情報を抽出して、お知らせしている。

まちかど運動教室は人気が高く、現在は37教室。年間参加者数は延べ1万人以上。座ったまま運動できる。

多治見市に近い桜が丘地区では住民主体で移動支援を実施している。車もボランティアが所有するもので、事故があった時はボランティアドライバーの自己責任。幸いこれまで事故は起こっていない。当初買い物支援のニーズが高いと想定していたが実際には通院のニーズが多い。市内は一定料金、市外は距離に応じて。

質疑応答

Q.なぜ80歳が対象なのか。
A.初年度80歳以上を対象に実施したが、件数が多く大変苦労した。現実的な件数として80歳とした。

Q.民生委員一人当たりどのくらいの高齢者を訪問しているか。
A.通常の見守りが20人~30人。80歳の訪問が5人程度。

Q.この事業が始まった経緯は。
A.市長公約。部局横断的に全庁の職員が訪問することも含め市長の強い意向がある(普段市民の声を直接聴く機会が少ない職員が訪問して直接声を聴くことに意義がある)。主査級から部長級まで、昇任や昇格があった人が訪問している。

Q.訪問に当たり研修などを行っているか。
A.説明会を実施している。福祉の経験がある人も3分の1くらいはいるので、あまり詳しくはやらない。

Q.令和5年度から民生委員が訪問をしなくなる理由は。
A.民生委員は、本事業だけでなく通常の訪問を実施している。負担が大きいことから本事業からは外した。

Q.訪問から孤立防止につなげる具体的な取組は。
A.家から出て活動してもらうことの難しさを感じている。対象者を絞り込んで、何らかのイベントや講座に脚を運んでもらうような取組を考えたいが、移動支援とセットでないと難しい。

Q.まちかど運動教室の実施会場や参加者が多いことに驚いた。しかも市が主体となって実施している。住民主体の居場所づくりや体操、ごみ出し・移動支援などの取組はあるか。
A.体操は参加希望が多いが市からの派遣は月2回を限度としている。運動指導員ではなく軽体操普及員であれば追加で派遣できるので、自治会が独自に追加で開催しているところもある。また、社会福祉協議会において約40か所のサロンを開いている(その他に市でも約40か所のサロン)。

Q.移動支援の実施状況は。移動支援の対象範囲は市内か。
A.市内4地区で実施している。原則として市内だが、隣接市の大病院に行きたいというニーズが多く、対応している。

2023年10月4日(水)13:30~15:30

岐阜県各務原市 高齢福祉課

人口 145,311人(R5.4.1現在)
面積 87.81㎢
財政力指数 0.88

事業の概要

各務原市の高齢化率は2020年時点では28.2%だが2040年には33.2%となる。健康寿命と平均寿命とは10歳程の差があることから、健康寿命を延ばすことが重要と考えている。フレイル予防を通じて「健康寿命日本一のまち」を目指している。

取組の1つ目は通いの場『ボランタリーハウス』におけるフレイルチェック。通いの場は市内に90か所ある。ここにフレイル予防チーム(市職員と地域包括支援センターの医療専門職(保健師、管理栄養士、理学療法士など)とフレイル予防サポーター(市民ボランティア))を派遣し、フレイルチェックを行う。

フレイルチェックは15項目の記述チェックと8項目のからだ測定からなる。フレイルチェックの結果を元に、懸念のある人を医療や介護につなぐ。令和3年度は32回実施し、延べ580人が参加。令和4年度は51回実施し、延べ852人が参加した。年2回の実施が望ましいが、現状では年1回の実施がほとんど。毎月実施している通いの場もある。

通いの場だけでなく、市の施設、福祉センター、総合体育館などでフレイルチェック大会を年3回開催している。参加者は各30~40人。フレイル予防サポーターにも手伝っていただいている。

参加者は女性が多く、男性の参加者を増やすことが課題。また、実施している通いの場は30~40か所程度であり、全体の半分以下。理想としては全ての通いの場で実施したい。

取組の二つ目は『フレイル予防ウォーキング』。65歳以上の方を対象に10月、11月の2か月間で設定した歩数目標を達成した人に景品を贈呈している。景品は9種から選べ、抽選ではなく達成者全員に贈呈する。歩数はスマホアプリで管理するが、歩数計でも可。

男性の参加者が半分以上を占め、目標達成率も84.8%と高い。達成者全員に景品を贈呈していることが参加者・達成者の増加につながっていると考えている。令和5年度は600人定員で募集したところ、1000人を超える申し込みがあった。

高齢者向けの事業でスマホアプリを使うことに懸念があったため、事前にスマホの使い方を学ぶ講座も実施した。講座には地元の高校生にサポーターとして来てもらい、ほぼマンツーマンの形で教えてもらった。とても評判が良かった。

質疑応答

Q.ボランタリーハウス(通いの場)の主催者、会場は。
A.色々な人が代表になって登録しており、必ずしも自治会とは連携していない。会場は、集会場、公民館、空き家の活用など。

Q.フレイルチェックは参加者自身がチェックするのではなく専門職がチェックする形式か。マンパワーが不足しないか。
A.現状では市と包括支援センターが連携して理学療法士などの専門職を派遣している。将来的には90か所のボランタリーハウス全てで年2回実施したいと考えているが、マンパワーが不足するため、フレイル予防サポーターを養成している。サポーターは3日間の研修でフレイルの理解やフレイルチェックの体験など実技を学んでもらう。毎年30~40人程度養成し、現在は141人が登録している。

