令和元年第4回定例会における一般質問 12月6日(金)
件名2 デーノタメ遺跡について
要旨1 国史跡化の進め方について
要旨2 国史跡化で見込める効果について
要旨3 久保特定土地区画整理事業、西仲通線への影響について
要旨1 国史跡化の進め方について
質問
市長は4月の市長選挙に当たり、選挙広報などに「すぐに取り組みます、10のお約束」を掲げ、その10番目として「北本の暮らしの原点、デーノタメ遺跡の国史跡化」を挙げた。
デーノタメ遺跡については、9月末に総括報告書が刊行され、国史跡化に向けて一歩前進した。まさに三宮市長の悲願だと思うが、一方で市としてはデーノタメ遺跡をどうするのかについて、明確な意思決定が済んでいない。
第5次北本市総合振興計画には、5の2、文化財の活用、保護として、文化財の調査、研究、保存をすることが明記されているが、重要遺跡の保存とあるだけで、デーノタメ遺跡という明文化はされていない。デーノタメ遺跡の国史跡化を進めるための市としての意思決定について伺う。
意思決定にはいくつかの方法がある。国史跡化を進めるための計画や保存・活用までを含めた計画を策定して、市民や議会の意見を聞き、計画に反映させるというのも一つの方法。また、国史跡化を進めるためには何らかの歳出予算が必要となるので、市議会における予算審査を通じて議会の承認を受けるという考え方もある。
いろいろな方法があるが、現時点でどのように意思決定を行おうとしているのかについて、見解を伺う。
答弁(市長)
デーノタメ遺跡の国の史跡化については、私の選挙時の公約に明記しており、その方向性に間違いありません。遺跡を国指定にするための一般的な手続の流れとしては、市の教育委員会から文部科学大臣に意見具申書を提出し、同大臣から国文化審議会へ諮問、答申を経た後、指定の告示によって正式に国史跡として認められるものです。
この意見具申書を提出するに当たっては、①総括報告書が刊行されていること、②史跡の指定面積の7割以上の地権者の同意が必要であると伺っています。
現在では、既に遺跡の総括報告書は刊行されておりますので、地権者の同意が得られれば、文部科学大臣に意見具申ができることになります。
第5次北本市総合振興計画では「5-2 文化財の活用、保護」において、重要遺跡の活用が明記され、基本構想の4、土地利用構想ではデーノタメ遺跡のエリアが環境保全交流ゾーンとしてゾーニングされていますので、市としての一定の意思決定は示しているものと考えております。
しかしながら、国指定史跡とするためには久保特定土地区画整理事業と都市計画道路との整合は避けられない問題でありますので、遺跡と区画整理事業が共存していくための方策について慎重、かつ迅速に検討し、地権者を初めとする市民、議会に御理解いただける提案ができるよう努めてまいります。
再質問
Q.意見具申書の提出要件が2点あって、そのうちの総括報告書は刊行され、あとは史跡の指定面積の7割以上の地権者の同意が必要ということだが、具体的にこの範囲にどの程度の地権者の方がいて、7割以上とは何人ぐらいの同意が必要なのか。
A.今から約3年前の平成28年10月、デーノタメ遺跡を文化庁の調査官が2回目の視察をされた際、国指定史跡の予定エリアとして約5.5ヘクタールの範囲を線引きしています。この線引きされた範囲の地権者の数は、区画整理の仮換地前の従前地では地権者が12人、民間会社が1社でした。その後、仮換地が終了した後では地権者は11人、北本市及び民間会社が1社と認識しています。
したがって、このうち7割の面積を保有される地権者の同意となりますと、組み合わせにより若干異なりますが、従前地では地権者は約5人、仮換地後では北本市と地権者の2人が必要であると認識しています。
Q.市としての意思決定について、先ほど市長からは市として一定の意思決定はできているというお話だったが、具体的にデーノタメ遺跡をどうするという明確な意思決定を改めてするべきではないかと思うのが、いかがか。
