3月27日の令和2年第1回定例会最終日に、令和2年度一般会計予算が賛成多数で可決されました。可決された予算の中身について説明します。
一般会計当初予算の全体像
◆歳入
市税は0.7%減。景気の弱含みにより法人市民税が21.8%減となっています。地方消費税交付金は地方消費税率引上げの影響により26.8%増。地方交付税は6.7%増、寄附金はふるさと納税寄附の増加により84.6%増を見込んでいます。市債は8.5%の減で、前市長から引き続き市債の発行を抑制しています。
◆歳出
歳出について大きな増減を見ると、まず総務費が6.7%増となっています。ふるさと納税寄附の増加に伴う返礼品や積立金の増と臨時職員を会計年度任用職員としたことによる人件費の増が主な要因です。民生費は4.4%の増となっています。保育の無償化等の影響により児童施設運営費の扶助費が約2億2千万円増、また生活保護の扶助費が約1億5千万円増加していますが、前年度予算額が前々年度比で約1億8千万円の大幅減だった反動によるもので、生活保護受給者が急増しているわけではありません。消防費が大幅に減少(12.4%減)していますが、これは防災無線のデジタル化工事が完了したことによる工事費の減が主な要因です。
◆評価できる点
総額を伸ばした一方で、その財源に関しては、臨時財政対策債を除く市債の発行を前年度当初予算比で約27%抑制し、また、ふるさと納税寄附の受入れ拡大や使用料・手数料の見直しを図ることで歳入の確保に努め、財政調整基金からの繰入金を抑制しました。一方の歳出では、鴻巣行田北本環境資源組合によるごみ処理施設の整備は白紙解消となったものの、新たなごみ処理施設の整備に備え基金を1億円積み増しました。財政を悪化させないように配慮した、堅実な予算と言えるのではないかと思います。
◆懸念される点
新たなごみ処理施設の整備について、基金に約1億円を積み増しているものの、新施設の検討に係る予算は計上されませんでした。埼玉中部環境センターの老朽化も進んでおり、新施設の整備に迅速に取り組む必要があります。しっかりと調査・研究・検討をするのはもちろんのこと、市民にも情報を公開し、広く意見を聴きながら、迅速かつ丁寧に進めるよう要望しました。
久保特定土地区画整理事業について、デーノタメ遺跡と区画整理事業の共存を目指して、区画整理事業の見直しをすることとし、区画整理事業に係る予算は例年より少なくなっています。共存ではなく分離(区画整理事業からデーノタメの区域を除外)が妥当と考えますが、令和2年度中には方向性を決めたいところです。
市長が公約として掲げていた「消滅可能性都市一掃のための女性・子ども・若者1億円プロジェクト」「子どもの命・学びの権利を守る教育改革市民会議の設置」「駅東口広場の利便性向上のための歩道部分の屋根かけ」については、予算が計上されなかった一方で、お茶屋遺跡内容確認調査として新たな遺跡の調査に着手することとしています。公約よりも市長のやりたいことが優先されているように感じてしまいます。
主な新規事業
オリンピック・パラリンピック関連事業(5,663万4千円)
聖火リレーに協力するとともに、オリンピック・パラリンピック参加国の事前キャンプの受入れを実施する。アルジェリアのパラリンピック事前トレーニングキャンプの受入れについては、令和元年12月18日に協定を締結。オリンピックはエクアドルを予定していた。《オリンピックの延期により予算執行されない見通し》
学習支援室講師配置事業(238万9千円)
市内中学校2校(北本中・宮内中)に「学習支援室(ほっとルーム【仮称】)を設置し、非常勤講師を配置。不登校等により学習が遅れがちになる生徒に対して学習を保障すると同時に、学級への段階的な復帰を促す。また感情のコントロールが苦手な生徒がクールダウンする場としても活用する。
予防接種事業【拡大】(220万円)
乳幼児のインフルエンザの発症及び重症化予防を促進するため、インフルエンザの予防接種に対する補助金交付事業の対象者を、「1歳以上5歳未満」から「1歳以上7歳未満」に拡充する。
基幹相談支援センター運営委託事業(653万円)
地域における障害のある方への相談支援体制を強化するため、基幹相談支援センターを鴻巣市と共同で2つの法人に委託して設置する。基幹相談支援センターでは、地域における相談支援の中核として関係機関と連携し、三障害に対応した総合的な相談業務や成年後見制度の利用支援等を行う。併せて、身近に支援してもらえる人がいない障害者に対し、365日24時間体制で緊急時の対応を行う(事前登録制)。
シティプロモーション推進事業【継続】(1,196万3千円)
本市の対外的な認知度の向上及び市民のシビックプライドの醸成を図るため、シティプロモーション推進方針に基づき、プロモーションサイト・動画の作成、関係人口増加イベント等の事業を実施する。11月には総合公園で大規模なマルシェ(縁側日和)を実施する予定。
お茶屋遺跡内容確認調査事業(181万4千円)
石戸宿6丁目地内(子供公園の北西)のお茶屋遺跡について、遺跡の性格及び遺存状態を確認するため、学術的な調査を行う。また、周辺地域のお茶屋に関する資料の収集、分析を行う。
特別会計予算
後期高齢者の増加に伴い、後期高齢者医療特別会計の予算額が前年度から4.2%増加しています。また、久保特定土地区画整理事業特別会計は、デーノタメ遺跡と土地区画整理事業の共存に向けた検討を行っているため、その結果が出るまでは事業に着手できる範囲が限定されることから、予算額も前年度から37.5%の大幅減になっています。
新型コロナウイルスによる予算への影響について
新型コロナウイルスによる予算への影響について、討論において次のとおり要望しました。
日本国内における新型コロナウイルスの感染者は、爆発的な拡大には至っていないものの、令和2年3月26日現在の感染者数は1,292人、埼玉県内でも50人を超え、都市部を中心に依然として増加傾向にあります。感染はいまや全世界に拡大し、世界的に株価が暴落するなど、景気への悪影響も鮮明になっています。
本市の令和2年度当初予算には、これらの影響が十分に織り込まれておらず、令和2年度の歳入は法人市民税などの市税や株式等譲渡所得割交付金等の交付金が当初予算額を下回ることが懸念されるところです。
一方、歳出については、当初予算における財政調整基金からの繰入額は例年と比較して抑制的であるものの、今後、新型コロナウイルス対策のために緊急的な財政出動が必要となる場合も想定され、十分な余力があるとは言えない状況です。
そこで、令和2年度の予算執行に当たりましては、
- 新型コロナウイルスが市財政に及ぼす影響を注視し、影響の度合いが明らかになるまでは不要不急の事業の実施を先送りするなど、執行の抑制を図ること。
- 新型コロナウイルスから市民の生活及び事業者の事業活動を守るためには、躊躇なく補正予算の編成や予備費を活用するなど、万全の対策を講じること。
以上二点について適切に対応されることを要望して、賛成の討論といたします。