鴻巣行田北本環境資源組合 視察研修報告

日 程: 令和元年8月1日(木)、2日(金)
視察先: 兵庫県 西宮市東部総合処理センター、姫路市エコパークあぼし

1.西宮市 東部総合処理センター

西宮市の人口は約49万人。市町村合併により南北に長い形。面積は約100㎢で、鴻巣・行田・北本3市合計の3分の2ほど。主に東部総合処理センターと西部総合処理センターで処理をしており、その6割を東部で処理している。着工は平成20年12月、稼働は平成24年12月。元々あった焼却処理施設を解体し、建設された。阪神タイガースの二軍本拠地である鳴尾浜という埋立地で周囲には民家がほとんどないような場所です。組合ではなく単独市として建設した施設でもあり、地元対策という点ではほとんど参考になりません。

処理能力は140トン/日×2基(日量280トン)。ストーカ方式です。DBO方式で建設・運営されており、受託者はJFEエンジニアリング。隣接する健康増進施設・リゾ鳴尾浜で余熱利用をしています。建設費は約121億円(基本設計費、解体費等を含む)。建設当時は建設費が底値に近く、日量1トン当たり4~5千万円だったとのことです(今の相場は当時の約2倍)。埋立地で地盤が緩いため、39mの杭を200本以上打ち込んである。運営に関する委託費は20年間で約115億円。物価変動等を踏まえて5年ごとに見直す特約付き。発電の3分の1を場内利用、残りは売電しているとのこと。

質疑応答

Q.我々は3市で組合を作ってやっているが、今の設計図面では管理棟がない。管理棟を別棟にしなければ補助が出ないとかそういったことがあるか。ここの地盤は砂地だと思うが私たちの計画しているところは後背湿地・軟弱地盤、支持層がどこになるかわからない。建設に苦慮すると考えるが、軟弱地盤は建設に当たってオススメできるか
A.管理棟は、焼却施設は交付金の要領では交付金の対象外。マテリアルリサイクル施設、資源化施設は管理棟も交付対象と今のところ書かれている。ここは焼却施設なので、別棟として設計した。地盤については専門家ではないが、鳴尾浜は埋立地。支持層まで杭を打って構造物を建てるのは当然のこと。支持層まで杭を打てば沈下はない。構造物は大丈夫だが周回道路などは杭がないので不同沈下する可能性もある。引き込みの水道、ガス管が沈下する恐れがあり、対策を講じておく必要がある。

Q.焼却施設まで送電線を引くに当たり、地下を通って引っ張っていると聞いたが、空中にしなかった理由は。
A.「売電」施設では引込工事費は全額市負担となる。ここは約4千万円掛かった。売電のためだけの施設は交付対象外、共通設備は交付金の対象となる。4千万円は関電から電柱まで。地中に共同溝を設け、電力、上下水を設けている。ガスは危険だから共同の埋設はだめと言われた。負担金は前払いなので後で帰ってくることがある。交付金対象だと手続きが面倒になることもある。

Q.生ごみの分別やバイオガス化について検討したことはあるか。
A.今の交付金ではバイオガスの率が良くなっているので今後建てる場合には再度検討し直すこともある。

Q.食品廃棄物の削減の取組について。
A.今までは3R優先だったが、新しい一般廃棄物処理基本計画では2Rを優先することとした。ごみ発生抑制の施策として、食品ロス削減のための取組に重点を置いている。庁内で3010運動を実施したり、常設型のフードドライブを設定したりしている。

Q.フードドライブで集めた食品はどこに?
A.フードバンク関西に提供している。

Q.解体に8億円余り掛かったとのこと。補助金は出るか。
A.跡地にごみ処理施設を建てる場合には交付金が3分の1出る。起債も可。解体から5年以内に建てる必要がある。起債は1年以内に建てることが条件。焼却施設である必要はない。リサイクル施設やストックヤードでもいいがきちんと使っていなければ会計検査で返還となる恐れもあり。

2.姫路市 エコパークあぼし

姫路市の人口は約53万人。面積は534㎢。姫路市西部の瀬戸内海に面した埋立地に建設されており、西宮市東部総合処理センターと同様に周囲は工場地帯で民家は見当たらない。旧姫路市内では焼却処理施設は2か所。着工は平成18年12月、完成は平成22年3月。134トン/日×3基=402トン/日。シャフト式ガス化溶融炉。建設費は約179億円。DBO方式で発注。受注者は新日鉄エンジニアリング。地元の要望を受け、隣接地に健康増進センター・リフレチョーサ(露天・室内風呂、サウナ、温水・歩行・ジャグジー・子どもプール、レストラン、グラウンドゴルフ場、フィットネス施設)を建設した(敷地面積は15万㎡)。

質疑応答

Q.姫路市には家島がある。家島のごみはどうしているか。
A.旧家島町が平成18年に合併。合併前は家島美化センター(小さな焼却炉)で焼却していた。現在もピットは残っている。ピットのごみをダンプに積んで船で網干港に運び、ここで処理している。

Q.2炉ではなく3炉にした理由は。
A.少し贅沢ではあるが、安定してごみ処理できるため3炉とした。2炉だと火を入れたり着けたりすることになり非効率。3炉にして通常2炉、ごみの量が増えたら3炉で処理している。売電も安定する。

Q.ごみピットを見ると指定袋が浸透しているよう。水色のごみ袋もあったが。
A.事業系廃棄物を自社で作っている会社もある。水色の袋はプラ容器の袋。容器ごみを容リ協に出すときに指定袋を入れると品質低下とされるため、それを焼却処分している。

Q.どうしてガス化溶融炉にしたのか。3炉にした場合の補助金はどうなるか。国や県からの指示はなかったか。
A.ストーカ+灰溶融かシャフト式ガス化溶融か、という選択にした。それが姫路市にはふさわしいとなった。入札の結果、新日鉄が落札してシャフトになった。かつての交付金だと細かく制限されていたが、17年に循環型社会形成交付金になった。補助率は50%から3分の1になったが、制限は緩くなり、3炉構成でも国や県から指導を受けることはなかった。ピットの容量も条件が緩くなり、広くすることができた。

Q.ストーカを選ばなかったのは最終処分場がなかったからではないか。溶融炉を選んだのはそういうことではなかったか。
A.ストーカで得た電力を灰溶融に使うので現状では非効率とされるが、建設当時は焼却灰を減らすことが最優先で、溶融しないといけない雰囲気があった。その後、多くの団体で灰溶融が止まっていることを会計検査院が指摘して消極的になっていった。

Q.運転初めて10年、大きな故障、修繕はなかったか。
A.設計、施工、運営を一括で入札している。当然多少の故障はあるが、その範囲内で請け負った会社がやっているので、市が追加で負担したようなことはない。

Q.DBO方式だが、健康増進施設や、環境楽習センターも含めて一括か?
A.DBOでやっているのは焼却処理施設だけ。粗大ごみは特定目的会社にDBM(メンテナンス)。環境学習センター、健康増進センターは指定管理者。健康増進センターは条例で料金を設定、利用料金制。

Q.運営会社である(株)あぼしクリーンシステムの出資金、株主、経営状況は。
A.資本金1億円、新日鉄など6社で出資。黒字だが今後売電単価が安くなると厳しくなるかもしれない。売電収益は、本来は姫路市のものだが、議決してもらいSPCに譲渡した。譲渡した時点でSPCのものなのでいくらで売っているかは知らない。売電の割合は発電量の約半分。

Q.環境学習センターと健康増進センターの指定管理料は。
A.4千万円と5千万円くらい。海に面しており住宅もないので営業的には苦しい。