北本市 令和3年度当初予算の解説

令和3年第1回定例会に令和3年度当初予算が提出されました。慎重審議の結果、当初予算案は修正のうえ、可決されました。

予算の全体像、主な新規事業、修正された事業とその理由、北本市の貯蓄・借金の状況についてお知らせします。

(参考資料)令和3年度当初予算参考資料令和3年2月定例記者会見資料

予算の全体像

一般会計・歳入

市税が前年度から512,405千円(△5.9%)減少した一方で、地方交付税が152,000千円(+6.9%)、地方交付税の代替措置である臨時財政対策債が243,600千円(+26.9%)それぞれ増加し、市税の減少を約75%埋めています。また、ふるさと納税寄附の増加により寄附金が295,050千円(+93.9%)増加しています。

令和3年度の市税減収分は、地方財政制度が機能してその約75%が補てんされる見込みで、なお不足する部分をふるさと納税寄附が埋めているという構造です。ふるさと納税は安定的な財源ではありませんので、歳出の抑制に努めなければなりません。

一般会計・歳出

前年度から総額で約10億4千万円(5.1%)増加しました。その主なものは、総務費280,919千円増(+11.3%)、民生費427,881千円増(+4.7%)、教育費365,599千円増(+18.5%)です。主な増加の要因は次のとおりです。

総務費
ふるさと納税寄附の増加に伴う、返礼品や積立金の増加 295,072千円増(+95.2%)

民生費
地域密着型サービス等整備助成事業費等補助金 86,497千円(新規:介護事業所の新設に対する補助)
施設型給付費 214,286千円増(+44.3%)認定こども園・保育所等への補助
新中央保育所建設費(新規)69,303千円

教育費
西小学校給食室建設費(新規)403,612千円

特別会計

久保特定土地区画整理事業は98,400千円(23.9%)増となりましたが、例年国庫補助金の交付額が予算を下回ることから、今年度も補正予算で減額される可能性が高いです。

また、介護保険事業は介護サービス利用者の増加により139,300千円(2.7%)の増加です。今後も利用者の増加が見込まれるため、介護保険料も値上げとなります 。

主な新規事業

1.市制施行50周年記念事業  全14事業 2,074万円 ★は市民提案

(1)&green fes 500万円

市制施行50周年にあたり、北本市の持つ、暮らしの隣にある様々な「みどり」を通して自然に人が繋がるという豊かさをPR・実感してもらうために、北本総合公園をメイン会場としたフェスを実施。アコースティック音楽ライブ、市内外の魅力的な個店を集めたマーケットなど(10月)。

(2)市勢要覧発行 400万円

市制施行50周年を記念して10年ぶりに市勢要覧を発行。

(3)記念式典 295万9千円

市の振興発展に寄与し、善行が優れ、市民の模範となる行いをしていただいた方々を表彰する。オープニングアトラクション、表彰、感謝状贈呈、記念品配布など(11月)。

(4)和楽WEB連携事業 200万円

日本文化入口マガジン「和樂WEB」で歴史(特に縄文)やみどりなどの魅力を発信。

(5)記念グッズ作成 150万円

アウトドアメーカーとコラボして50周年記念グッズを作成。

(6)ロゴフラッグ掲出 101万2千円

市制施行50周年を記念したロゴを作成し、駅ロータリーにフラッグを掲出。

(7)北本カレーフェスティバル開催 100万円

北本トマトカレー誕生10周年を記念して開催。北本トマトカレーのほか、全国のご当地カレーの出店を予定(10月)。

(8)トマトの栽培検定 100万円 ★

トマトを家庭菜園で育て収穫する楽しみを味わってもらい、栽培結果を評価。トマトの魅力を広め市民に愛着を持ってもらう。

(9)埋蔵文化財パネル展示 98万8千円 ★

埋蔵文化財の成果を一堂に展示。郷土の歴史を感じてもらうとともに、50年前と現在の市の様子を対比した写真パネル展を開催

(10)地域共生社会シンポジウム 45万7千円

地域共生社会の実現に向けて、多機関が協働で支援する体制の在り方や、その担い手となる市民・団体や職員への周知・啓発のため、シンポジウムを開催【重層的支援体制整備事業】

(11)1日子ども市長 9万円

小学校児童を対象に1日子ども市長を実施。児童の市政への関心を高める。

(12)市の野草・野鳥・昆虫制定 26万9千円 ★

市の野草・野鳥・昆虫を制定、地元愛の醸成を行う。

(13)小中学校モザイクアート 36万6千円

小中学生に未来の北本市を描いてもらい、集めてモザイクアートを作り、イベントで掲出。

(14)荒川桜植栽地植替 9万9千円 ★

水辺プラザから自然観察公園までの遊歩道の管理と桜の植え替えを実施。

2.北本駅東口駅前広場屋根整備事業 500万円(建設費は含まない)

北本市東口の駅舎から、雨に濡れることなくタクシーやバスの乗降、朝夕の送迎ができる屋根の整備を目指し、利用者が安全で快適に活用できる駅前広場を第一に考え、設計委託を実施します。

3.新中央保育所整備事業 6,930万3千円(市債5,760万円、一般財源1,170万3千円)

旧栄小学校校庭に(仮称)新中央保育所を建設するため、基本設計・実施設計等を行います。令和4年度に建設工事を行い、令和5年度の開所を予定しています。

4.子育て応援事業 386万5千円(ふるさと応援基金繰入金300万円、一般財源86万5千円)

令和3年4月1日以降に出生した子の保護者に対し、①出生時、②1歳6か月健診時、③3歳児健診時の3回に分けて、各1万円分(計3万円分)の「こども商品券」を贈呈します。県内初の事業です。この事業の対象となる子から、0歳児おむつ無料化事業は廃止されます。

