新ごみ処理施設建設予定地の安全性の考察

埼玉中部環境保全組合(鴻巣市・北本市・吉見町)で建設を予定している新たなごみ処理施設の建設予定地(鴻巣市郷地安養寺地内)の安全性について考察します。

なお、考察に当たり比較の対象として久喜市の新たなごみ処理施設(久喜市菖蒲町台)を取り上げます。久喜市の新施設は現在稼働中の久喜宮代衛生組合菖蒲清掃センターの隣接地に建設される予定で、令和4年6月に落札者が決定しています。

久喜市新たなごみ処理施設整備事業のホームページ

浸水の危険性は?

鴻巣市郷地安養寺

最初に浸水の危険性について見てみます。鴻巣市の水害ハザードマップによると1000年に一度の大雨による氾濫を想定した場合、建設予定地の想定浸水深は3.0m~5.0m未満です。浸水の危険性が高い場所と言えます。

下の写真は、2019年台風の時の現地の写真です。この時は県道308号線(写真左端のガードレール)までは浸水しませんでしたが、水田は水没しています。

ハザードマップには浸水継続時間も表示されていますが、この場所は「2週間」となっています。

なお、土地の造成についてどの程度の盛り土が必要かは未確定ですが、鴻巣行田北本環境資源組合が行ったメーカーへの概算事業費のアンケート調査では、現況地盤から土を約1.5mすき取り、産業廃棄物として処理し、その後県道レベルまで約3mの盛り土をした場合で、最大31.2億円の粗造成費が掛かると説明されていました(鴻巣行田北本環境資源組合令和3年第3回定例会)。

久喜市菖蒲町台

久喜市の新施設は現在稼働中の菖蒲清掃センターの隣接地に建設されます。『久喜市ごみ処理施設整備基本計画』には「計画予定地 (菖蒲清掃センター)は、久喜市防災ハザードマップによると現況高で0.5~3mの浸水、1~3日未満の浸水が予想されている。」とありますが、実際の建設場所は菖蒲清掃センターよりも一段低く3.0m~5.0m未満です。

なお、令和3年2月の策定された『久喜市ごみ処理施設整備基本計画』では「2.5.3 洪水浸水対策」の中で「高さ3m程度の盛土を行い、地盤高を嵩上げる対策を講じる。」としています(P.39)。

地盤の緩さは?

鴻巣市郷地安養寺

鴻巣行田北本環境資源組合において、平成28年度に地盤調査(5地点のボーリング調査)を行い、その結果が『鴻巣行田北本環境資源組合地質調査業務委託報告書(平成29年3月)』としてまとめられています(ホームページでは公開していません)

結論としては、地表から深さ約9.5~13mにある砂礫層が支持地盤となりうるとされています。このことは私が組合議会の一般質問でも確認しています(組合議会令和元年第2回定例会)。

「表層部分から地下約6mにかけてN値0に近い腐植土層や粘土層があり、その下には地下6~9.5mにかけてN値5~40のシルト層及び細砂層が堆積し、地下約9.5m~13mにかけてN値34~50以上の砂礫層がほぼ均一に堆積し、地下13~20m、場所によっては25mにかけてN値30~50以上の中砂層が堆積しています。地質調査では、この砂礫層などを支持地盤とする案が示されております。」
※会議録はこちら(該当部分はP.56,57)

なお、この報告書では液状化の可能性について「調査地においては、地震時に液状化が発生する可能性が低く、また、危険度も低いものと判断される。」とされています(P.60)。

◆ボーリング調査の結果 鴻巣行田北本地質調査報告書【抜粋】(PDF)

◆支持地盤と基礎形式の提案(P.63)

久喜市菖蒲町台

『久喜市ごみ処理施設整備基本計画』の中に、地質調査結果が示されています(P.12)。

柱状図の文字が小さく見づらいので、拡大しました。

これを見ると鴻巣市郷地安養寺で見られた「砂礫層」がありません

粒子が小さいものから順に、粘土→シルト→砂→礫(レキ)で、粒子が大きいものからなる地盤の方が安定してます。深さ6.5m以下に上から順に「硬質砂混りシルト」「中砂」「硬質砂混りシルト」「細砂」層があります。相対稠度や相対密度の表記を見ると、上の硬質砂混りシルト層(深さ6.5~8.3m)は「非常に硬い」(N値だと15~30)で支持地盤にするには緩そうですが、その下の硬質砂混りシルト層と細砂層(深さ8.7~12.5m)はN値が30~50以上あり、支持地盤になる可能性がありそうです(煙突を除く)。

また、『久喜市ごみ処理施設整備基本計画』には「計画予定地は、薄い沖積層に覆わ れている。また、久喜市防災ハザードマップによると液状化の可能性が高い区域となっている。」とも記されています(P.12)。

まとめ

鴻巣市・北本市・吉見町が基本合意書で建設予定地とした鴻巣市郷地安養寺地内は、水害の恐れがあるうえに支持地盤も地中深くに存在しているため、大規模な造成工事が必要となります。

しかしながら、ごみ処理(焼却)施設は近隣に住民が居住しているところでは反対運動が起こりやすく建設がきわめて難しいことから、地盤の悪いところに建設される例も多く、実際に久喜市で新たに整備されるごみ処理施設の建設地も、浸水の危険性や地盤の緩さから見ればほぼ同様です。

建設予定地(鴻巣市郷地安養寺地内)は、水害や地震などの災害の恐れがない安全な場所とは言い難いですが、対策を講じることで安全な施設として整備することは可能でしょう。問題は整備費(がどのくらい高くなるか)です。

次回は、鴻巣行田北本環境資源組合がメーカーへのアンケート調査結果を元に公表した概算事業費や、久喜市の新ごみ処理施設の整備費を参考にして、整備費について考察します。