総務文教委員会視察報告① 射水市子どもの権利支援センター「ほっとスマイル」

令和元年10月7日(月)から9日(水)の日程で、総務文教常任委員会の行政視察を実施しました。今回の視察先は、富山県射水(いみず)市、石川県加賀市、石川県白山市です。今回の行政視察の内容を3回に分けて報告します。

1日目 子どもの権利支援センター「ほっとスマイル」(富山県射水市)

1日目に訪問したのは、富山県射水市にある射水市子ども権利支援センターです。射水市は平成17年に新湊市など5市町村が合併してできました。人口はおよそ4万8千人と北本市より少ないですが、一般会計の予算規模は約431億円で北本市の倍以上です。子どもの権利支援センターは旧小杉町の中心部、小杉駅から徒歩2分のところにあります。

ほっとスマイルの事業説明をする明橋理事長(左)

旧小杉町では、2003年に子どもの権利に関する条約を制定するなど、子どもの権利を大事にしてきた町です。この条約の精神を地域で具現する拠点として2003年8月に子どもの権利支援センターが開設されました。運営者は「NPO法人子どもの権利支援センターぱれっと」です。合併後の射水市にも引き継がれ、行政とNPOが協力して運営しています。

ほっとスマイルは、月・水~土曜の9時から17時まで開所。対象は18歳以下の全ての子どもですが、平日に来るのは不登校の子どもになります。10時~15時は不登校児童などの居場所(利用料100円)となっています。1日の利用者は3~10名。また、水曜は専門家による子ども相談(相談者は大人でも子どもでも可)を、毎月第2土曜には親の会を開催しています。

現在の施設は、小杉駅から徒歩2分。子どもが電車を使って1人でも来られるようにアクセスしやすい場所にしています。元々は魚屋さんだったお店をリフォームして借用。施設は射水市が管理し、事業をNPOに委託する公設民営方式です。職員は、常勤スタッフ1名と非常勤スタッフ1,2人(5,6人の登録メンバーが交替で勤務)。事業費は、市が負担する家賃等約200万円を含め、総額約600万円。市が単独事業として負担する額としては、けして小さくありません。射水市として子どもを大切にするというメッセージが伝わってきます。

今回の視察で説明をしてくれたのは理事長・明橋大二さんは富山病院の心療内科部長です。1989年に国連で採択された「子どもの権利条約」に基づく支援、子どもの自由や主体性を重視しており、今回も説明の冒頭に時間を割いて丁寧に説明してくれました。日本の子どもたちは、家庭や学校で親や教師に従うことを強要され、自由や主体性が失われがちです。厳しい指導により自己肯定感を失い、それが不登校、引きこもり、最悪の場合には自殺につながる恐れもあります。自由に生きることを否定されない場所がほっとスマイルです。しかも、教育委員会にも認められ、ほっとスマイルに来所することで、学校の出席日数にも算入されるとのことです。主管課は福祉保健部子育て支援課ですが、教育委員会の理解と協力も得られているおり、非常に優れた事例だと思います。

北本市では、今年9月にいじめ防止対策推進条例が策定されましたが、明橋理事長がおっしゃっていたとおり、子どもに関する施策は全て子どもの権利条約に基づいていることが前提です。学校では一人ひとりの人権を尊重する雰囲気を醸成しなければいけないのに、教員による高圧的な指導や人権侵害があれば、いじめが発生しやすい環境が作られてしまいます。親や教師も子どもの主体性を尊重する環境ができれば、いじめの予防にもつながります。北本市でも子どもの権利条約を制定する必要があると感じました。

総務常任委員会委員(左から大嶋、岡村、今関、中村、保角、黒澤、桜井)