北本市令和3年度決算の解説

令和3年度の北本市の決算について、令和4年9月定例会に決算の認定に関する議案が提案され、全会計について認定されました。

各会計の決算の内容について解説します。

動画による解説

令和4年11月23日(水)19時からZoomミーティングにより解説します(2時間程度を予定)。

https://us06web.zoom.us/j/81257004327?pwd=THRnSWRaT0NMZGk4SDlDMlNxeUd0Zz09

ミーティングID: 812 5700 4327
パスコード: 114355

説明資料 R03kitamoto-kessankaisetsu(PDF)
※説明資料に一部誤りがあり、2022.11.23 14:40に更新しました。

一般会計

主な決算指標

主な財政指標は上の表のとおりです。基金残高が増加し、市債残高が減少しているため、将来負担比率が大きく低下しました。

指標の説明
総務省ホームページ(https://www.soumu.go.jp/main_content/000264701.pdf

歳出(款別)

総務費が55.1億円(55.7%)の減でした。令和2年度は全国民に1人10万円を支給した特別定額給付金(総額66億4千万円)があったためです。令和3年度は特別定額給付金分が減額となりましたが、ふるさと納税業務経費(6億円→8.9億円)や基金への積立て(6.7億円→12.9億円)が増の要素となっています。

民生費は15.4億円(17.5%)の増でした。新型コロナウイルス対策として、住民税非課税世帯や子育て世帯への給付金が大きな要因です。高額事業や新型コロナ対策事業で改めて説明します。

衛生費は4.4億円(29.0%)の増でした。新型コロナワクチン接種事業(0.1億円→5.4億円)の増が主な要因です。一方で、令和2年度は水道料金軽減事業(4千万円)があったことや、一般廃棄物処理施設整備基金への積立金が減った(1億円→5千万円)ことが減の要素となっています。

商工費は5千万円(22.2%)の増でした。新型コロナに係る経済対策として、キャッシュレス型消費活性化事業やプレミアム付き商品券(クーポン型)事業を実施したことによるものです。

土木費は1.4億円(9.2%)の減でした。北本市の土木費は県全体や近隣の桶川市、鴻巣市と比べてかなり少ない水準です。実際に、市民の皆様から寄せられた道路修繕の要望がきちんと対処されず、議会でも複数の議員がたびたび指摘しています。令和3年度の決算額も前年度を大きく下回りましたが、遅れを取り戻すために、令和4年9月定例会に道路整備費として3億4,400万円の増額補正が提案されました。

教育費は2.3億円(9.7%)の減でした。令和3年度は西小学校給食室整備事業(3.5億円)を実施した一方で、令和2年度からはGIGAスクール関係事業(△4.8億円)、デジタル教科書の購入(△2400万円)、図書館パワーアップ事業(△2800万円)が減の要素となっています。

歳出(性質別)

性質別の中で増減が目立つのは、扶助費、補助費等、積立金です。

扶助費と扶助費等は、いずれも新型コロナ対策関連の交付金の増減が影響したものです。

令和3年度は、住民税非課税世帯へ臨時特別給付金(総額4.8億円)と子育て世帯への臨時特別給付金(総額8.7億円)が扶助費に計上されています。令和2年度の特別定額給付金(1人10万円、総額66.4億円)は補助金等に計上されていたため、補助費等は大きな減額となりました。いずれも国費で対応しているため、市財政への影響は軽微です。

積立金は、財政調整基金6.4億円(前年度5.1億円)、減債基金6.5億円(同1億円)、ふるさと応援基金5.2億円(同3.6億円)など各基金への積立額が増加したため、前年度から9億6千万円(81.5%)増となりました。

歳出(高額事業など)

