北本市議会健康福祉常任委員会は、令和7年10月1日(水)から3日(金)の3日間の日程で、行政視察を行いましたので報告します。行政視察先は次のとおりです。
菊川市は静岡県西部に位置する人口46185人、面積209.67㎢の都市です。静岡市と浜松市の中間に位置し、お茶が名産品です。
産業支援センターEnGAWA(エンガワ)は人とビジネスの縁をつくる場所、縁側のような場所、菊川(KIKUGAWA)のGAWAをとって名付けられました。
地元事業者が中心となった地域経済活性化推進会議から意見書が提出されたことを受け、令和4年2月にできました。意見書の内容は、①ワンストップ相談窓口の設置、②事業承継の個別相談の実施、③事業承継に係る効果的な情報発信と共有、④事業承継ネットワークを構築し協力体制の整備を進めること、の4点でしたが、事業承継だけでなく創業・起業の相談の窓口としました。セミナー・イベントの開催などもしています。
信用金庫をリノベーションして、コワーキングスペース、相談窓口、カフェの複合施設となっています。運営はCienという事業者に委託していますが、市の職員と信用金庫の職員も常駐しています。経営に関する相談は、県のよろず支援拠点の専門家6人と中小企業診断士2人が受けます。事業承継に関する相談は大変難しく、実績を挙げにくいものですが、これまで2件の事業承継につなげています(いずれも従業員による承継)。従業員による承継の場合、前経営者からの影響を受けやすいところでうが、センターや専門家が間に入ることによって継承者のやり方で進めやすくなる利点があるとのことでした。
また、創業・起業支援では、チャレンジビジネスコンテストを開催し、起業につながっているが、優れた事業者ほど市場を拡大するため市外に拠点を移してしまうため、市内への定着が課題であるとのことです。
コワーキングスペースは朝9時~夜10時まで開室しており、副業などで夕方以降の利用者が中心です。駅周辺にはファミレスや喫茶店などが少ないため、作業や打合せのスペースとして利用されているとのことです。
春日井市は名古屋市の北東に位置する人口30万人超のベッドタウン。面積は92.78㎢。市東部の高蔵寺ニュータウン(日本三大ニュータウンの一つ)で自動運転送迎サービスを実施しているほか、MaaSウェブアプリ「move!かすがい」の運用、オンデマンド乗合サービス(乗合タクシー)実証実験、共同配車システム実証実験など、公共交通に関する多様な取組を実施している。
ラストマイル自動運転送迎サービス
市東部にある高蔵寺ニュータウンの中の石尾台地区において、地域内の移動手段として大型ゴルフカートのような乗り物を導入した。石尾台地区は市内全域や高蔵寺ニュータウン全体と比較しても高齢化が進んでいる(37%)が、地域内にスーパー、薬局、郵便局、クリニックなどがある。坂道が多く、移動が困難だが、町内会の加入率は高く、住民の活動も活発な地域。
自動運転のレベルは2で、有償ボランティアの運転手と補助員が乗車。速度は12km/h程度。運営は地元住民が設立したNPO。地域のキーマンを中心に声掛けし、3年以上かけてサービス設計、組成を行った。平日の午前3時間、午後3時間のみ運行。ボランティアを確保するため前日までの予約制。料金は1回100円(非会員は300円)。町内会全体で加入すると年会費が安くなる(町内会全体での加入促進)。令和6年度利用実績は延べ1240人、運行回数977回。休日も運行してほしいという要望や、近隣地区でも運行してほしいなどの要望があるとのこと。
Digi田(デジでん)甲子園「自動運転ラストマイル送迎サービス」準優勝(外部リンク)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/menubook/2023/2007.html
MaaS(Mobility as a Service)アプリ move!かすがい
愛知県スマートシティモデル事業を活用して2023年1月運用開始。バスのデジタルチケットの購入、クーポンの提供、タクシーの呼び出し、ルート検索、バスロケーションシステム(バスの運行位置が分かるシステム)などが一体となったWebページ。
『move!かすがい』ホームページリンク(外部リンク)
https://maas.meitetsu.co.jp/kasugai/
オンデマンド乗合サービス(乗合タクシー)実証実験
タクシーの利便性を維持しながら、通常のタクシー運賃より割安に乗車できる。乗合協力割引により5割程度運賃が割安になる。料金は事前に確定している。一定の支持は受けられたが、収支を合わせることが難しく、持続的な運営ができないことから、令和6年9月末で実証実験を終了。
共同配車システム実証実験
タクシー事業者と連携して、クラウド上に共同配車システムを構築。市内タクシー4社に20台のタブレットを配布。最適配車計算により2種類の配車依頼(当日の即時配車・前日までの予約配車)を実施。令和7年2月3日から3月14日まで実証実験を行ったが、登録ユーザー数89人、リクエスト件数36件、成立件数3件だった。タクシー会社としては、通常の配車に加え、タクシーGoなどの汎用アプリによる配車、本システムの配車と配車方式が多くなり、オペレーションが難しくなった。タブレット配布台数も僅かだったため、車両の稼働率も低かった。ただしタクシー会社も協力したいという思いはあるので、引き続き他の方法を検討していく。①公営住宅をたたみながら(経費削減)、②入居者の生活の質を上げ、③周辺エリアを豊かにする(税収を増やす)取組です。
大阪市大東市は大阪市東部に位置する住宅地で、東側は生駒山地です。面積は18.27㎢で北本市よりもやや小さいですが、人口は11万5千人です。今回視察をしたのは四条畷駅(市域は大東市)東部で実施している『北条まちづくりプロジェクト』の第一弾として実施された、全国初の官民連携(PPP=Public Private Partnership)による市営住宅の建替え・再開発プロジェクト『もりねきプロジェクト』です。
昭和40年代に建設された市営飯森園第二住宅(144戸)の老朽化・空室増加に伴い、PPPの手法を用いて借り上げ市営住宅、都市公園、商業施設の一体的整備を行いました。事業主体となったのは、株式会社ノースオブジェクトです。市営住宅は全て取り壊し、更地としました。元の市営住宅に残っていた80戸の住人の意向を調査し、残る意向を示した74戸分の市営住宅を建設しました。市営住宅は2階建又は3階建で、玄関が引き違いガラス窓なっています。大阪に多く残る文化住宅を思わせる外観ですが、全戸が広々とした中庭に面しています。建替え前の入居者平均年齢は平均75歳でしたが、今は子育て世帯(一人親世帯)優先で入居者を募集しており、入居者は若返っています。隣接地に認定こども園があります。市営住宅は民間が建設し、市が借り上げています。期間は20年で、その後は民間の住宅となります。
市営住宅の隣は広々とした芝生広場(3100㎡)で、広場に面してレストランとアウトドアショップがあります。芝生広場は市所有の都市公園、広々とした舗道は市道で、その他の部分の土地は市が所有し、定期借地権を設定しています。土地は市が所有しているので事業者は土地を担保にして融資を受けることはできませんが、市が市営住宅を借り上げるので、この賃料を担保として融資を受けたとのことです。
敷地東側はテナント棟になっており、この2階部分に株式会社ノースオブジェクトが入居(大阪市内から本社移転)しています。北欧イメージのアパレルブランドで、レストランを含めたテナント全体のイメージが統一されています。民間工事部分(市営住宅・店舗、事務所)は建築面積3304.12㎡で総工事費は約13億円です。広い芝生広場、魅力的なテナント、近隣に子育て・教育施設があり、駅からも徒歩5~10分圏内にあることから、近隣にも転居してくる人が増えているとのことです。古い町並みから新しい町並みにかわり、地域の魅力が大きく向上しています。