令和6年度 北本市議会 健康福祉常任委員会 行政視察報告

北本市議会健康福祉常任委員会は、令和6年10月9日(水)から11日(金)の3日間の日程で、行政視察を行いましたので報告します。行政視察先は次のとおりです。

行政視察の前に、宮城県石巻市の震災遺構門脇(かどのわき)小学校を視察しました。石巻市には2011年の東日本大震災で被災した2つの小学校を震災遺構として保存しています。大川小学校では児童74人、教職員10人が犠牲となった一方、門脇小学校では学校にいた児童・教職員らは訓練どおり学校裏の日和山へ避難し、津波から逃れることができました。

門脇小学校の1階部分は津波により浸水しましたが、残っている校舎は3階まで全てが被災しているように見えます。これは、津波により沿岸の家屋が流れ、火災が発生し、小学校へと流れつき、小学校にも引火し、火災が発生したためです。2つある小学校のうちの海側の校舎内は焼け焦げた状態で残されています。洪水時には高い建物への「垂直避難」が推奨される場合がありますが、火災の発生も想定して避難する必要があります。

当時の避難の様子は、FNNプライムオンラインで詳しく報じられています。
https://www.fnn.jp/articles/-/159911

なお、震災遺構門脇小学校の視察は、行政視察に先立ち、健康福祉常任委員会の委員が自費で視察したものです。

施設と事業の概要

初日の視察先は宮城県石巻市の子どもセンター「らいつ」さんです。石巻市は平成21年に子どもの権利条例を制定しています。

震災直後の平成23年5月から6月にかけて、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが、宮城県・岩手県の子どもたち約1万人にアンケートを実施し、90%近い子どもたちが「まちのために何かしたい」と思っていることが明らかになったことから、岩手県山田町・陸前高田市・宮城県石巻市の3つの地域で『子どもまちづくりクラブ』を発足させました。石巻市子どもまちづくりクラブは同年7月に発足、同年夏には復興に向けたまちづくりを目指し『夢のまちプラン』を作成し、市に提案。これを実現化したのが「子どもセンター」(児童館)です。地域と連携しながら子どもたちが企画・デザインを行い、2013年12月に完成。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンから石巻市に寄贈されました。

子どもセンターは0歳~18歳の子どもが主体となって利用できる施設ですが、その運営にも中心的に関わっています。事業や運営についておとなと一緒に話し合う【子どもセンター運営会議】を筆頭に、利用者を代表して話し合う【子ども会議】、やってみたいを企画として実現する【子ども企画】、様々な体験をする【子どもエンパワー事業】などを通じて、子どもが積極的に運営に参加しています。また、看護師や歯科医を招いてのMカフェ、ベビーマッサージ、パパ講座などの【子育て支援事業】も実施しています。

質疑応答

桜井
桜井

不登校の子や障害のある子、外国由来の子など支援が必要な子の利用はあるか。また、子どもや保護者からの相談は受けているか。

館長
館長

自由来館(登録不要)なので、来館の理由や由来が分からない。ただ、何度も来て話したり遊ぶ姿を見る中で、困りごとを発見することはある。ゆっくりと理解していく。ケース会議を開いたり、ある程度状況が解ってきてから保護者や学校にアプローチすることはあるが、本人の了解を得るのが難しい。

桜井
桜井

子どもの声を聴く仕組み。らいつさんのような場所があると、らいつさんに頼ってしまいがちだと思うが、市としてより多様な子どもの声を聴くためにどのような取組を行っているか。

館長
館長

子ども子育て支援を行う団体と「子どもの居場所づくり懇談会」を開催し、意見交換を行っている。また、県の子ども若者支援協議会などで事例の共有を行っている。色々な団体が繋がることで多くの情報を得られるようになっている。

子育て支援課
子育て支援課

相談については、子ども家庭センターや人権擁護委員が一応の相談窓口になっているが、子どもが相談しやすい「ハードルが低い」窓口がない。らいつがそのような場所になれたらいい。相談支援の連携体制を作っていきたい。