市の歳出総額は240億円に及びますが、上記の事業だけで140億円を超えています。上記事業の多くは裁量の余地が少ないものです。

高額事業の中では、障がい者福祉業務経費が8.2%の大きな増額となりました。後期高齢者医療関連は、高齢化の進展に伴い増加傾向です。児童施設運営費(民間保育施設関係)は、幼保無償化や幼稚園から認定子ども園への転換などにより増加傾向です。高齢・障がい・子どもの3分野ともに増加傾向にあるということです。

歳出(新型コロナ関連事業)

全60事業 23億3,922万2千円

  • 子育て世帯への臨時特別給付金 8億6,694万1千円
  • 新型コロナワクチン接種事業 5億4,420万6千円
    (接種委託 2億9,538万3千円、コールセンター業務委託 1億5,661万8千円等)
  • 住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金 4億8,493万円
    など

上記のうち
新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の充当事業
3億5,444万7千円

その他の主な事業

シティプロモーション業務経費 1,387万5,300円
&greenマーケット事業、&green fes事業、「縄文銀座きたもと」を軸とした歴史文化の魅力発信・向上事業、観光ガイドマップ改訂版作成事業などを実施。その取組は全国広報コンクールで最高賞「内閣総理大臣賞」を受賞するなど高く評価された。

北本駅東口駅前広場屋根整備事業 418万円
基本構想の一環として基礎調査を業務委託。交通手段ごとの利用者数を把握し、屋根を架ける位置や屋根本体のデザイン案の検討などを行った。

デマンドバス運行経費 2,736万2,017円
年間利用者数は22,621人(前年度20,033人)。ワゴン車2台、セダン車2台で年中無休運行を実施した。

歳入(款別)

歳入では市税がほぼ横ばいでしたが、地方消費税交付金地方交付税は大きく増加しました。国庫支出金は、令和2年度は特別定額給付金(総額66億円)があったため大きく減少しましたが、それでも例年と比べかなり大きな割合を占めています。寄附金はふるさと納税寄附の受入額が大きく増えたことで3億円(50.8%増)となりました。

歳入(市税)

令和3年度当初予算における市税収入は81.4億円、年度末に3.7億円の増額補正を行い85.0億円としていたものの、決算は88.6億円となりました。新型コロナや人口減少の影響で税収減を見込んでいたのに対し、実際には0.2%の微増となりました。

特に大きな増額となった法人市民税は、市内に新型コロナワクチンを製造する会社や、非接触型体温計やパルスオキシメーターなどを製造する会社があったことにより、大きな増収となりました。

市たばこ税も、大きな増収となっています。要因ははっきりしませんが、キャッシュレス型消費活性化事業によりたばこが買い溜めされて、例年よりも販売量が増えた可能性があると考えています。

基金の残高


令和3年度の基金残高は57.3億円で、令和2年度末から16.6億円の大幅増となりました。

財政調整基金は、令和3年度当初では7億円の取崩しを計上していましたが、令和3年度の歳入が歳出を大幅に上回ることがわかったため、補正予算において取崩しを中止しました。さらに令和2年度決算の剰余金から5億7,600万円を積み立てたため、6.4億円もの増となりました。

ふるさと納税は、寄附受入額から返礼品の購入やポータルサイトへの手数料などの経費を除き、残りは全額ふるさと応援基金に積み立てることとしています。

地方交付税について、将来交付されるはずの臨時財政対策債の償還に充てる財源分が前倒しで3.5億円交付されました。将来の償還に充てるための財源なので、令和3年度中は全額を減債基金に積み立てています。

市債の残高

市債残高は、199,2億円に減少しました。臨時財政対策債は、地方交付税の振替措置であるため、償還の財源は地方交付税で措置されます。市が特に気にしなければいけないのは、臨時財政対策債を除く市債の残高です。グラフの薄い青色の部分ですが、市債全体よりも急ピッチで減少していることがわかります。北本市財政計画により、令和4年度までは公債費が高水準であるため、新規の借入を抑制していたことが要因です。一方で、本市の土木費や普通建設事業費は他市と比較しても低水準であり、インフラ整備が十分に行われていない可能性もあります。市民生活の安全・安心を守るためにも、一定の「投資」は不可欠です。

