北本市 令和4年度決算の解説

主な財政指標

歳入決算額、歳出決算額ともに前年度から減少しましたが、新型コロナ対策関係経費の減少が主な要因です。実質収支は4年連続で10億円を上回りました。

ここ数年は市債の償還がピークを迎えていたため実質公債費比率は上昇しましたが、市債残高の減少と基金残高の増加により将来負担比率は低下しています。

財政状況は良好と言えますが、実質収支の大幅黒字が続いているように、十分な投資が行われていないとも言えます。

総務省|令和4年版 地方財政白書|用語の説明 (soumu.go.jp)

歳入

一般財源の柱である市税(1.2%増)に加え、地方消費税交付金(2.4%増)、地方交付税(0.6%増)が増加しました。新型コロナ対策の減少により国庫支出金は13.5%減少しましたが、ふるさと納税寄附の増加により寄附金は22.3%、約2億円増加しました。

繰入金は財政調整基金やふるさと応援基金からの繰入金の増加により平成26年度以来の10億円超え。市債は前年度から10.3億円、57.6%の大幅な減少となりましたが、これは地方交付税の振替措置である臨時財政対策債が令和3年度の12.8億円から3.3億円に減少したことが大きな要因です。

個人市民税は1.2%の増です。北本市の人口は減少していますが、個人市民税の納税義務者は増加しています。法人市民税は新型コロナ特需(ワクチン・体温計製造など)が減少したことで10.9%の大幅減となりました。軽自動車税は普通自動車からの乗り換えが進んだ影響で6.3%増、市たばこ税は税率引上げの影響で3.4%の増となりました。

なお、徴収率は98.1%で前年度比0.2ポイント上昇しましたが、現年度課税分は99.2%(変わらず)、滞納繰越分は43.0%(△7.1ポイント)となっています。引き続き徴収率の向上に努めなければいけません。

令和4年度のふるさと納税寄附金は11.1億円でした。返礼品の調達などの経費に4.7億円を要しており、経費を差し引くと6.4億円となります。さらに、北本市民が他自治体にふるさと納税をしたことによる個人市民税の減収額が1.5億円ありました。これらをトータルすると、ふるさと納税による本市の実質的な増収額は4.9億円となります(県内最多)。

ふるさと納税寄附の返礼品の上位3社はご覧のとおりです。金額としては銀座英國屋さん(スーツ仕立券)に集中していますが、件数ではクッキークルさんが大きく増加しています。

ふるさと納税の使い道については、基金のところで解説します。

歳出

令和2年度の総務費の増加は新型コロナ対策の1人10万円交付金支給によるもの、その後の増はふるさと納税関連支出や財政調整基金等の基金積立金の増加によるものです。

民生費は、高齢者、障がい者、児童それぞれの分野で増加しています。令和4年度は非課税世帯向けの給付金も民生費に計上されています。衛生費はコロナワクチン接種により令和3年度以降増加しています。教育費はGIGAスクール対応と西小学校給食室整備がほぼ完了し、コロナ前に戻りました。

公債費は令和3、4年度が市債償還のピーク。令和5年度は21.3億円まで減少します。

新型コロナ関連の支出についてはこの後でも説明しますが、令和4年度は前年度比8.5億円減の14.9億円となりました。コロナ関連を除いた合計でも前年度比7億円増となっており、新型コロナ以外の要因でも歳出規模が拡大していることがわかります。燃料費や物価の高騰、人件費の上昇のほか、本市においてはふるさと納税寄附の増加も歳出規模拡大の要因です。

性質別で見ていただきたいのは、普通建設事業費です。近2年よりは若干増加しましたが、依然として低水準です。令和4年9月補正予算で道路修繕経費の増額補正を行ったものの、令和4年度中には事業が完了しなかったため、令和5年度に繰り越されています。令和5年度決算でどの程度まで増加するか、注視してまいります。

令和4年度のコロナ関連支出は14.9億円、前年度の23.4億円から大幅に減少しました。全額国が負担した事業の内訳は、ワクチン接種が4.8億円、住民税非課税世帯や子育て世帯など個人への支援が5.4億円となっています。

一方、新型コロナウイルス対応地方創生臨時交付金を活用した事業では、所得制限なく支給した子育て世帯支援給付金(15歳以下1人2万円)、令和5年度上半期の学校給食費を無償化する学校給食費負担軽減事業、キャッシュレス型消費活性化事業(Paypay等電子マネーの推進)など市民が広く対象となるものや、中小・小規模企業者支援事業、医療機関等支援金交付事業など、事業者支援が中心となりました。

こちらは、一般会計に限らず、どのような分野の支出が多いかを調べるために作成した独自資料です。特別会計や下水道事業会計も含んでいます。また、高齢者医療は高齢者関連と医療の両方に計上しています。学校教育費について、教員給与費は県が支出しているため、ここには含みません。

子ども関連は、幼保無償化により保育需要が増加していることと、制度改正により市を経由しなかった支出が市を経由するようになったことも影響しています。

基金

基金残高は令和2年度以降大きく増加しています。ふるさと納税の増に加え、新型コロナ関連の事業を国からの財源で賄っており、市の支出を控えてきたことが要因です。

市民からお預かりした貴重な税金を使い切らずに翌年度に持ち越すこと、国が借金を増やしてコロナ対策・物価高騰対策を講じている中、市が貯蓄を増やしていることは、市の財政状況が良くなっているとは言え、財政運営が上手とはとても言えないでしょう。

ふるさと納税の活用(ふるさと応援基金の充当先)

北本市ではふるさと納税寄附者の希望に応じて目的毎に9つの区分に分けて基金を積み立て、活用しています。区分毎の基金残高や活用状況については、北本市のホームページをご覧ください。