5.新生児聴覚検査事業 117万円

令和3年4月1日の妊娠届出から、市が契約する産科医療機関等でおおむね生後1か月以内に聴覚検査を受ける場合に、費用の一部(1500円又は3000円)を助成します(埼玉県内の全市町村が実施します)。

6.ICT支援員配置事業 176万6千円

学校における授業や校務等で、教員がICT(タブレット端末、電子黒板等)を効果的に活用できるよう支援するため、ICT支援員を配置します(1人を雇用し、各校を巡回)。

7.一般廃棄物処理施設調査委託事業 700万円(一般廃棄物処理施設整備基金から繰入れ)

新ごみ処理施設を整備するに当たり、本市に適した施設や処理方法等について検討するため、様々なケースにおける財政負担、環境負荷、市民の分別負担等についての調査を行います。

予算案の修正(削除された新規事業)

※削除理由は私見です。削除に賛成した議員でも、削除を提案した理由は必ずしも一致しません。

1.久保・デーノタメ共存調整等事業 600万円

(1)事業の目的、内容

久保特定土地区画整理事業とデーノタメ遺跡の共存を前提とした調整等を実施する。市民の皆様に市としての方向性を示すため、専門的な知見をもった事業者の支援を受けながら各課題の解決に向けた調整や調査を実施する。具体的には、都市計画の専門的な観点による庁内調整の支援、市民参加の方針案の検討とコーディネート、調整会議への出席や説明資料の作成などを想定している。

(2)削除理由

デーノタメ遺跡の保存に伴う久保特定土地区画整理事業の見直し、課題の整理については平成28年度に896万4千円をかけて業務委託を実施。さらに、見直し検討業務として、令和元年度には462万円をかけて課題を整理し、令和2年度にも935万円をかけて、対処方策の整理を行っている。庁内調整の支援のためにも本事業が必要とのことだが、市長が行うべきこと。方針決定には、デーノタメ遺跡を保存・活用した場合と、記録保存(=計画どおり区画整理事業を実施)した場合との事業費の比較を市民・議会に示す必要があるが、本事業にはそのための予算計上がされておらず、実効性が認められない。

2.上尾道路周辺調査事業 400万円

(1)事業の目的、内容

上尾道路沿線及び上尾道路よりも西側の地域において、自然環境などの地域資源を活用したまちづくりについて調査を行う。

(2)削除理由

本市では、総合振興計画前期計画の政策4-2で「上尾道路沿道等へのサービス施設の誘導を進める」としているが、この調査は沿道サービス施設の誘導のための調査ではない(むしろ慎重な整備を求めることにつながるもの)。また、昨年度策定した南部地域周辺まちづくり基本構想において、企業誘致可能エリアの検討と選定や当該地区を含めたまちづくりの構想について提案を受けたもののまったく活用されていない。市内の自然環境は、市長や職員が熟知しており、改めて調査を行う必要性がない。財政状況が厳しい中、必要不可欠な調査とは言えない。

3.文化財保存活用地域計画策定事業 382万2千円

(1)事業の目的、内容

市内に所在するあらゆる種類の文化財を地域の資源としてまちづくりに活かすため、文化財保存活用地域計画を策定する。令和3年度からの3か年で、文化財の現況把握調査、市民向けワークショップの開催、アンケート調査及び分析、策定協議会の設置、文化財活用の研修会等を実施する。3か年の総額は、689万7千円。

(2)削除理由

最重要遺跡であるデーノタメ遺跡を国史跡化するかどうかの方針決定を、令和3年度中に定める「総合振興計画の後期計画」に明記する予定で、これには市民や議会への説明と理解を得ることが必要。デーノタメ遺跡の方向性が定まる前の地域計画策定着手は、時期尚早。
また、上尾道路周辺の自然環境等の地域資源を活用したまちづくりと別立てで検討するのではなく、一体として調査・計画すべきもの。
上尾道路の整備をより慎重にさせようとする意図がうかがえ、総合振興計画の方針と異なる。また、文化財を中心に据えたまちづくりは、20歳から40歳代前半をターゲットとしたシティプロジェクトの取組とも一貫性を欠き、必要性が認められない。

北本市の貯蓄と借金の残高

財政調整基金(貯蓄)

市の貯蓄に当たる財政調整基金の令和2年度末残高は、前年度から31.7%増加しました。令和3年度当初予算で7億円を取り崩すこととしていますが、前年度決算や当年度予算の執行状況により、取崩額が減少するのが通例です。

市債(借金)

市の借金に当たる市債の令和2年度末残高は、前年度から3.0%減少しました。令和3年度末は0.1%増加する見込みですが、これは地方交付税の振替措置である臨時財政対策債の借入額が増加することによるものです。臨時財政対策債の償還に当たっては地方交付税が措置されるため、市の負担はありません。臨時財政対策債以外の市債の残高は順調に減少する見込みで、市の財政状況に大きな問題はありません。

令和3年度北本市一般会計予算 各議員の採決

修正部分について修正案に反対、その他の部分にも賛成 4人
金森すみ子、日高英城、高橋伸治、大嶋達巳

修正部分について修正案に賛成、その他の部分には賛成 13人
村田裕子、今関公美、岡村有正、桜井卓、諏訪善一良、保角美代、松島修一、渡邉良太、工藤日出夫、島野和夫、岸昭二、加藤勝明、黒澤健一

全てに反対 2人
湯沢美恵、中村洋子

本会議における私の討論はこちらからご覧いただけます。
令和3年度当初予算の修正案に賛成した理由【討論】