要旨1 損失補償について
土地区画整理事業を実施する上では、様々な場面で損失補償が必要になると思うが、久保特定土地区画整理事業においては、一体何を損失補償の基準としているのか。
ア:どのような基準に基づいているのか
久保特定区画整理事業の損失補償は、事業を施行する上で支障となる建物や工作物等について、公共用地の取得に伴う損失基準等に基づき、毎年用地対策連絡協議会から配布される国土交通省関東地方整備局編・著の『損失補償算定基準書』及び埼玉県作成の『損失補償標準表』を使用し、補償額を算定している。
補償に疑義が生じた場合で、その基準の内容それ自体に疑義があった場合、基準を作っている国交省や埼玉県が責任を持ってくれるのか。『土地区画整理事業実務標準』では、損失補償の基準とは標準書を基本として、市の基準として定めると書いてある。全国標準の基準を改めて市の基準として設定し直して、公表して誰の目からも明らかにすることが必要なのではないか。
損失基準は平成10年の国の通達により、移転補償費は施行者の定める損失基準に基づいて積算すること、損失補償基準を定めるに当たっては、公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱に照らし、妥当なものとなるよう十分配慮することとされている。同要綱を基本としまして作成された用地対策連絡協議会の損失補償基準やマニュアルに掲載されている基準等によって、久保土地区画整理事業の実務を行っている。用対協の損失補償算定基準書等でイレギュラー等あるところは、県の補償標準を利用している。現在のところ市独自の損失基準を作成することは考えておりません。
(意見)あり得ない。基本的には、これは標準とするものはあるとしても、最終的に施行者が責任を持って、我々はこの基準でやるのですということを明示するのが当然だと思いますので、そこは改めて検討していただきたいと思います。
イ:例えば、立木を例えば伐採をした場合に、どのように記録をして損失補償を行うのか。
立木補償は、立木が事業を施行する上で支障となる場合、立木の調査、積算を行い、補償額を算定する。その後、立木の所有者と補償契約を締結し、立木を伐採している。立木の調査では、立木に番号をつけ、立木の位置、種類、直径、高さなどを記録する。そして、調査結果を基に損失補償算定基準書等を用い、立木の補償額を算定する。立木の伐採は、補償額に伐採除去費が含まれる場合は所有者が伐採し、含まれない場合は市の街路工事や整地工事の際に市が伐採している。
具体的な例で、地権者の方から木を伐採されたが、まだ補償されていないという声を聞いている。事実とすれば、あってはならないことだが、実際にそのようなことがあるのか。
現在そのような事例が1件あり、解決に向けて立木の所有者と鋭意協議をしている。
補償契約前に伐採すること自体があり得ない。まず契約があって、その上で切るのが当然。しっかりと早急に対応していただきたい。いつ、誰の、どのような樹木を伐採して、それをどう処分したかという記録はちゃんと残っているのか。
過去のもので多少不明瞭なところはあるが、残っているので、それらを参考に交渉をさせていただいている。
ウ:従前地も換地先も使用できない場合、例えばAさんの従前地X、こちらは別の方であるBさんの換地先になっている。このXにはBさんが既に建物を建てて使用している。一方で、Aさんの換地先である土地のYは、さらに別の方のCさんの従前地となっていて、こちらはCさんが未だに使用している。こういう場合に、Aさんとしては従前地と換地先のどちらも使用できない状態になる。こうしたことが実際に生じているが、このような場合の損失補償の基準は。
土地区画整理事業では、仮換地の指定により、従前地と仮換地の双方が一時的に使用できないことがある。具体的には、議員指摘の事例のほか、従前地を新たに仮換地指定された方が使用していて、仮換地先は道路整備が行われていないため使用できないといったケースなどが考えられる。このような場合、土地区画整理法第101条に基づき通常生ずべき損失の補償として一時土地使用補償契約を締結し、固定資産税と都市計画税相当額を補償している。
答弁の中で、従前地と仮換地の双方が一時的に利用できないことがあるということだったのですけれども、実際の事例でどの程度の期間そうした状態に置かれている事例があるのか。
様々なケースがあるので、個別によって対応させていただく形になる。御了承いただきたい。
(意見)現状では、固定資産税、都市計画税の相当額を補償しているということだが、長いケースでは何年もの間にわたってそうした状況になっている。長期にわたるのであれば、税相当だけではなくて、例えば地代として補償されるようにしないと地権者の不利益になる。地代分の補償についても、ぜひ御検討いただきたい。
要旨2 見直しによる効果について
ア:現計画をそのまま実施した場合と比較して、見直しにより事業期間が6年短縮されると説明しているが、あくまでも縮小された区画整理事業だけの部分であって、遺跡の公有地化と整備や、周辺居住エリアの整備までを含めて6年短縮ということではないと理解している。間違いないか。
令和2年度に実施した見直し検討の中で、現在の計画をそのまま継続した場合と、遺跡周辺エリアを区域除外した場合の2つについて、事業費や事業期間の比較検討を行った結果、区域除外をしたほうが経済的に優位であり、かつ事業期間も6年短縮されるとの試算結果を得た。この短縮期間は、除外部分の整備に要する期間は含まれておらず、あくまで久保特定土地区画整理事業の完了予定時期を示したものとなっている。区域除外をするエリアの整備は、土地区画整理事業の遅れを取ることのないよう、確実に進めていきたい。
イ:6年短縮の前提となっている事業費の確保の実現可能性は。
