院内集会における松本俊彦氏のメッセージ

令和5年6月16日(金)に衆議院第二議員会館において、院内集会『子どもを自殺・不適切指導から守ろう!』(主催:安全な生徒指導を考える会)が開催されました。

この院内集会の中で紹介された、国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター松本俊彦氏からのビデオメッセージの内容がとても印象深く、参考になるものだったので、その要旨を紹介します。

  • 日本の自殺者数は減少傾向だが、児童生徒の自殺は増加傾向にあり、最近は顕著になっている。
  • これは新型コロナが原因ではなく、コロナ禍でこれまでの問題が強調され、見えやすくなっただけである。
  • 我が国では自殺予防教育として「SOSの出し方教育」を行ってきた。「命の大切さを学ぶ」道徳教育にすり替えていた時期よりは一歩進んだが、SOSの出し方教育は効果を発揮していない。SOSの出し方を教えても、それを受け止める側の教育が不十分で、現場の躊躇や混乱がある。
  • 受け止める側の支援の力量はどうか。教育の名を借りた暴力(不適切指導)、大人たちの都合を優先した理不尽なルール(ブラック校則)、子どもたちを一つに束ねようと専横な指導が行われてこなかったか。こうした学校の文化の中で、子どもたちの微かなSOSが見逃され、無視されてなかったか。SOSを出せと言いながら、弱音を吐くな、泣き言を言うなというダブルバインドが学校の中になかったか。
  • 学校は福祉施設ではないが、家庭の力が弱くなり、大人が地域や親戚との関係が希薄になる中で、学校がもつ役割・機能は大きくなっている。
  • しかし、学校における代表的な支援者である養護教諭やスクールカウンセラーは校内で十分な発言力を持っているか。子どもの支援に当たりリーダーシップを発揮できる権限が与えられているか。養護教諭やSCの声に他の教員は真摯に耳を傾けられるか。子どもたちは保健室や相談室にいつでも行けるか。教職員のメンタルヘルスの知識は十分か。先生方が困った時に地域の専門家に相談できる体制はあるか。学校のやるべきこと、課題は多い。
  • そもそも学校の役割が多すぎるし、学校の負担を増やす国のやり方に問題がある。子どもたちの自殺の増加とともに、メンタルヘルスによる教師の休職も増加している。学校や教師を責めて解決する問題ではない。支援者を支援する仕組みを教育現場の中や、教育を取り巻く地域の中に作っていくことが必要。
  • まず必要なのは子どもの自殺の実態解明。自殺の背景は極めて複雑。いくつかの原因動機の選択肢の中から警官が選んだ統計に基づくマクロの分析では何も見えてこない。様々な角度、情報源、専門家の力を投入した実態調査が必要。
  • かつては「心理学的剖検」という詳細な自殺の実態調査が行われていたが、中止された。子どもたちの自殺が増えている状況で、改めてこの調査を再開する必要がある。
  • 文部科学省、こども家庭庁、いずれも自殺対策に取り組むとしている。今日申し上げたことを念頭に対策を進めていただきたい。