なぜ県庁を辞めて、市議会議員になろうと思ったのか

なぜ、公務員という安定した仕事を投げうって、市議選に出馬するのか?多くの人から聞かれます。

様々な経験や出会いが積み重なった結果としてこの結論に至りましたので、すべてを語ることは到底できませんが、大きく3つの理由にまとめてみましたので、ご一読いただければ幸いです。

北本市にガバナンスを取り戻すため

学童保育に関する諸問題(大規模学童の分割、運営主体のNPO化、指定管理者制度の導入など)に関わり、父母会連合会の代表として市と交渉を行う中で、市が市民に真摯に向き合うつもりがないことを理解しました。約束は守らない、平気で嘘をつく、交渉の記録すら残さない。「市民が主役のまちづくり」とは名ばかりで、「市民不在のまちづくり」です。現王園市長のスローガンからも「市民が主役」は消えました。

一方の議会を見ても、しっかりと勉強をして、執行部を的確に追求できるのは76歳の工藤日出夫議員だけです。執行部も議会も、危機的な状況に見えました。大切な家族と多くの友人が暮らすこの街が、ガバナンスの欠如によってめちゃめちゃにされてゆくのを、ただ指を咥えて見ていることはできないと思いました。

安心して暮らせる社会を創るために

今の地方自治体の予算編成の方法は、まず歳入を見積もり、歳出を歳入に収めるように「削る」のが一般的です。しかし高齢化で社会保障経費が自然と膨らむ状況では、削るにも限度があり、正直行き詰まりを感じていました。

県庁で税部門に配属されて税制の勉強をしたり、仕事外の活動として生活困窮者の支援をしながら社会保障について勉強したりする中で、増税をしてでも社会保障を充足させなければ安心して暮らせる社会は創れない、という考え方に行き着きました。

国では消費税の増税により社会保障の拡充をめざしていますが、私は地方自治体が超過課税の制度を使い、自分の自治体に必要な社会保障の拡充を図るべきだと考えています。

増税ありきではなく、市と市民が熟議をして、受益(行政サービス)と負担(税金や受益者負担)の在り方を決めることが重要です。これができるようになれば、市政に対する市民の関心も高まるのではないかと思います。

公務員の仕事の在り方に対する葛藤

私は、公務員の仕事は「住民を幸せにすること」だと思っていました。役所の仕事でも経営感覚が必要なことは否定しませんが、少なくとも私が携わっていた税金の徴収業務に関しては、民間企業と同じであってはならないと思っていました。

税金を徴収することで、住民の生活が脅かされてはならない。自分にとって当たり前と思っていたことが、当たり前でなくなってきました。今はどこの自治体でも、差し押さえなどの滞納処分の迅速化が進められています。反面、滞納者の生活状況をていねいに把握することが後回しにされています。強引な差し押さえにより、滞納者を自殺に追い込んだ自治体もあります。私が考える公務員の仕事とは程遠いものです。

私は滋賀県野洲市が行っているような生活再建型の滞納整理を行うべきだと主張し、実践していましたが、組織としては納税率の向上が最優先課題でした。自分の理想と異なるだけでなく、一歩間違えば住民の生活を破綻させる、死に追いやる可能性もあるやり方を自らがやることも、部下職員に指示することもできないと思い、退職を決意しました。


以上が、私が県庁を退職し、市議会議員になろうと考えた大きな理由です。

社会保障が手薄で自己責任が原則のこの国では、3人の子どもと住宅ローンを抱えた状態で公務員を辞めることは自殺行為かもしれません。

それでも、命懸けで社会を変えようと戦っている人、精神的に追い詰められながら歯を食いしばって必死に生きている人、すべての責任を背負い込んで我が子のために働き続けている人など、ここ数年で本当にいろいろな人と出会い、自分もできることを精一杯やろうと決意しました。子どもたちが安心して暮らせる社会を遺すために。

大きな覚悟を持って臨んでいます。ご支援くださいますよう、よろしくお願いします。