A.(市長)国指定史跡は、文化財保護法の規定に基づき、国民共有の財産として将来に語り伝えていく国の宝です。一般的に遺跡を国指定史跡としていく場合、文化庁の指導をいただきながら学術調査等を行い、遺跡の評価を明確にすることが必要となります。いくら国指定史跡を目指しても、遺跡の価値が高く評価されなければ、国指定は叶いません。遺跡の重要性が認識された場合には、文化財保護法に基づいて国指定史跡として保存措置がなされることになるわけです。仮にデーノタメ遺跡を国の指定史跡とする場合は、このたびの総括報告書の刊行により、その価値が国指定史跡にふさわしい内容であることを公式に表明し、その価値を証明できたものと考えています。第5次北本市総合振興計画においては、既にデーノタメ遺跡を想定して重要遺跡の活用と史跡のエリアを環境保全交流ゾーンとして位置づけており、市としての一定の意思決定を示しておりますが、今後策定が予定されている総合振興計画の後期基本計画において、デーノタメ遺跡の史跡化を目指すことについて明記し、市民や議会に諮り、丁寧に説明したいと考えています。
要旨2 国史跡化で見込める効果について
質問
県内には20か所の国史跡があったが、さきたま古墳群は特別史跡となることが決まったので19か所となった。吉見百穴や比企城館跡群など北本市民にも比較的なじみの深い遺跡が多いのではないか。
一方、青森県の三内丸山遺跡や佐賀県の吉野ヶ里遺跡といった全国的にも名の知れている遺跡は、特別史跡に指定されている。果たしてデーノタメ遺跡の価値は、どれほどのものなのか。国史跡化の可能性と、国史跡となった場合にどのような効果が見込めるかについて伺う。
答弁(市長)
デーノタメ遺跡は平成20年度の第4期調査において、水場遺跡から多量の漆塗土器と植物遺体の出土により、全国的に注目を集めた遺跡です。また、その後の調査で縄文時代の中期から後期の1,200年続いた集落の保存状態がよく、特に中期集落が関東地方最大級の規模を誇っており、大規模集落と低地遺跡がセットで残された稀有な遺跡として、文化庁、県を初め、大学等の研究者からも高く評価されています。
以前、文化庁の調査官が「年間で全国で約8,000件の発掘調査が行われる中、デーノタメ遺跡の第4次から10年が経過した。そう考えるとその間に全国で約8万件の発掘されていることになるが、いまだ同様の遺跡は発掘されていない。だから、もうデーノタメ遺跡のような遺跡は残っていないのだ。」とコメントされていましたが、本遺跡の価値の高さを物語るエピソードと考えています。
今後、デーノタメ遺跡が国史跡指定史跡となった場合、地域の教育や観光はもとより工夫次第では産業や福祉に寄与できるような事業も展開できるものと考えています。市の知名度やイメージアップにもつながり、本市のまちづくりに貢献していくことが期待されます。
三内丸山遺跡や吉野ヶ里遺跡では、史跡を整備、活用することで、大きな経済的な効果を生み出したといわれています。デーノタメ遺跡の経済効果については簡単に試算できるものではありませんが、一定の経済効果を生む可能性があると考えています。日本の縄文中期の遺跡、あるいは後期の遺跡の中で日本で最も人口密度が高かった時期があるのではないかという仮説のもとに、今調査を進めています。
再質問
Q.国史跡化をすることとした場合に、どのような経費に国庫補助を活用することができるか。国庫補助の用途や補助率について教えてください。
A.国指定史跡にかかわるさまざまな事業に対して、文化財保存事業費関係補助金という国庫補助の制度を活用することができます。この補助制度のうち、対象となる事業としては、まずは公有地化のための用地の買収費、公有地化した史跡について保存整備活用を図るための保存活用計画の策定費、この計画に基づく史跡の整備事業費、さらにはガイダンス施設の建設事業費が該当します。これらの国庫補助事業の補助率は、用地の買収では8割、保存活用計画の策定には5割、史跡の整備には5割、ガイダンス施設の建設には5割の補助率となっています。
Q.1回目の答弁で、大変重要な史跡であることはよく理解ができた。しかし、歴史的に価値が高いということと、観光資源として集客力がある、経済効果につながるということは、また違った話。吉見百穴を見ても、県内外から社会科見学などで来場する人が多いのはわかるが、遺跡の周辺が観光地化をして店舗がにぎわっているという状況には見えない。デーノタメ遺跡の観光資源としての可能性について、市長はどのようにお考えか。