(市長)6年短縮の前提となっている事業費の年間3億円は、久保特定土地区画整理事業における近年の平均的な当初予算額から想定したもので現実的。しかし近年は、国庫補助金の要求額に対する交付額の率が減少していることや実施できる工事範囲が限られていたこともあり、決算額で毎年2億円程度の事業費で推移し、事業の進捗に遅れが生じていたことも事実だが、この度の方針決定により、これまで着手できなかった調整池や幹線道路の整備が可能となり、実施できる補助事業が増えることで、補助金の交付額が減少傾向にある昨今の状況下においても、これまでよりも事業が加速していくものと期待している。財源として、国庫補助金の確保に努めることは当然だが、地方債の活用や一般財源の配分について慎重に検討し、本事業に対しまして可能な限りの財源確保に努めてまいりたい。
区画整理事業から除外された部分は、区画整理事業と同時に進行か。それとも、区画整理の事業完了後に実施するのか。
(市長)まずデーノタメ遺跡エリアについて、国の史跡指定後、早急に土地の公有地化、史跡公園の整備に着手する。周辺居住エリアについては、久保特定土地区画整理事業の変更認可と同時期に作成する地区計画に基づき、道路などの基盤整備を進めてまいりたい。地権者との調整を図りながら地区計画を策定してまいりたい。
同時変更でやっていくとなると、今まで以上に事業費をしっかり確保しないと、6年短縮はできない。これから新ごみ処理施設の整備もある。高齢化も進んでいく中で、どうやって一般財源を確保していくのか。
(市長)なかなか難しい質問。試算よりも事業費が少なくなる可能性もあるので、財政状況を見ながら、出来る限りその期間内に整備してまいりたい
(意見)同時にやっていく意気込みはわかったが、現実は難しい。市の歳入が決まっている中でこちらに財源をシフトすれば別のところにしわ寄せがいく。それで市民の安心・安全が守れるのかを含め、検討していただきたい。
要旨3 意思決定について
ア:極めて重要な決定を一体どのような過程を経て決定されたのか伺います。
(市長)久保特定土地区画整理事業の早期完成は、本市にとって大変重要な行政課題であり、歴代の市長が取り組んできた長年の課題。オオタカの営巣の確認やデーノタメ遺跡の価値の高まり、また地価の下落や国庫補助金の減少などにより事業が長期化しており、解決のためには事業計画の見直しが必要な状況だった。
私は、地権者のために速やかに方向性を示さなければならないという危機感の下、市長就任後は期間の短縮、経費の縮減、デーノタメ遺跡の国指定史跡化の3つを実現するため、関係部署に見直しの検討を指示した。本年度に入り副市長を議長とした庁内調整会議に、令和2年度までに実施した各部署における検討結果を統合して取りまとめるよう指示をした。
その後、庁内調整会議より7月21日に報告書を受け、その内容を精査し、久保特定土地区画整理事業を取り巻く様々な要素を勘案した上で、当該区画整理事業の早期完成とデーノタメ遺跡との共存を図るための最も有効的な方策として見直しの方針を決定した。7月27日の庁議で私が見直しの方針を説明し、今後の市民や議会への説明及びその後の作業に向けて準備するよう指示した。
イ:デーノタメ遺跡の方針決定について、令和元年第4回定例会における答弁と大きく異なっているが、その理由は。
(令和元年第4回定例会での答弁)第5次北本市総合振興計画におきましては、既にデーノタメ遺跡を想定して、重要遺跡の活用と史跡のエリアを環境保全交流ゾーンとして位置づけており、市として一定の意思決定は示しているところですが、今後策定が予定されている総合振興計画の後期基本計画において、デーノタメ遺跡の史跡化を目指すことについて明記し、市民や議会にお諮りをし、丁寧に御説明したいと考えております。
(市長)後期基本計画に個別事業まで明記して位置づけるかどうかについて再検討を行い、総合振興計画では市の施策の方向性を示すものであり、個々の事業についてまで示すものではないと整理した。また、第2期北本市教育振興基本計画においても、貴重な埋蔵文化財包蔵地について積極的な内容確認調査を行い、史跡指定に向けて取り組むとしている。また、後期基本計画において、文化財の活用保護に関連する個別計画として位置づけることから、これらを踏まえ、すでに一定の位置づけはされているものと判断し、見直しの方向性を決定した。
ウ:文化財保護を所管するのは教育長だが、教育長の空白期間に、教育長が所管事務であるデーノタメ遺跡を保存し、整備し、活用するという大変重要な決定を一体どのようにして行ったのか。市長が決めるのは明らかな越権行為だと考えるが市長の見解を。
(市長)文化財保護は教育委員会の職務権限だが、教育委員会のデーノタメ遺跡の保存に関する方向性は既に明確になっていた。今回の決定は、教育委員会の目指す方向性に違えるところはない。
一定の方向性から最終的な決断をするところが非常に重要。市としての最終的な意思決定を軽視し過ぎなのではないか。市民や議会に丁寧に諮る手続が大事だが、この見直しの計画は、市民も参画はしていない、パブコメも実施はしていない、当然議会にも諮っていない。全て市長が決定した後の事後説明。市長の任期中には到底終わらない巨大なプロジェクトだからこそ、市民や議会としっかりと議論をして、合意をして進めなければならないのではないか。責任を共有するためにも、徹底的に議論をして、検証をして、賛同を得てから進めるべきだったのでないか。
(市長)物事には、様々な意思形成過程があり、決定過程がある。この事業は800人以上の地権者がいる中での様々な決め事なので、市民全部に考えを聞くとか、インターネット上で民意を取るのはなじまない。初動はこのようなやり方がベスト、ベターと考えているが、いずれ時期を見てそういう形も取るのは、段階的に考えていきたい。
(意見)もう事後説明にしかならない。この事業に限らず、意思決定は慎重に、皆さんの意見を聞いて丁寧に進める。市長一人で責任負い切れるものではない。意思決定をもう少ししっかりと考えていただきたい。