令和4年度のふるさと応援基金の充当額は351,032千円で、充当した主な事業は、次のとおりです。
こども医療費支給事業 125,000千円
予防接種事業(コロナワクチンを除く)100,000千円
新中央保育所整備事業 30,000千円
一般廃棄物処理施設整備基金積立事業 50,000千円

北本市ふるさと応援基金/北本市 (kitamoto.lg.jp)

市債

市債残高は、平成26年度をピークとして減少傾向にあります。小中学校の大規模改修、市役所新庁舎の建設によって市債残高が増加したため、建設事業を抑制してきたことが大きな要因です。償還も令和3,4年度にピークを迎え、今後は減少に向かうため、公共施設の再編を中心に、今後は建設事業の増加が見込まれます。

なお、市債残高の大半(棒グラフの黄色)は臨時財政対策債です。国が市に交付する地方交付税の原資が不足したため、市が市債を発行し財源を調達し、償還に合わせて国が地方交付税を交付する「事実上の分割払い」となっているものです。臨時財政対策債は財源の全額が地方交付税で措置されるため、市の財政状況の悪化にはつながりません。市としては、臨時財政対策債を除いた額(棒グラフの赤字)が実質的な借金となります。

後期高齢者医療特別会計は、市が徴収した後期高齢者医療保険料に低所得者の保険料軽減分(一般会計からの繰入金)を加えて、後期高齢者医療広域連合に納付する会計です。

後期高齢者の増加に伴い、歳入歳出それぞれ増加しています。被保険者数は、令和3年度10,709人から令和4年度は11,243人に5.0%増加しました。

令和3年度の三宮市長が区画整理事業の見直しを発表し、将来的な方向性が絞られたことで、事業の進捗が若干加速しています。令和5年6月定例会で議会も市長の見直し案を容認したため、いよいよ本格的な事業計画の変更に着手しています(現行の事業計画は令和8年3月31日までとなっていますので、その前までには変更を完了しなければなりません)。

久保特定土地区画整理事業を早期に完了させるためにカギとなるのは、国の交付金の交付率の向上と一般財源からの繰入金の増額です。東日本大震災以来、復興以外の交付金の交付率が下がっており、交付金の申請をしても満額交付されることはありません。令和4年度の交付率は53.3%でした。市がせっかく予算を計上しても、交付金の交付率が低いと減額補正せざるを得なくなります。交付率を引き上げてもらうか、申請額を増やす(交付率が半分程度でも額は増額となる)対策が必要です。

一般会計からの繰入金の確保は、財政状況次第です。高齢化の進行に伴い、介護・医療の支出増が見込まれるだけでなく、保育施設の利用者の増加により児童関係経費が増加しています。これまでは積み立てるばかりだった南部地域整備基金を、今後は取り崩して活用していかなければならないでしょう。

桜井の討論(要旨)

保険税率の改定により被保険者1人当たりの税額が令和3年度の90,382円から98,306円と8.8%の増となった一方で、保険税収入は、前年度から4,395万5,350円、3.3%の増にとどまった。被保険者数が14,691人から13,954人と約5%減少したことで、一人当たりの保険税負担額が増えた形。

保険税軽減に係る一般会計からの繰入金も前年度から1.8倍に増加。今後は国保の被保険者はさらに減少することが見込まれ、一人当たり保険税負担額の更なる上昇が懸念される。今回の税率引き上げが被保険者に与えた影響を分析・検証し、
令和9年度の県内保険料統一に向けた今後の税率改定に備えていただきたい。

本市の大きな課題は、徴収率の向上と、特定健康診査・特定保健指導の受診率・実施率の向上。特定健康診査の受診率39.3%は県平均38.8%を上回り相対的には悪くないが、目標60%には大きく届かない。医療費削減のためにも効果的な受診勧奨に努めるように。

本市が努力をしても国保税の引上げが必要な状態。国保財政には財政構造上の問題がある。医療保険制度の抜本的な見直しを国に要望していただきたい。

桜井の討論(要旨)

決算額だけを見ると居宅サービス給付費が増加した一方で施設サービス給付費が減少しており、施設から地域への移行が進んだようにみえるが、実際には有料老人ホームやサ高住の入居者が増え、居宅サービスの特定施設入居者生活介護が増加している。施設サービスの減も利用者負担の見直しによるもの。地域移行が進まない理由をしっかりと分析し、その結果を踏まえて第9期介護保険事業計画を策定するように。

認知症施策は、普及啓発が不十分で、初期集中支援チームの対応件数もわずか。認知症総合支援事業経費の決算額も近隣市と比較して著しく少ない。近隣市の実施状況と比較し、本市の取組が十分かどうか検証すること。

地域包括支援センター委託料は予算どおりだが、平成27年度からほぼ同額が続いている。高齢化の進行による要支援・要介護認定者の増加や価、人件費の高騰が進んでいる中、委託料の額は妥当なのか、改めて詳細に検証し、来年度当初予算に反映させること。

公共下水道事業の課題は、画像にあるとおりです。一般会計からの補助金(赤字補てん)を続けてきた理由の一つに「不明水」があります。経年劣化により管渠の亀裂等から侵入する雨水の流入などが主な原因です。本市においては不明水の割合が多いため、下水道使用料の引上げを答申した北本市下水道事業審議会でも「不明水流入防止に取り組むなど、更なる支出の削減に取り組むことを望む」としています。

すでにカメラを使った調査を実施し、順次補修を行っているところですが、下水道供用開始から40年程度経過し、コンクリート管の法定耐用年数も近づいていることから、下水道管渠全体の調査・補修を計画的に行っていくことが、今後の大きな課題です。