北本市議会議会運営委員会では、令和6年10月30日と31日の2日間の日程で、行政視察を実施しましたので、その概要を報告します。
1日目 岩手県 一関市議会 政策提言の取組
取組の概要
議会基本条例において「独自の政策立案や政策提言に取り組むこと(第3条)」、「積極的に政策立案および政策提言を行うものとすること(第12条)」と規定されていることを踏まえ、『政策提言等の実施に関する指針』を策定した。手順や手法に係るガイドラインを設けることで、政策提言等の実践をさらに進展させようとする狙いがある。
政策提言は常任委員会ごとに2年間で行い、最後には決議案を本会議に上程し、決議後に市長に手交する。まず委員会で何をテーマとするかを検討する。検討に当たっては、執行部や市民、業界団体のヒアリングを行う。テーマを決めたのちに、政策提言の素案を作成する。政策提言の素案は、議員全員が参加する政策検討会議において討議する。任期最後の定例会において政策提言に関する決議を委員会として提案する。
令和5年度に始めた取組で、現在は各委員会においてテーマを決めているところ。委員会には様々な考えを持つ議員が所属していることから、テーマを一本に絞る段階で難しさを感じているとのこと。
通年議会化しているため、常に開会状態であり、閉会中の継続審査としなくても議論することができる。議事録は公開(PDF)されている。
また、政策提言とは別に、市民と議員の懇談会を実施している。広報広聴委員会で懇談対象やテーマを企画、議員全体会議で確認・決定し、実施する。日程調整や資料作成は事務局が行うが、会場設営、資料配布、当日の進行、ファシリテート、報告書の作成などは議員が行う。以前は対面方式で行っていたが、現在はワークショップ方式で開催している。懇談会で出された意見は、市政に関することは各常任委員会に、議会に関することは議会運営委員会に割振り、各委員会で検討する。市政に関することは、全体会議を経て市長に提言を行っている。
質疑応答
政策提案における議会事務局の関わり方は。どこまでを事務局が担っているのか。
個人的な感想になるが、議員には市民の代表としての役割がある。本質的なところを議員に議論していただく。事務局は、議員がストレスなく、スムーズに議論できるような支援、バックアップをやっている。事務局には7人おり、局長・次長+実働としては3人。各常任に1人ずつ書記がおり、日程調査、書類作成などを担っている。職員が夜遅くまで残っている状況にはなっていない。
委員会単位での代表質問を実施するとのこと。具体的には。
今は第1回定例会で当初予算についての会派代表質疑を実施している。常任委員会で代表質問をするとすれば第3回(9月)定例会がいいかなという話はしているが、まだ具体的には決まっていない。政策提言に関する内容で、基本的には委員長が質疑することを想定している。
2日目 岩手県 奥州市議会 議会改革の実践
議長マニフェストと行程表
現議長の菅原由和議長は、令和4年3月の議長選挙の所信表明において、市民への約束として様々な取組を実施することを表明。所信表明の時間は1人5分のみだったので、別途『議長マニフェスト』と『行程表』を提示して説明し、公表した。議長任期は4年間なので、改革を担当する委員会ごとに、各取組の4年間の行程表を示した。
- 見える化の推進
- 広報・広聴の充実・強化
- 政策サイクルの充実・強化
- 議員間討論と説明責任
- 政策サイクルの充実・強化
ICT推進方針
議会基本条例にICTの推進が明記されていたため、これを明確化するためICT推進方針を令和5年8月に策定した。2017年からタブレット導入、Facebook・Twitterによる発信、FM放送『電波に乗せて!奥州市議会』を開始。2018年には議案・全員協議会・政務活動費資料の完全公開、市議会だよりのリニューアル、Instagramの発信を開始した。その後も、コロナ禍ではGoogleフォームを活用したオンラインアンケートの実施、LINE WORKSによる連絡手段新設、『議会BCP』の策定を実施。2023年には、ライブ字幕システムの導入(ネット中継・本会議場)、Zoomでのオンライン本会議対応(一般質問等、表決を伴わない会議)、請願のオンライン受付対応、生成AIの活用などを実施している。
質疑応答
決算審査を次の予算編成に反映させるための決議について、条件付き議決に当たらないか。
決算審査において2021年までは意見を付して認定していたが、この形式では条件付き議決に当たる疑念があった。そこで、2022年からは決算の認定に関する議決を行った後に、日程を追加して、政策提言としての決議を提案し、採決することとした。
マニフェストや改革の実行力を見ると議長の技量がとても高い。どのような経歴をお持ちか。
今、議員として4期目。議員になるまでは会社員をやっており、今もその会社に籍を置いている。労働組合の活動をやっていた。
議員は多種多様。どうやって議員全体の理解を得たか。
議長になる際にマニフェストと行程表を示し、代表者会議で説明し、各常任委員会の正副委員長にも説明した。最終的には全員協議会で説明して、了承を得て、公開もした。このような流れの中で理解を得られたと思う。所信表明で言ったこと以外はマニフェストにも盛り込んでいない。選挙で選ばれたということも尊重していただいていると思う。