高齢者等緊急通報システム事業

高齢者等が家庭内で急病や事故等のため緊急に救援を必要とする場合に、ボタンひとつで市が委託する警備会社へつながる緊急通報用の機器を貸出し。対象は、65歳以上の一人暮らしの方、高齢者世帯の方、病気や障害などで安否確認が必要な方。利用料は無料。登録者数は令和5年度63人。登録時に協力員(緊急時に駆けつけてくれる人、親族や近所の人、民生委員など)3人の記入を求めているが、必須ではない。

認知症高齢者等位置探索システム機器(GPS)貸与事業

高齢者等の所在を特定するGPSを貸与することにより、不慮の事故等を未然に防止するとともに、家族等の精神的な不安を解消し、安心して介護ができるように支援する。対象は、在宅の概ね40歳以上の行方不明になる可能性のある認知症等の方。GPSは手のひらサイズ。大きすぎるという意見もあるが通話機能がある機器だと最小。緊急時はセコムが駆けつける。利用者数は令和5年度4人。利用者負担として、緊急通話1回200円、現場急行は1回1万円など。

認知症高齢者等見守りネットワーク事業

認知症の人が行方不明になったとき、ご家族からの依頼により捜索サポーターへメールを配信し、より多くの人に捜索協力していただくもの。行方不明になった場合には、ご家族の方は警察に連絡するとともに、介護事業所等を通じて市介護福祉課に連絡。介護福祉課から捜索協力者に一斉メールを配信する。メールには、行方不明者の氏名、身体的特徴、衣服、行方不明日時、行方不明時の状況などが記載されている。

三色吉シニア倶楽部の活動

岩沼市の山沿い近く、古くからの旧住民と昭和後期からの新住民が混在する約800世帯の地区。平均75歳の35人の会員が14種類の活動に自由に参加、活動している。人の役に立つだけでなく、自分のフレイル予防にも繋がる。

主な活動は、社会奉仕活動として、地域道路清掃活動(月1回)、地域花壇整備活動(月1回)、こども園幼児と凧つくり・凧あげふれあい活動(年1回)。社会奉仕活動として、こども会廃品回収(年3回)、シニアお茶会(年6回)、一人暮らしの認知症高齢者見守り訪問活動(週1回)。地域貢献活動業務として、地域神社金蛇さんにぎわい市運営(年12回)、町内会夏祭り支援【模擬店運営】(年1回)、市公園管理【草刈り】(年3回)。健康増進活動として里山遠足(年2回)、ボッチャ会(夏冬年10回)、グラウンドゴルフ会(春秋年26回)、パークゴルフ大会(年1回)。健康教養活動として熱中症予防や特殊詐欺犯罪防止等の出前講座、名取高校パソコン部によるスマホ教室などを実施している。地域貢献活動業務は、活動資金を得る目的もある。

一人暮らしの認知症高齢者見守り訪問活動は、会員が週1回、認知症の高齢者を訪問し、話し相手になったり、見守りを行ったりしている。玄関に見守り訪問ノートを置き、訪問時の様子を記している。ノートは家族や介護サービス事業者も見ることができ、日頃の様子が分かるようになっている。現在4人がサービスを利用。男性には男性の訪問員、女性には女性の訪問員がついている。この取組が高く評価され、第11回「健康寿命をのばそう!アワード」(介護予防・高齢者生活支援分野)の厚生労働大臣優秀賞を受賞した。

会員が高齢化しており世代交代(若い会員の加入)が課題だが、60代の会員も少しずつ増えている。

質疑応答

認知症捜索サポーターの方が発見した後の対応は。どこに通報して、誰が声を掛けるのか。

介護福祉課
介護福祉課

介護福祉課への電話連絡をお願いしている。電話連絡で安否と発見場所を確認し、可能であれば発見者からご本人にお声がけしていただき、近くの安全な場所(警察署や交番、公共施設等)への移動をお願いしている。 その後、介護福祉課職員で役割分担し、現場臨場、家族や関係各所への連絡、発見メールの送信などを行う。

