久保特定土地区画整理事業の厳しい現状

計画期間30年中22年が終了し、事業費ベースの進捗率はわずか 39.6%

南小学区の南部の久保地区で、北本市で現状唯一の区画整理事業が施行されています。下の画像がその概要です(出典:彩の国の区画整理)。

計画上、久保特定土地区画整理事業の施行期間は平成8年度から平成37年度(1996年度~2025年度)とされており、すでに22年が経過していますが、総事業費ベースの進捗率はわずか39.6%です。要移転戸数116戸に対し、移転済みは65戸(進捗率56%)。予定されている保留地は20,300㎡ですが、処分済はわずか962.2㎡(4.7%)です。おおよそ順調に進んでいるとは言えない状況です。

ご存知のとおり、区画整理地内にはデーノタメ遺跡があり、遺跡をどうするかも決まっていません。果たして計画どおり、2025年度までに終わるのでしょうか?2025年度までに終えるためには、毎年いくらの予算をつぎ込めば良いのでしょうか?

進まない事業、膨らむ市民負担

平成29年度の決算額を見ると、特別会計の歳出総額約3億4千万円のうち、人件費や事務所経費が約5,300万円、公債費(借金の返済)が約1億円で、事業費は約1億8千万円です。財源のうち約1億8,200万円は一般会計からの繰入金です。

平成31年度の当初予算額は6億5,820万円ですが、約2億5千万円を一般会計から繰り入れることになっています。

区画整理事業の性格上、進捗するに連れて保留地を売却できるようになり、保留地処分金が増えてくるはずですが、平成31年度当初予算案を見ても、歳入の保留地売渡代金(財産収入)は100万円しか計上されていません。事業が進まず、売却すべき保留地を生み出せていないのが現状のようです。

平成30年度当初予算では事業費が約2億4,500万円計上されていましたが、減額補正により最終予算額は約1億5,500万円まで減ってしまいました。人件費と事務費を5千万円掛けて、借金を1億円返済し、肝心の事業は1億5千万円分しか進められない。なんとも効率の悪い事業です。

保留地処分金の現実

事業が進めば保留地処分金が入ってくるという話をしましたが、実は保留地処分金も計画どおり入ってくることはなさそうです。

総事業費約110億円のうち、保留地処分金が21億7,200万円計上されています。保留地の総面積は20,300㎡ですから、㎡単価は約10万7千円です。では、今後、久保区画整理地内の保留地をこの単価で売却することは可能でしょうか?

土地の取引価格は、国土交通省の土地総合情報システムで確認することができます。北本市内の取引実績を見てみると、㎡当たり10万円を超えているのは中央や西高尾といった駅近の地域です。国税庁の路線価では、中央が9万円台後半、西高尾が8万円前後なのに対し、久保地区の近隣は6万円台です。これらの比較から、久保特定土地区画整理地内では㎡当たり8万円が妥当ではないかと思います。

資金計画上、㎡単価を10万7千円で計上しているところで、実際には8万円でしか売れなければ、保留地処分金の総額は16億2,400万円となり、約5億5千万円の不足が生じます。

例えば、桶川市の上日出谷南特定土地区画整理事業は市施行ではなく組合施行で実施されましたが、約157億円の総事業費に対し、約10億円の賦課金が発生しています。組合施行であるため、事業費の不足分約10億円を地権者が負担しなければならないのです。

一方、久保特定土地区画整理事業は市施行ですから、不足が生じれば税金から支払われることになります。つまり地権者だけでなく、市民全体で負担することになります。

減っていく交付税措置がジワジワと財政を苦しめる

もう一つ、マニアックな視点から。平成29年度の行政報告書(決算資料)を見ると、久保特定土地区画整理事業特別会計の市債残高は約12億4,700万円です。一番古いものは平成11年度に借り入れたもので、償還期限は平成31年度となっています。この借入金については、償還(返済)する際に一部が地方交付税として措置されます。交付税算入率と書いてあるのがその割合です。

この借入金の一覧を見ると、新しい借入れになるにつれ、交付税算入率の欄が「-」つまり交付税措置がないものが増えていることが分かります。つまり借金の返済に当たり、交付税で措置される分が減っていくということです。予算上現れないので一般の市民には全く分かりませんが、毎年数千万円の影響があるのではないかと思います。

市の財政が破綻する前に見直しを

以上見てきたとおり、久保特定土地区画整理事業は、北本市の財政にとって、今後さらに大きな負担となることは明らかです。

計画どおりやるのか、やらないのか。やるとしたら一体総額でいくら掛かり、市民の負担はいくらになるのか。その負担に市の財政は、市民は耐えうるのか。デーノタメ遺跡と合わせ、一刻も早く方向性を定め、正直ベースの資金計画を明らかにし、市民に提示する必要があると思います。

地権者にとっても、いつ終わるか分からない事業を待ち続けるのは大変なことではないかと思います。

市にとっても辛く、苦しい作業になると思いますが、現実から目を逸らさず、問題に真摯に向き合わなければ、待っているのは市の財政の破綻です。