Q.健康長寿化にいる専門職の人数は。
A.正職員として保健師2人、管理栄養士1人。会計年度任用職員として管理栄養士1人、理学療法士1人。さらに歯科衛生士1人を募集している。

Q.フレイル予防チェックシートの作成に当たり参考にしたものは。
A.当初は市民から千葉県柏市が実施している東大式フレイルチェックを参考にするよう意見をいただいたが、そのまま実施するには東大にデータを提供しなければならないなど課題があったので、近隣の大学と連携してオリジナルのチェックシートを作成した。

Q.フレイル予防ウォーキング事業の予算額と会計は。
A.令和5年度の予算額は約400万円。介護保険特別会計の地域支援事業(一般介護予防事業)として実施している。

Q.ウォーキング事業の景品はどのように選定しているか。また人気の景品は。
A.ふるさと納税の返礼品の中から選んでいる(市民はふるさと納税の返礼品をもらえないため、地元産品を知ってもらうために)。お米、日本酒、チョコレートが人気。

2023年10月5日(木)10:00~12:00

愛知県東海市 ひきこもり支援センターほっとプラザ

人口 113,572人(R5.4.1)
面積 43.43㎢
財政力指数 1.273

事業の概要

ひきこもり支援は15年前から社会福祉協議会の事業(市が補助)として実施してきた。令和3年度から市の委託事業とした。受託者は東海市社会福祉協議会とNPO法人オレンジの会のコンソーシアム。オレンジの会は2002年からひきこもり・不登校支援に取り組んできたNPO。ほっとプラザの職員は、社協とオレンジの会から各3人。学習・生活支援のための学生アルバイト3人。

ほっとプラザの支援メニューは、相談支援、居場所支援、家族支援。居場所支援では、フリースペース、就労準備支援、学習・生活支援などを実施。自宅以外で安心して過ごせる場所を提供。社会参加できるよう様々なプログラムを実施している。地域包括支援センター、基幹相談支援センター、自立相談支援機関、市の生活保護担当などと連携。中学3年生を対象に学校に出向いて説明したり、チラシを配布したりしている。

令和3年度の実利用者数は89人、延1,358人が来所、1日平均5.61人が利用。
令和4年度の実利用者数は88人、延2,436人が来所、1日平均10.07人が利用。
開館は火~土曜日の9:30~18:15。学習・生活支援は火・木18~20時、土10~12時。木は別会場(子ども食堂)でも実施している。

利用者の個々の状況、特徴、特性はさまざまで、長期間の支援となる。専門的な知識とスキルが求められる。ひきこもり支援は本人とつながることが一つの解決。そのままでいいという全面受容が大切。ほっとプラザとつながり、さらに本人のニーズに応じて社会と繋がっていけるようにしたい。

質疑応答

Q.利用者の年齢層は。
A.25歳以下が半分、さらにその1/2が18歳未満。特に年齢制限はなく、30歳代、40歳代の利用もある。

Q.NPOオレンジの会とはどのような団体か。
A.2002年から不登校・ひきこもり支援をしている団体。当時はまだひきこもりが社会問題化しておらず、相談窓口がなくたらい回し状態だった。精神障害小規模作業所や就労移行支援事業所、就労継続支援B型事業所などを運営している。現在のほっとプラザ・センター長はオレンジの会の代表である。

Q.家族会ではどのような支援をしているか。
A.家族同士が情報を共有したり、交流したりすることに加え、問題解決に向けた個別相談を行っている。専門家講師を招いた学習会も開催している。

Q.不登校支援との連携は。
A.直接的な連携はないが、プラザのある施設に適応指導教室「ほっと東海」があり、ほっとプラザにも脚を運びやすい環境にある。また、社会福祉課とほっとプラザで中学校を訪問し、事業の説明をしている。今年度からLINE相談を始めたので、全校生徒に連絡先を書いたカードを配布している。

Q.事業の財源は。
A.生活困窮者自立支援制度の就労準備支援補助金を使っている。子どもの学習支援は補助率1/2、ひきこもり地域支援センターも1/2、就労準備支援事業は2/3。令和5年度予算は約3,300万円で半分以上が国庫である。令和2年度までは社協への補助で全額市負担だった。事業費は2,000~2,500万円だったが、市の持ち出しは委託となった今の方が少ない。

Q.居場所支援のプログラムはどのように決めているか。
A.参加者がやりたいことをやる。たこ焼きパーティーやかき氷など。常に試行錯誤している。職員が一方的に決めることはない。

Q.ひきこもり支援は時間をかけて信頼関係を築くことが重要というが、言うは易く行うは難しい。支援の中で意識していることは。
A.施設があるから来るのではなく、職員に会いに来る。職員一人ひとりが魅力的な存在でなければならない。接遇、話し方、受け止め方などに気を配っている。令和3年度から受託事業となり支援メニューを増やした。プラザに来たら色んなことができる。学習支援・就労準備も令和3年度にスタートした。来ても雑談だけでは時間がもたない。コミュニケーションが苦手で、話さずに作業や勉強をしたい人がいるが、そのニーズを受け止め切れていなかった。受け皿を用意した上で、職員の関わり方の質を高める。プログラムでも本人の気持ちを優先し、無理強いさせることない。楽しく過ごせるように気を付けている。