◆一般質問 障がい福祉政策について

北本市は令和3年3月に『北本市第六期障害福祉計画・北本市第二期障害児福祉計画』を策定しましたので、令和3年6月定例会の一般質問では、その中から気になったことを取り上げました。

  1. 地域で自立した生活を送るために
  2. 就労の支援について
  3. 指定管理事業について
  4. 障がい者歯科について
  5. 普及啓発事業について

※ 北本市では「障がい」と表記することを基本としているため、ここでも基本は「障がい」と表記しますが、国や埼玉県は「障害」と表記するため、法律に基づく計画名や、県の施策名では「障害」と表記しています。ご容赦ください。

北本市議会 録画配信

北本市議会録画配信

要旨(1)地域で自立した生活をおくるために

問題意識

「障がい者がどこで暮らすか」はご本人の意向が最優先されなければなりません。高齢介護でも「住み慣れた地域・自宅での生活」が重視されていますが、障がい者も同様「施設から地域へ」の流れが基本になっています。

これには2つの側面があると考えています。一つは、本人の意向の尊重(あるべき姿)。もう一つは、コストの削減(国の思惑)です。

本人の意向が尊重され、住み慣れた自宅や地域で暮らせるようになることが理想ですが、それによりご家族の方が介護・介助に当たることになれば、家族の負担が増し、仕事を辞めなければいけないような状況も生じる可能性があります。

地域移行を進めるに当たっては、サービスの受け皿を用意することと合わせ、ケアの社会化・家族の負担軽減にも取り組まなければならないと考え、今回質問をしました。

現状確認

  • 福祉施設の入所者数 令和元年度末 52人(全員が市外の施設)
  • 地域生活移行者数の目標 令和5年度まで 4人
  • 市内のグループホーム数 1施設、定員9人

質問・答弁の概要

地域生活への移行を進める上で何が課題と認識しているか。

受け皿となるグループホームが1事業所しかないこと、その受け皿や自宅につなげるために支援を行う地域相談支援の強化が課題と考えている。

市内にグループホームが少ない理由は。

令和2年度に5件の開所の相談があったが、1件については立地条件が合わないということだった。本市が候補に挙がりながら開設に至らなかった理由は把握できておらず、具体的な分析に至っていない。

グループホーム誘致の取組は。

平成30年度に「障害者グループホーム運営費補助金交付要綱」を設け、鴻巣北本地域自立支援協議会、県内のグループホーム設置事業者、介護保険事業者へ募集要項を送付した。

要項の送付だけでは不十分。個別に働きかけるなど、具体的な支援が必要ではないか。

今後は、個別に訪問して募集要項を手渡し、開設の働きかけを行うとともに、開設に当たっての課題等の聴き取りを行い、実態把握に努める。

家族の負担を軽減するためには、訪問系・日中活動系のサービスも充実させる必要があるのでは。

ご家族の負担軽減は重要だと認識している。現状で訪問系・日中活動系サービスの不足はないと認識しているが、市内に事業所が増えることは、利用者の選択肢が増え、本人や家族が望む生活の実現に資する。サービスが過不足なく適切に提供できるよう取り組む。

要旨(2)就労の支援について

問題意識

障がい者の就労としては、働くことを前提とすれば、可能であれば一般就労、それが難しい場合は最低賃金が保証される就労継続支援A型、A型も難しい場合には就労継続支援B型、ということになるかと思います。いずれにしても、本人の意向にできるだけ沿った形の就労ができるように、サービスを提供しなければいけません。

一般就労について、北本市では平成24年に障がい者就労支援センターを設置しています。障がい者の就労支援に当たっては、障がい者が働けるように支援するだけでなく、雇用する側が安心して雇用できるように、経営者・従業員の障がい者への理解の促進と、就労後の継続的な支援(ケア付き就労)が重要だと考えます。

そこで、センターの取組・利用状況について確認しました。

また、就労継続支援事業所の利用状況や誘致について、確認しました。

現状確認

  • 障害者就労支援センター 登録者数134人、就労者数76人(令和元年度末)
  • 市内の就労継続支援B型作業所 2か所、定員35人

質問・答弁の概要

障がい者就労支援センターの取組内容は。

障がい者雇用を検討している事業者の障がい者雇用に関する悩み・疑問の相談に応じるほか、各種助成制度の情報提供、県の障害者雇用総合サポートセンターへの同行訪問など行っている。また職場定着支援として、障がい者の就職後も定期的に職場訪問し、本人・職場の方と面談を行い、課題の整理や解決策の検討について助言等を行っている。

市内で同センターを通じて障がい者を採用している事業所数は。また、障がい者を採用する事業所の開拓の取組は。

13事業者。県の障害者雇用総合サポートセンターが雇用拡大のため企業訪問などを行っていることから、同センターと連携して障がい者雇用の促進を図っていく。

就労継続支援B型事業所の利用者は(市内・市外の内訳)。

令和3年4月の利用者は67人で、うち市外の事業所の利用者が40人。

障がいの特性や職業選択の自由を踏まえれば、市内に多様な事業所があった方が良いと考えるが、いかがか。

市内の事業所、県央圏内の事業所を見ても定員不足はなく、サービスが受けられないという相談もないために、B型事業所の誘致は行っていないが、事業所等から市内での開設の相談もある。多様な事業所があることは、利用者の選択肢が広がり、意欲の向上も期待できる。開設の相談があった場合には、開設に当たっての課題を検討し、開設できるよう支援に取り組む。

