北本市が取り組むべき子育て支援策とは

子育て支援と一口にいっても、様々な方法が考えられます。

国立社会保障・人口問題研究所の『結婚と出産に関する全国調査』によると、「理想の子ども数を持たない理由」の第1位は「子育てや教育にお金がかかるから」です。少子化を改善するためには、子育てや教育にお金がかからないようにする必要があることは明らかです。

一方で、今実際に子育てをしている人(保護者)に対するアンケートからは、また別のニーズが見えてきます。より具体的で、切実なニーズと言えるかもしれません。北本市では2013(平成25年に『子ども・子育て支援ニーズ調査』を実施しています。この結果を見てみましょう。

北本市におけるニーズの第1位は「小児救急医療体制の充実」

「子育てしやすいまちとなるために必要なこと」という問いに対し、一番多かった回答は小児救急医療体制の充実です。就学前の保護者でも、小学生の保護者でも、小児救急医療体制の充実を望む声が圧倒的に多いことがわかります。

市内に大きな救急病院があっても小児科医が常駐しているわけではありません。我が家も子どもが小さい時に異物誤飲をしてしまい、市内の病院では対応できず、毛呂山町の埼玉医大まで車で行き、深夜に診察してもらったことがありました。同じような経験をしている方が多いのだと思います。

全国的に見て同じ課題を抱えている自治体も多いと思いますので、先進事例などを参考に早急に対策を講じなければならないでしょう。

子どもが小学生になるとニーズが低下する保育費・教育費の負担軽減

面白いのは第3位の保育費・教育費の負担軽減です。未就学児の親の約7割が要望しているのに対し、小学生になると38.7%まで低下します。喉元過ぎれば熱さを忘れるということかもしれません。

少し古い調査ですが、2010(平成22)年に内閣府が『インターネットによる子育て費用に関する調査』というものを実施しています。この調査によると、確かに小学校に入学すると子育てに係る費用が若干少なくなりますが、そこまで大きな差はないように思います。

問題はその内訳でしょう。保育所・幼稚園児は子育て費用のうち一番大きな割合を締めているのが「保育費」です。サービスの対価として支払っている費用ではありますが、子育てのコストとして見ている人が多いのではないかと思います。

一方、小学生の子育て費用も保育所・幼稚園児と金額に大差はありませんが、義務的に学校に支払う額はわずかで、代わりに塾などの学校外教育費や、習い事などの学校外活動費が増えます。これらは任意の支出なので家計が厳しければ負担しないという選択ができますから、経済的な負担としてあまり感じていないのかもしれません(もちろん統計上の話で、学用品の購入や給食費が大きな負担になっている家庭もあるでしょう)。

北本市がすぐに取り組むべき子育て支援策

こうしてみると、北本市において特に求められている子育て支援の取組は、次のようなものになると思います。

◆ 小児救急医療体制の充実
◆ 子どもが安全・安心に暮らせる環境づくり
◆ 保育料の負担軽減

このうち保育料については、消費税の税率引き上げに合わせ2019年10月から無償化されることが決まっています。実現すれば経済的な負担がかなり軽減されるはずです。

一方、北本市のニーズ調査では選択肢がありませんでしたが、PTAや学童保育の父母会などに対する負担感というのも相当あるのではないかと考えています。実際、この調査の自由記述では「学童に入れても会議や行事の準備で余計に忙しくなるなら入る気になれない」という回答がありました。

子ども・子育て支援ニーズ調査は、子ども・子育て支援事業計画を策定するために実施されたものですが、この計画は2019年度末で終了します。新たな計画の策定に向け、改めて調査を行い、この5年間で市民のみなさんの意識やニーズがどのように変わったのか把握するべきだと思います。なお、調査に当たっては、できるだけ多くの保護者に直接話しを聴き、計画作りにも参加してもらうことが望ましいと思います。