令和5年6月定例会には多くの決議と意見書が提案されましたので、改めてここにまとめます。
コロナ禍が暮らしと営業の状況を深刻化させ、急激な物価高騰が家計、事業経営を圧迫し、地域経済の悪化を招いています。
こうした影響を受け、地域経済の中心を担う中・小規模事業者は存続の危機に瀕しており、物価高騰対策などの支援が求められています。10月からのインボイス制度の実施は、事務負担の増加を強いるとともに、免税業者が取引から排除される恐れがあります。インボイス導入を機に、個人事業主や農業従事者、フリーランスなどを廃業の危機に追い込み、さらなる地域経済の衰退につながりかねません。影響を受けるのは事業者だけでなく、太陽光パネルを設置して売電している家庭にもインボイス発行事業者登録に関する働きかけが行われています。
インボイス制度導入に関し、日本商工会議所、全国中小企業団体中央会、全国青年税理士連盟などの団体が、現状のまま実施に踏み切ることに懸念の声を上げています。私たちは、住民の暮らし、地域経済に深刻な打撃となるインボイス制度の延期を強く求めます。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
提出先
衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、財務大臣、経済産業大臣
賛成 青野、村田、今関、中村、湯沢、金森、工藤、毛呂
反対 永井、高橋、諏訪、岡村、現王園、小久保、桜井、斉藤、保角、島野、大嶋
インボイス制度の導入決定は平成28年度税制改正に遡ります。消費税率を10%に引き上げ、複数税率を導入するに当たり、適正な課税を確保する観点から導入されることになりました。当初は平成33年度(令和3年度)から実施される予定でしたが、新型コロナの影響などから令和5年10月からに延期されています。
インボイス制度について説明すると長くなりますので、説明は国税庁のホームページをご覧ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_about.htm
質疑で「いつまで延期すべきと考えるか」確認したところ、提出者は「インボイス実施は新型コロナの影響で一度延期されたが、引き続き新型コロナの影響を受けている中小事業者が多く、新型コロナの影響が落ち着くまで」と答弁しましたが、最初の延期時には営業自粛が求められるなど経済活動自体が停滞していた状況であり、今とは異なります。今は円安などの影響で物価高や燃料高になっていることが経営を苦しくなっている主な要因です。
またインボイスの導入に関しては、消費税制度そのものを批判し、消費税の引き上げ分を立場の強い元請けや仕入れ元、又は消費者に転嫁するのが難しい状況に配慮し、非課税事業者のままでいられるように(受け取った消費税を納税しなくてもいいように)すべきという主張も良く聞きます。
しかし、物価高・燃料高対策や商取引の問題は、それらの対策をしっかりと講じるべきです。「増税分を確実に元請けや消費者に転嫁できるような法改正ができるまでは延長を」というなら理解できますが、根本的な解決を諦める替わりに益税を認めるような「なあなあ」であっては、実質的なの負担者である消費者の理解を得られないでしょう。税制には適正さと公平さが不可欠です。
質疑や他の議員の賛成討論を聞いて納得のできるものではなかったので、本提案に対して反対しました。
改正マイナンバー法が6月2日に成立し、2024年秋には健康保険証を廃止して一本化するとしている。オンライン資格確認システム導入の義務化、現行の健康保険証の廃止は、取得が任意であるはずのマイナンバーカードを事実上義務化させることになり、選択の自由と国民皆保険制度を壊しかねない。国民皆保険制度は、「いつでも」、「どこでも」、「誰でも」、日本国内で等しく医療が受けられるものである。健康保険証を廃止し、マイナ保険証を取得しない国民は、「資格確認書」を申請しなければ、公的医療が受けられなくなる。
また、マイナンバーをめぐってはトラブルが多発し、未だに全貌が明らかになっていない。マイナンバーの活用に不安を感じている人が少なくない中で、拙速にことを運ぶのではなく、まずは立ち止まって、制度について見直すべきである。
障がいのある方、寝たきりの方や認知症の方など、いわゆる弱い立場の方々にとっては、マイナンバーカードの取得や更新手続き等が非常に困難であることから、現行の健康保険証は原則交付とし、マイナンバーカードを保険証として使うかどうかは個々の国民の任意とするべきである。
よって、国会及び政府においては、改正マイナンバー法を見直し、健康保険証を継続するよう強く求める。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
提出先
衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、内閣官房長官、総務大臣、厚生労働大臣
賛成 青野、小久保、村田、桜井、今関、湯沢、中村、金森、大嶋、工藤、毛呂
反対 永井、高橋、諏訪、岡村、現王園、斉藤、保角、島野
マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにするとともに健康保険証を2024年に廃止する方針について、情報の誤登録が相次ぐなどトラブルが発生しており、総点検が実施されることが発表されいます。このような状況下での保険証廃止はいささか乱暴だと思います。
岸田首相も、全面的な廃止について「国民の不安を払拭するための措置が完了することを大前提として取り組む」としています。強引に廃止するのではなく、国民の不安が払拭できるまでは保険証を継続して使用できるようにした方が良いと考え、本提案には賛成しました。
都市計画道路西仲通線は、上尾市、桶川市、北本市、鴻巣市のJR高崎線の西側を南北に結ぶ広域幹線道路の一部で、昭和44年に都市計画決定された幅員18メートル、延長2,520mの道路となっている。令和3年度には上尾市から桶川市までの全線の整備が完了し、北本市境まで供用が開始された。
