ふるさと納税は誰トクか? その3

8月2日に総務省が発表したふるさと納税現況調査結果によれば、ふるさと納税の募集に要した経費の総額は約2,820億円。ふるさと納税総額の約55%に上ります。その内訳は次のとおりです。

ふるさと納税に関する現況調査結果(令和元年度実施)総務省

返礼品の調達に要した費用は、ふるさと納税を受ける自治体が地元の業者などから返礼品として寄附者に送付する特産品などを買い上げるために要した費用です。平成30年度中、泉佐野市などはAmazonギフト券などを返礼品として提供しており、相当な額が地元業者以外へも流れていると考えられます。

Amazonはともかく、特産品に選ばれたことで急速に売り上げを伸ばした業者も少なくないはずです。まさに特需と言える状況にあると思います。一定の産業振興になるという意見もあると思いますが、これについては木下斉さんが極めて的確な指摘をしていますので、是非とも読んでみてください。

地方をダメにするふるさと納税の不都合な真実
チキンレースと化す自治体間の高額返礼品競争
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6386

特産品を買い上げてもらっている業者以上に特需が訪れているのが【ふるさと納税ポータルサイト】を運営する企業ではないかと思います。ふるさと納税の募集に当たり、地方自治体が個別に広報をしても簡単には注目してもらえません。どこにふるさと納税しようか?と考えている人が最初に訪れるのは、「ふるさとチョイス」や「さとふる」といったふるさと納税のポータルサイトですから、多くの自治体がポータルサイトに登録しています。

もちろん、こうしたポータルサイトを利用するには費用が掛かります。一般的には、ふるさと納税された額の一定割合を支払う契約になっているので、自治体としても利用しやすいのです。

総務省の現況調査では、各自治体にふるさと納税の募集に要した経費について回答させています。ポータルサイトの利用料(手数料・委託料など呼び方はさまざま)がどこに計上されているかは不明ですが、いくつかの自治体ではその他欄に計上しています。

(例)
福岡県上毛町 約4億5,672万円(ふるさと納税寄附受入額の12%)
長野県小谷村 約1億5,284万円(ふるさと納税寄附受入額の5%)

ポータルサイトを運営する企業は、ふるさと納税額の増加に伴って売り上げを伸ばしてきたことと思いますが(決算が公表されておらず詳細はわかりません)、市場の拡大とともにポータルサイトも乱立傾向にあります。ふるさと納税制度の見直しにより、今後はふるさと納税市場が伸び悩む可能性も高く、ポータルサイト同士の顧客の奪い合いが予想されます。こちらの特需は、おそらくそう長くは続かないでしょう。