桜井
桜井

三色吉シニア倶楽部では多くの取組を実施しているが、これらの事業の運営体制はどうなっているのか。

青柳会長
青柳会長

事業ごとに部長1名と副部長2名の3名体制で企画運営している。会長が全ての事業を統括する。会員は35名なので、皆さん何らかの部長か副部長になってもらっている。人任せにしないことも狙いになっている。

永井委員
永井委員

世代交代が課題とおっしゃっていたが、他に地域としての課題はあるか。

青柳会長
青柳会長

ない。課題と感じていない。会員の皆様から、今度はこんなことをやってみたいという提案があり、事業の数がどんどんと増えていった。困難なことと考えずに、楽しみながらやっている。

桜井
桜井

買い物支援や移動支援の取組は。

市内の大きなスーパーの1つが閉店し、買い物に困る現状が生じたことから、市の全体の課題と捉え第1層協議体において買い物支援の取組を始めた。スーパー、地域包括支援センターの協力により、高齢者の買い物の実情を洗い出した。課題は、移動なのか、運搬なのかなど、地区ごとに調査した。これを元にどうするかは今後の課題。市だけでなく企業からの提案ももらっている。市の中心部の介護事業所からは、昼の時間帯に送迎の車が空いているので買い物支援ができないかという提案があった。事業所の近所の方が運転ボランティア、大きなスーパーまで地域の高齢者を連れて行ってくれているという取組もある。

事業開始の経緯と事業の概要

厚生労働省の調査結果によると、要支援1~要介護2までの人は、歩行、食事、着脱、洗顔・洗髪、歯磨きなどの身の回りの動作(ADL)はできても、生活行為(IADL)の自立が困難で、特に買い物が困難であることがわかっている。運転免許証の返納により、更に買い物が困難となり、閉じこもりになってしまう例が多い。

ショッピングリハビリ事業は、通所介護事業所の送迎バスの空き時間を利用し、対象者の自宅まで送迎者でお迎えに行き、本事業に協力してくれるショッピングセンターまで送迎するもの。介護予防・日常生活支援総合事業の通称型サービスA(緩和した基準によるサービス)として実施しており、利用者負担は月1,510円、市負担は13,680円としている。

対象者は65歳以上の要支援1・2及び事業対象者で、自分で店舗内を移動し、買い物、支払い、袋詰めができる人としている。

実施団体は、天童市通所介護事業所連絡協議会。市内を4つの圏域に分け、商業施設は各圏域に1か所、通所事業所は各2事業所。毎週水曜日の午後(13:00~15:30)に実施している。

質疑応答

桜井
桜井

4つの圏域にそれぞれ2事業所が協力していて、協力してくれるショッピングセンターも4か所。2つの事業所が同じ曜日・同じ時間帯に1つのショッピングセンターを利用するということか。

そのとおり。

桜井
桜井

本事業の実施に当たり、バスやタクシーなどの交通事業者との調整は行ったか?

移動支援ではなくリハビリの一環という位置づけ。対象者も限定的なので、交通事業者との事前調整は行っていない。

桜井
桜井

現在は水曜日のみ実施しているが、枠が限られており、利用できない人もいるとのこと。先ほど説明の中で、市としては別の曜日も実施すれば枠を増やすことができると言っていたが、事業者には提案していないのか。

介護度が高くなった場合には、本事業の対象者から外れ、介護サービスを受けていただくことになり、枠が空く。使い勝手の良い事業なので、自力での買い物が難しくなっても利用を希望する人がいる。曜日を増やすのではなく、そのような利用者には介護サービスに移行してもらい、枠を空けることで対応している。