令和2年4月から住民票の写しの交付等の手数料が引き上げられるほか、駅連絡所の廃止、土曜開庁の縮小などが実施されますので、その経緯などについて説明します。
使用料・手数料の見直し
令和元年12月定例会に手数料条例等の一部改正に関する議案が市長から提案され、賛成多数により可決されました。主な内容は次のとおりです。
住民票の写し、戸籍の附表の写し、納税証明書、印鑑登録証明などの交付手数料
150円 ⇒ 300円【当分の間、コンビニ交付は150円】
※戸籍謄本は変わらず
市民交流プラザ(駅西口2階)の使用料
多目的ルーム 500円 ⇒ 750円(午前・午後・夜間の各区分)
※全日使用は、1,500円 ⇒ 2,250円
これに併せて西口駅前広場の使用料も値上げされています。
今回の使用料・手数料の引上げに先立ち、令和元年10月に『北本市使用料・手数料の適正化に関する基本方針』が策定されています。これは特定の人がサービスを利用し、利益を受ける場合には、応分の対価を負担し、利益を受けていない人との負担の公平性を確保することを目的としたものです。
証明書の発行や施設の管理にはコストが掛かるわけで、そのコストを受益者に負担してもらう、受益者負担の原則を徹底しようということだと思います。
新たな料金の算定基礎は、
使用料=原価×性質別負担割合
手数料=原価
とされています。
使用料については、必需的か選択的か(使うのは全市民か一部の市民か)、公共的か民間的か(民間でも同様のサービスがあるか)という二つの指標により、分類を4つに分け、受益者に負担してもらう割合を決定しています。例えば、道路・公園・図書館などは全額公費負担、公民館・市営住宅・保育所などは半額受益者・半額公費負担、貸し会議室・駐車場などは全額受益者負担といった感じです。
今後はこの基本方針に基づいて使用料・手数料を見直していくとのこと。もちろん、条例で規定するものですから、その都度議会においても審議することとなります。
なお、総務文教常任委員会では、住民票の写しの交付等の手数料は北本市では昭和63年から改定をしてこなかったこと、上尾市やさいたま市ではすでに300円となっていることなどの説明がありました。
平成30年度の住民票の写しの交付件数は31,931件でした。そのうちコンビニ交付が1,035件でしたから、窓口交付は30,896件です。手数料が300円になると、概ね463万円の増収が見込めます。
コスト高のコンビニ交付の見直し
北本市では、住民票の写し、本人の印鑑登録証明、戸籍の証明書、戸籍の附表を全国の大手コンビニエンスストアで交付を受けられるサービスに参加しています。
このコンビニ交付サービスは全国的なシステムで、システムの運営に北本市も年間270万円の負担金を拠出しているほか、システムの保守業務委託に約360万円の経費が掛かっています。一方でコンビニ交付の件数は計2千通程度で、非常にコスト高になっています(これは令和元年9月議会の総括質疑において指摘したところです)。
とはいえ、年末年始を除き土日祝日でも交付を受けられる全国的なコンビニ交付サービスをやめることはできませんから、市としては窓口交付からコンビニ交付へのシフトを勧めたい意向です。実際、コンビニ交付の手数料は据え置かれています。
この際にネックになるのは、コンビニ交付サービスを利用するためには、住民基本台帳カードかマイナンバーカードが必要になるという点です。令和元年11月1日現在のマイナンバーカードの交付率は全国平均で14.3%、北本市は12.6%でしかなく、コンビニ交付を一般化するためには、マイナンバーカードの交付率を高める必要があります。現状ではマイナンバーカードの交付を受けるメリットが少なく、むしろ個人情報の漏えいなどのデメリットを心配する人が多いことや、交付手続きに時間を要することから、マイナンバーカードの普及が進んでいません。
今春にも予定されているマイナポイント(キャッシュレスで買い物した場合に25%のポイント還元を受けられる事業)や2021年3月からマイナンバーカードが健康保険証として順次使えるようになるなど、国策としてマイナンバーカードの普及を進めていますので、少しずつ普及していくものと思われます。
駅連絡所の廃止と土曜開庁業務の見直し
北本駅西口ビルの2階にあった市役所駅連絡所は、利用者が少ないことから、令和2年3月31日をもって廃止されることとなりました。
また、土曜開庁業務(8時30分から正午まで)は市民課と保険年金課(国民健康保険に関する業務に限る)だけとなり、次の課の土曜開庁は廃止されます。
【土曜開庁を実施しなくなる課】
税務課、納税課、障がい福祉課、こども課、健康づくり課、高齢介護課、保険年金課(後期高齢者医療担当)
駅連絡所は廃止されましたが、土曜日午前中に市役所市民課で住民票の写しの交付を受けることは引き続き可能です。
受益者負担強化と業務の効率化・適正化の流れ
今回は住民票の写し等の交付手数料や貸し会議室の使用料の値上げということで、市民生活に重大な支障が生じるほどの大きな改定ではないと考えますが、国においては医療費や介護サービスの料金など、まさに人々の命、暮らしに直結する部分で受益者負担の強化が進んでいます。受益者負担が強化されれば、経済的に困窮している人はサービスを受けられなくなります。さらに行政サービスの効率化・適正化の名のもとに、利用者が少ない行政サービスが廃止される傾向も顕著です。
特に市町村においては、ムダの削減により恒久的な財源を捻出することは困難な状況です。これからは、市民の負担を増やさずに行政サービスの量や質を下げるのか、市民の負担を増やしてでも行政サービスの水準の維持・向上を図るのか、極めてシビアな判断が求められることでしょう。市民の命と生活を守るためには、社会保障の充実が不可欠と私自身は考えています。