A.(市長)国指定史跡の活用については、これまでにも地域学習による教育的効果や観光資源としての活用が全国各地で行われてきました。特に近年では文化財保護法が改正され、文化財を観光資源として活用する方向性が強く打ち出されるようになり、史跡は学術的な研究対象であるとともに、地域にとっては重要な観光資源として期待されるようになってきました。考古学においても、観光考古学という分野が確立されてきたように、現在は史跡を保存しながら、観光資源として有効活用し、地域の活性化につなげていくことが求められる時代になっています。デーノタメ遺跡を観光資源とした場合のアドバンテージは、公共交通を利用しても自家用車を利用しても大変アクセスしやすい点が挙げられます。この点は三内丸山遺跡や吉野ヶ里遺跡にはない利点です。また、デーノタメ遺跡の調査のデータに基づき、その特徴である縄文の食や漆工芸に特化した整備や事業を展開した場合には、他の縄文史跡にはない個性豊かなものになる可能性があると考えます。県内の全ての子どもたちには、ぜひとも社会科見学などで訪れていただき、教育の場面で活用していただくほか、全国で進められている他の遺跡の活用事例についても研究を進め、デーノタメ遺跡ならではの観光的な有効活用ができるように努めてまいります。先ほど三内丸山遺跡、あるいは吉野ヶ里遺跡、時代が違うものを出しましたけれども、まさにこれに匹敵する、私の気持ちとしては特別史跡で申請したいなというぐらいに今は思っています。
意見
今後、どのような形で投資をしていくかに関しては、また計画や予算の中で議会に諮ることがあると思うので、その中で慎重に審議をさせていただく。
要旨3 久保特定土地区画整理事業、西仲通線への影響について
質問
デーノタメ遺跡は久保土地区画整理事業の区域内である上に、西仲通線が遺跡の真ん中を突っ切る計画となっている。デーノタメ遺跡をどうするかということは、久保特定土地区画整理事業や西仲通線をどうするのかということと表裏一体と思う。デーノタメ遺跡を現状保存することとした場合に、久保特定土地区画整理事業や西仲通線にどのような影響を及ぼすのか伺う。
答弁(市長)
久保特定土地区画整理事業は良好な住環境を目指し、各種公共施設の配置計画を行っており、事業地区内には都市計画道路5路線と区画街路のほか調整池、公園などの公共施設を計画しています。
デーノタメ遺跡を史跡として現状のまま保存することとした場合、その保存範囲として区画整理事業地の西側境界に接するおおむね5~6ヘクタールの範囲が想定されております。土地区画整理事業計画では、この想定される保存範囲の中に都市計画道路西仲通線、南2号線などの街路、調整池及び公園が計画されていますので、デーノタメ遺跡を現状のまま保存することとした場合は、これらの街路、調整池、公園の配置計画を見直す必要があります。
都市計画道路西仲通線は、これにつながる桶川市側の都市計画道路が本年10月に北本市境まで開通していることや、西仲通線に接続している南2号線などを考慮しながら、計画の見直しを行っていくこととなります。調整池は、区画整理事業地全体の排水計画と合わせた見直しを、公園は、保存範囲の整備方法や区画整理事業地全体で考えた配置の見直しを行っていくこととなります。
また、区画整理事業地内は、仮換地指定率が100%であり、遺跡の保存範囲の確保をするために土地区画整理事業全体で仮換地を見直しすることとなります。
デーノタメ遺跡を現状保存することとする場合には、保存範囲の中だけではなく、土地区画整理事業計画全体に影響があると考えられますが、土地区画整理事業とデーノタメ遺跡との共存を考えながら地権者の御意向を大切にし、土地区画整理事業を進めてまいります。
再質問
Q.現状の計画では、西仲通線がデーノタメ遺跡の区域を貫いているが、仮にこの西仲通線をデーノタメ遺跡の地域を迂回するような形で計画をし直す場合には、具体的にはどのような手続や調整が必要になるか。
A.迂回ルートとして西仲通線の計画を変更する場合には、他の街路、調整池、公園の配置計画も事業地全体で見直しをすることになります。仮換地についても位置、面積が変更になる箇所が出てくるものと考えられます。また、変更に当たっては交通量推計を実施し、車両の混雑度の整理、測量設計などを行い、変更案を検討していくこととなりますが、交通安全面から警察との協議が必要になります。そのほか、見直すべき理由を明らかにし、都市計画の変更手続を行う必要があります。変更案の作成後、県との事前協議と並行して桶川市、鴻巣市との協議、住民との合意形成、県知事協議、変更案の縦覧、市の都市計画審議会を経て最終的に決定告示を行うことで都市計画の変更の決定となります。
要望
久保特定土地区画整理事業は、毎年5,000万円以上の事務費を使いながら、事業費も1億数千万円しか使えない、事業がなかなか進まない状況。国庫補助がつかないこともあるが、デーノタメ遺跡をどうするかが明確ならないことには、土地区画整理事業を進めることもできない。簡単なことでないのは重々承知しているが、慎重、丁寧かつ迅速に方向性を示していただきたい。