北本市においては、久保特定土地区画整理事業地内において一部事業化がされているが、デーノタメ遺跡との共存などの課題から整備が進んでいない。
今後、道路の整備が進み、利便性が向上し、沿線の開発が進めば、人口減少の歯止めや地域経済の活性化にも寄与することとなる。また、本市の防災・減災、国土強靭化にもつながり、市民の命とくらしを守る重要な幹線道路となる。
その一方で、道路が整備されることで、大型車などの交通量が増え、周辺住民の生活環境の悪化が懸念される。また、道路が整備されるまでの間においては、引き続き、通過交通が周辺道路を通り抜けることで、交通安全上、危険な状況が続くことも懸念される。
よって、都市計画道路西仲通線の整備に関して下記の事項について対応するよう求める。
- 桶川市からの交通の円滑化を図るため、桶川市境から南大通線までの区間について早期に整備すること。
- 整備に当たっては、交通安全及び防災・減災に配慮するとともに、北本団地などの周辺住民における騒音などの生活環境にも十分配慮すること。
- 桶川市境から南大通線までの早期整備を見据え、沿道における土地の利活用について市街化区域への編入等北本市の発展に資するものとなるよう計画的なまちづくりを推進すること。
- 道路が整備されるまでの間において、周辺道路における交通安全対策を徹底すること。
以上、決議する。
久保特定土地区画整理事業の見直しとデーノタメ遺跡の国史跡化については令和3年9月に市長から見直し案が示されましたが、①遺跡周辺エリアを区画整理事業区域から除外、②デーノタメ遺跡の国指定史跡化、③都市計画道路西仲通線を遺跡エリア西へ迂回の3つの方針のうち、特に③について反対する議員がおりました(旧啓和会、公明党、諏訪善一良議員が関連予算に反対)。
その後、市が県や県警、文化庁と協議を重ね、見直し案の実現可能性が高まったこと、西仲通線を直線的に整備した場合、遺跡の国史跡指定が極めて困難となること、市長選において三宮市長が圧勝したことなどから、見直し案に反対していた議員も今定例会に提案された関連予算に賛成することになりました。
この決議と次の決議は、市長の見直し案に反対していた勢力から提案されたもので、市長の見直し案(補正予算)を認める代わりに突き付けた条件だと、私は理解しています。
決議の内容にも異論がないことから、私も本決議に賛成しました。
この度、デーノタメ遺跡の国指定史跡化に向け、京都に移転した文化庁への意見具申のための出張旅費が補正予算で計上された。最短で令和6年10月に国指定史跡決定となり、決定後にはデーノタメ遺跡保存活用計画が策定される予定である。
保存活用にあたっては、用地取得、施設整備及び維持管理に係る費用に多額の税金が投入されることから、下記の事項について対応するよう強く求める。
- 当該用地取得には市民の税金から2割、ガイダンス施設や公園整備などには5割の負担が生じることとなる。また、整備後の運営及び維持管理には全額市民の税金を投入することになることから、費用対効果を十分に勘案した上で計画策定を行うこと。
- 遺跡保存活用に係る費用負担を含め、広く市民の意見を聞く機会を設けて意見を反映するとともに、市民の気運の醸成を図るための取組を行うこと。
以上、決議する。
決議が提案された経緯は、前の決議で解説したとおりです。
私自身、市長の見直し案に基本的には賛成しているものの、遺跡の保存活用については市長の描く青写真は立派過ぎると主張しておりましたので、この決議は十分に賛同できるものでした。
遺跡の保存活用の方法については、今後の一般質問や予算審査の中で、しっかりと議論してまいります。
市内の小・中学校における学校給食費について令和5年度中の無償化が決定されたが、給食費無償化の対象には市外の小・中学校(特別支援学校等を含む。)に通う児童生徒が含まれていない。
この給食費無償化は、新型コロナウイルス感染症による影響が長期化する中、物価高騰等に直面する児童生徒の保護者の負担軽減を目的としたものであり、市外の学校に通っている子どもも無償化の対象とすべきである。よって、市外の小・中学校(特別支援学校等を含む。)に通う児童生徒に対する令和5年度分学校給食費の実質無償化を早急に実現することを求める。
以上、決議する。
令和5年3月定例会に提案された令和4年度補正予算において、令和5年度の小・中学校給食費無償化(6か月分)が決定しましたが、これは市内の小中学校の給食会計に対して給食費相当分(小学校月4,500円、中学校月5,200円)+物価高騰分(+15%)を補助するもので、市外の小学校、中学校、特別支援学校等に通う子どもが対象に含まれていませんでした。
私は議会終了後、すぐに市長に対して「市外の学校に通う子ども、特に特別支援学校に通うお子さんは、市内に通える学校がないから市外に通っているわけで、無償化の対象に含めるべきではないですか?」と確認に行きました。その際、市長も「検討する」ということだったので、6月定例会に提案されるとばかり思っていたら、今回の補正予算は市内の小・中学校に通う児童生徒の給食費の無償化を延長する内容で、市外の学校に通う子どもたちは今回も対象外であることが解りました。
市長はことあるごとに「誰も取り残さない」と言っておきながら、指摘を受け、問題があることを認識しておきながら「少数だから」と軽視しているとしか思えませんでした。市内の学校に通っていない子どもは、小学生相当で39人、中学生相当で84人です(令和5年6月1日現在)。財政的に困難なはずがありません。教育委員会では、市内の学校に在籍していない子どもたちがどこの学校に通っているのか(又は通っていないのか)わからないため、技術的には難しい作業であることは理解しますが、可能な方法はあるはずです。
他の議員に聞いても、市外の子どもが対象外になっているのはおかしいという反応だったため、最終日に決議を提出することとしました(私が決議案を作成し、動議を提出しましたが、最終的に全議員が賛成者に署名したため、慣例により副議長が提出者となりました)。
市長はこの決議に全議員が賛成したことを重く受け止め、9月定例会にも補正予算を提案していただきたいと思います。