北本市財政計画(R4~R6)

北本市財政計画(令和4年度から令和6年度)
財政計画/北本市 (kitamoto.lg.jp)

令和3年度一般会計歳入歳出決算の認定についての桜井の賛成討論【要旨】

 

昨年度に引き続きコロナ禍での財政運営となったが、市税収入が微増となったほか、地方交付税や寄附金が大きく増加したことで、実質単年度収支は大幅な黒字となった。財政の健全性という観点からは評価できる。市税の納税率は大きく向上したが前年度に催告を減らし納税率が落ち込んだ反動によるもので、徴収努力の結果とは言えない。現年度納税率が近隣市と比較して低いことを自覚し、納税率の改善に努めること。土木費の決算額が相変わらず少ない。当初予算において県平均レベルを確保すること。新型コロナウイルス関連事業は、内容を見ると新型コロナの感染拡大で大きな打撃を受けた個人や事業者を救うことができたのか疑問。特にキャッシュレス型消費活性化事業は、どこの店舗で、いつ、いくら使われたのか分からず、万が一不正の疑いがあったとしても調査が困難。不正が起こらないよう透明性の高い事業手法とすることや、後で費用対効果が分かるようにすることは当然。今後同種の事業を行う場合には、このことを念頭において事業を設計するように。また、ふるさと納税PR業務に新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を充当したのは不適切。財政規律が緩んでいる。臨時交付金の充当に当たってはその趣旨を踏まえ、市民生活や市内経済を守るという観点を最重視して、充当事業を決定するように。組織・人事について、大課制が導入され、課長の人事異動も積極的に行っているが、守備範囲が広くなりすぎてはいないか、業務の継続性に支障は生じていないか、人事配置は果たして適材適所と言えるのか、疑念がある。業務の継続に支障がないよう、組織・人事の在り方を改めて見直すように。以上、細かな点では不適切と思われるところはあるが、新型コロナワクチン接種や国からの各種交付金が円滑に交付され、全体としては良好な決算となっていることを評価し、賛成討論とする。

特別会計

後期高齢者医療特別会計

保険者は埼玉県後期高齢者医療広域連合です。市が徴収した保険料に、保険料の軽減分として一般会計からの繰入金を加え、広域連合に納付しています。令和3年度の被保険者数は11,382人(前年度10,981人)に対し、保険料の軽減対象者数は6,769人(同6,510人)で59.5%の人が軽減を受けています。

後期高齢者医療制度の解説
高齢者医療制度 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

久保特定土地区画整理事業特別会計

事業費が久しぶりに1.5億円を上回ったが、令和3年度に市長が発表した見直し案は関係各者との調整、計画見直しの手続きが必要なため、これらが完了するまで本格的な進捗は見込めません。議員の多数が西仲通線を迂回させる見直し案に反対していることもあり、今後も難航が予想されます。

桜井の賛成討論(要旨)

 

令和3年度の歳出決算額が3億5千万円を上回ったが、区画整理事業が大きく進捗したわけではない。市長は昨年度、久保特定土地区画整理事業の見直しを決定し、この見直し案は、事業期間の短縮や事業費のうち市負担額の削減、さらには減歩率の圧縮により、地権者の負担軽減にも資するもので、地権者にもおおむね賛同をいただいているが、議会を含め全面的な賛同が得られているわけではない。見直し案に従い一刻も早く事業を進捗させるためにも、各方面に対し見直し案の優位性を丁寧に説明するとともに、関係機関との調整を進め、見直し案の実現可能性を確実なものとする必要がある。久保特定土地区画整理事業の一日も早い完了を目指し、引き続き、最大限努力することを求め、賛成の討論する。

久保特定土地区画整理事業の進捗状況(令和3年度末)
彩の国の区画整理R04(PDF)

