議案第2号 令和3年度北本市一般会計予算 修正案に賛成の討論
※この文章は正式な議事録ではありません(読み原稿に使った文章で、実際は語尾を変えている部分があります)。
私は、総括質疑の冒頭で「政治・行政の役目は、まず何よりも、人々の命と生活を守ることである。令和3年度当初予算は、これまで北本市が抱えてきた課題の解決だけではなく、この一年で明らかになった課題にどう対応するかが問われる非常に重要な予算であり、そのような予算案となっているか確認したい」と申し上げ、議案質疑や委員会で慎重に審査を行ってまいりました。その結果、大変残念ながら、修正案が提出されることとなりました。
(上尾道路周辺調査事業について)
まず、上尾道路周辺調査事業について、申し上げます。総合振興計画前期計画の政策4-2において、上尾道路沿道等へのサービス施設の誘導を進めるとしています。上尾道路周辺調査事業は、コンサルタントに調査を委託し、まちづくりの提案をしていただくとのことですが、この調査は、沿道サービス施設の誘導のための調査ではありません。
昨年度策定した南部地域周辺まちづくり基本構想では、企業誘致可能エリアの検討と選定や北里大学メディカルセンター等の施設のまとまった立地を生かしたまちづくりの構想について提案をいただいたものの、まったく活用されていません。令和3年度当初予算には、基本構想を踏まえた、沿道サービス施設の誘導に関する予算は計上されず、代わりに提案されたのがこの調査です。
上尾道路周辺調査は、上尾道路周辺の自然環境など地域資源を活用したまちづくりに関する調査とのことです。市内の自然環境に関しては市長をはじめとする職員が一番よく知っており、すでに積極的な発信をしています。なぜ、改めて調査を行う必要があるのでしょうか。財政状況が厳しい中において、必要不可欠な調査とは言えません。
(文化財保存活用地域計画策定事業について)
次に、文化財保存活用地域計画策定事業について、申し上げます。文化財を地域の実情に合わせて総合的、一体的に保存・活用を図り地域の特色や魅力をまちづくりに活かす、とのことですが最重要遺跡であるデーノタメ遺跡を国史跡化するかどうかの方針決定は
令和3年度中に定める「総合振興計画の後期計画」に明記する予定で、市民や議会への説明と理解を得ることが必要です。デーノタメ遺跡の方向性が定まる前の地域計画策定着手は時期尚早と言えます。
(実は上尾道路の「より慎重な整備(=バックギア)」が狙い)
また、本市において特に文化財が集中しているのは上尾道路周辺です。令和3年度当初予算案では、自然環境については、上尾道路周辺調査事業で、文化財については、本事業で、これらの地域資源を活用したまちづくりの方策を検討するとのことですが、これらは本来、一体の地域資源として、活用方策を検討するべきものです。つまり、手順としては、まずはデーノタメ遺跡について、保存・活用の方向性が市民や議会の理解を得て、意思決定されたならば、次に国庫補助を活用して「文化財保存活用地域計画」を策定し、その計画を元に市の単独事業として上尾道路周辺調査を実施すべきです。
なぜこのような手順を踏まず、慌てて2本立てで調査を行うこととしているのでしょうか。総括質疑において、この2つの事業の実施については国が上尾道路の整備を進めていることも理由としています。都市計画マスタープランの内容や、昨年5月の大宮国道事務所への働きかけの内容などから勘案して上尾道路の整備が進む前に、自然環境や文化財の重要性を確認し、貴重な地域資源の保存・活用を決定することで、国に対し、上尾道路のより一層の慎重な整備を求めようとする意図は明らかです。
自然環境や文化財を中心に据えたまちづくりは、総合振興計画には位置付けられておりません。さらに言えば、本市の魅力の発信は、シティプロジェクトとして、市民と若手職員が中心になって行っています。市民が自ら、市内の魅力を探し、発信することに、大きな意義があります。他の計画との整合性や一貫性という観点からも、この2事業は削除が妥当です。
(久保・デーノタメ共存調整等事業について)
次に、久保・デーノタメ共存調整等事業について、申し上げます。デーノタメ遺跡の保存に伴う久保特定土地区画整理事業の見直し、課題の整理については平成28年度に896万4千円をかけて業務委託を実施しています。さらに、見直し検討業務として、
令和元年度には462万円をかけて課題を整理し、令和2年度にも935万円をかけて、対処方策の整理を行いました。方針決定までに、一体どれだけの貴重な税金使うつもりなのでしょうか。あまりにも無計画ではないでしょうか。
庁内調整の支援のためにも本事業が必要との説明を受けましたが、庁内調整はまさに市長・副市長が行うべきことです。庁内調整を外部委託するなど、前代未聞です。
私の総括質疑の際には、「課題の解決に向けた調整や調査を実施する」として「遺跡保存に向けた都市計画道路や区画整理事業等の
都市計画事業の見直し事例の調査」を事例に挙げておきながら、委員会では「新たな調査を行うものではない」と説明を変えたことも、不信感を増幅するものでした。
また、遺跡保存に向けた都市計画道路や区画整理事業等の都市計画事業の見直し事例の調査を行うという説明もありました。仮換地率100%、事業費進捗率が40%を超える状況で区画整理地内で国史跡化に相当する遺跡が発見され、区画整理を見直した事例などそうそうあるとは思えません。仮にあったとして、その特殊事例がどこまで参考になるのでしょうか。もしそれが、今後の方針決定や事業見直しに重要なことだとしたら、これまでなぜ調査をして来なかったのでしょうか。理解に苦しみます。
一方で、市民や議会への説明に当たって不可欠な遺跡を保存・活用した場合と、記録保存とした場合の、事業費の比較は、本事業には含まれておらず、この事業の実効性にも疑いがあります。削除が妥当です。
(新型コロナ対策は皆無で子ども子育て支援は後退)
最後に申し上げます。黒澤議員は、新年度予算に新型コロナウイルス対策予算が計上されていないことを指摘しましたが、問題はそれだけではありません。
本市の定住促進サイトには、市費採用教員配置事業、いわゆる少人数学級が掲載されていますが実際には、予算化されていません。
今後の教育の在り方を大きく変える可能性のあるGIGAスクール構想を推進するための新規予算は、ICT支援員を1人雇用するための予算、わずか176万6千円です。県内初となるこども商品券を交付する「子育て応援事業」の裏で、0歳児おむつ無料化事業は廃止されます。事実上の縮小、組み替えです。学童保育事業においては、市自らが定めた設備・運営基準の条例を守れていない状態が、長年放置されたままです。
こうした、子ども・子育て支援を軽視するかのような市の姿勢を見て「他市に家を建てることにしました」という声も届いています。大変、危機感を抱いています。まさに、チャンスがピンチになっています。
文化財や里山も重要ですが、北本市として何よりも重視しなければならないのは、市民の生活と命を守ることです。子ども・子育て支援や教育にも、力を入れています。こうしたメッセージを正しく市民に伝えるためにも、予算案の修正が不可欠であることを申し上げて、賛成の討論といたします。