要旨(3)指定管理事業について

問題意識

生活介護事業所と就労継続支援B型事業所を見ると、北本市では公設(いずれも指定管理者制度導入)の割合が多い。桶川市には公設は無し、鴻巣市には4事業所あるが、いずれも定員は少なく、民設の割合が多いのが現状です。

障がい福祉サービスの事業所は、学童保育室や保育所と異なり公設が原則ではなく、公設で行うためにはそれなりの必要性・メリットが必要です。実際に民間事業者から「不当な競争になっている」、「民間の力が育たない」という声が挙がっています。

公設の事業所の在り方について、見直しが必要と考えます。

現状確認

質問・答弁の概要

公設の事業所の必要性やメリットは

公設事業所は、民間の事業所がない時代に障がい者の保護者などが中心となって立ち上げたもの。あすなろ学園は、県社会福祉事業団が、ふれあいの家はNPO法人北本市手をつなぐ育成会が指定管理者となり運営している。設置当初は市が関与することで、市内で不足していた障がい福祉サービスの供給量を確保してきた経緯がある。民間施設において受け入れの難しい方のセーフティネットの役割を果たすとともに、専門性の高い決め細やかなサービス提供の役割を果たしてきたと認識している。

「専門性の高いきめ細やかなサービスを提供できる」というならば、客観的な評価が必要。福祉サービスの第三者評価は受けているか。

あすなろ学園では令和元年度に第三者評価を受け、高い評価をいただいている。他の施設では第三者評価を受けていない。質の向上を図るきっかけとなる有用な仕組みであり、費用面での課題はあるが、指定管理者に制度の活用を促す。

指定管理事業の在り方を見直すべきでは。

市内にも障がい福祉サービス事業所が増えつつあり、全国的にも公設の指定管理者施設が減少傾向にある。今後の障がい福祉サービスにおける指定管理者制度の在り方について、調査研究をしてまいる。

要旨(4)障がい者歯科について

問題意識

計画策定に先立つアンケートにおいて、「暴れて嫌がるので歯科に連れて行き治療をするのが大変」、「市内には発達障害に詳しい医師がほとんどいない」、「障害者の受入れ体制のある歯科があるのか分からない」という声がありました。実際、障がい者に配布されている『北本市障がい福祉のしおり』は市のホームページを見ても、市内の歯科は紹介されていません。

一方で、埼玉県には「障害者歯科相談医」の制度があり、障がい者の歯科診療や、より専門的な歯科診療所の紹介を行っています。市内にも3名の相談医がいます。また、一般社団法人日本障害者歯科学会では認定医制度を設けており、市内に1人の認定医がいます。

しおりや市のホームページで広く周知すべきと考えます。

現状確認

  • 市内の相談医 3人(前掲資料に掲載)
  • 市内の認定医 1人(相談医のうちの1人)

質問・答弁の概要

しおりや市ホームページで相談医や認定医を紹介してはどうか。

関係機関への確認等を行い、実施に向けて検討してまいります。(該当する医師に掲載の許可を得られれば、掲載します」の意)

要旨(5)普及啓発事業について

問題意識

市役所内で障がい福祉事業所が販売を行っていますが、事業者が限定されています。障がい者の事業所(団体)が公共施設やイベントへ出店・出展する意義は、普段は生活の場が分離されしまっている障がい者と地域住民が交流を深めたり、障がい者や施設への理解を深めることにあると考えます。

地域との交流機会の増加や、事業所の販路拡大などの観点からも、積極的に機会の創出を図るため、市役所以外の公共施設への出展や、市民が利用する市外の障がい福祉事業者にも門戸を広げるべきではないかと考えます。

現状確認

  • 庁内1階南側ロビーに販売スペースを設置。月~金曜日、市内4つの障がい者団体が出店
  • 毎月第3金曜日に庁舎南側広場で開催している「きたもと朝市」に1団体が出店
  • 「きたもと福祉まつり」に13程度の障がい者団体が出展
  • 障がい者就労施設等からの物品調達方針を定め、調達を推進。令和元年度は6件、73万9160円分を調達。

質問・答弁の概要

地域との交流機会の増加や、事業所の販路拡大などの観点からも、積極的に機会の創出を図るため、市役所以外の公共施設への出店や、市民が利用する市外の障がい福祉事業者にも門戸を広げるべきではないか。

販売スペースには場所や時間の制約もあり、希望するすべての事業所等の意向に沿うことは難しい。市内事業所等の機会の確保について考慮していくことも必要と考えている。イベント出展については、県が県や市町村等が開催する障がい者施設等が出展可能なイベントの情報を収集し、県ホームページで公表しており、市でもこれを契機に庁内に紹介を行い、出展可能なイベントの把握を行っている。可能な範囲で既存イベントに出展することができないか、また新たなイベント開催の際には障がい者施設等が出展できるようにできないか検討を依頼するなど、働きかけを行っていく。