国民健康保険特別会計

国民健康保険の加入者は人口減少や高齢化の進展により減少傾向にあります。令和3年度は国民健康保険税率の見直しが賦課限度額の引上げのみだったため、保険税収入が減少しました。令和2年度に新型コロナ感染拡大による受診控え等の影響で減少した保険給付費は、令和3年度も横ばいでした。一方で県への事業費納付金は1.8億円の増加となりました。

国民健康保険財政調整基金の残高は、令和2年度末の4.6億円から令和3年度末は3.3億円に減少しましたが、令和4年度に国民健康保険税の税率を引き上げ、基金残高の維持を図っています。

桜井の賛成討論(要旨)

 

令和3年度の決算は、実質単年度収支でマイナス9,517万6千円となった。令和3年度は保険税の引き上げを付加限度額の引上げのみとしたため、国民健康保険税の税収が前年度から3.1%減少し、一方で増加した国民健康保険事業費納付金を支払うために1億3,536万2千円の基金取り崩しが必要となったことが赤字となった主な要因。令和4年度は税率を全面的に引き上げており、実質単年度収支が赤字になることはないが、本市では県が定めた標準保険税率とは異なる形で税率を設定しており、収支のバランスについては注視が必要。医療費の削減対策という点では、特定健康診査の受診率は39.3%に、特定保健指導の実施率は14.8%にとどまっている。また、糖尿病性腎症重症化予防共同事業は、生活指導の実施人数14人でも効果があったとのことだが、対象者の抽出から最終的に本人同意を得て実施するまでに人数が大きく減っている。他市の事例なども積極的に調査し、できるだけ多くの人に受診し、指導を受けたいただけるよう、勧奨の方法などを工夫し、受診率・実施率の向上に努めていただきたい。 一般会計からの法定外繰入を行わない方針は堅持すべきだが、加入者の特性を考えれば国保制度を持続的に運営することは今後益々困難になる。県や他市町村と協力し、抜本的な見直しを国に要望すべき。

介護保険特別会計

令和3年度から第8期介護保険事業計画がスタートし、介護保険料の引上げがあったため、介護保険料は1.3億円の増となりました。

令和元年度に補正予算の計上を誤り、令和元年度が実質的に11か月分決算、令和2年度が13か月分決算となっているため、歳出の比較においては注意が必要です。実質的な決算額を比較すると、居宅介護サービス費は微増となった一方、施設介護サービス費は減少しています。これは特定入所者介護サービス費(施設入所者の居住費や食費)の自己負担額が減額改定されたことによるものです。

介護保険給付費支払基金の残高は、令和2年度末の5.1億円から令和3年度末は4.95億円に減少しました。

桜井の賛成討論(要旨)

 

令和3年度は介護保険料を引上げたことで保険料収入が令和2年度から11.4%増となった。本市の基準額は5,002円で、鴻巣市5,200円、桶川市5,300円、上尾市5,603円を下回る設定だったこともあり、基金を積み増しには至らなかった。新たな介護事業所も増え今年度以降の保険給付費の伸びを注視する必要がある。本市でも国の方針にならい、施設から住み慣れた地域での介護を目指しているが、地域密着型の小規模多機能型施設がまだまだ少ない。市内のどの地域に暮らしていても、身近な地域で介護サービスが安心して受けられるよう、施設の拡充を図る必要がある。配食サービスは年々登録者、配食数ともに減少している。引き続き利便性の向上に努めるように。新たな施設が増えたり、要介護者が増えることは介護保険会計から見れば保険給付費の増加、介護保険料の増加につながるが、それ以上に介護サービスを受けたい人、必要な人が、きちんとサービスを受けられるようにすることが重要。家族による介護は、家族の身体的・精神的な負担が大きく、要介護者への虐待や、自殺にもつながりかねない。適切に介護サービスを受けることができる環境づくりを第一に考え、介護保険事業を運営していただくことを要望する。